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両片想い
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クォーターなのに、ハーフと見紛うような彫りの深い顔立ちをした白鷺課長は、切れ長の二重まぶたを吊り上げて俺を見据える。
社長の息子や隣の派遣社員の女がうっとりする、美麗な顔を目の当たりにしても、残念ながらときめいたりしない。紳士服売り場のマネキンにしか見えないせいで、まったくその気が起きなかった。
額に脂汗を滲ませながら、小馬鹿にするような笑みを浮かべてみせた。惨めな俺の強がりに、目の前にある顔が訝しげに歪む。
「白鷺課長、そんなに俺のを握りしめていたら、桜井くんに誤解されちゃいますよ。まるで欲しがってるみたいでぇア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
「反省の色が見られない。どうやら、使い物にならないようにされたいのか。石川がこんなにドМだったとは知らなかった」
「鉄平、もうやめてあげなって。石川さんもどうして、煽るようなことを言うかな……」
眉根を寄せた社長の息子が傍に駆け寄り、白鷺課長の手を外してくれたお蔭で、激痛から開放された。情けなく、その場にしゃがみ込む。
「おまえ、自分が石川に襲われそうになったのに、どうして助けたりするんだ」
「直接手を下すよりももっと効果的に、石川さんを貶める方法があるから」
「「なんだって!?」」
へたり込む俺と白鷺課長のセリフがリンクして、会議室に響き渡る。
「俺は鉄平に助けられる自信があったから、実行できたんだけどさ」
得意げに言い放つなり、上着のポケットからスマホを取り出して、俺たちに見せつけた。
「そんな自信、どこから出てくるのやら。俺が助けに入らなかったら、本当に危なかったんだぞ」
出されたスマホを見ながら首を傾げる白鷺課長に、社長の息子はあっさりとそれを元に戻す。俺はふたりの様子を、無言で見続けるしかなかった。
「鉄平が部署に戻って、最初に気がつくと思った。石川さんがいないことに」
「確かにそうだ。周りのヤツに聞いたら、俺たちが出て行った後にトイレに行くと言って、席を空けたそうだ」
横目で俺を睨む白鷺課長の顔は、先ほどよりも穏やかそうに感じた。怒りが少しだけ、下火になったのかもしれない。
(余計なことを口走って、ふたたび逆鱗に触れないように気をつけなければ)
社長の息子や隣の派遣社員の女がうっとりする、美麗な顔を目の当たりにしても、残念ながらときめいたりしない。紳士服売り場のマネキンにしか見えないせいで、まったくその気が起きなかった。
額に脂汗を滲ませながら、小馬鹿にするような笑みを浮かべてみせた。惨めな俺の強がりに、目の前にある顔が訝しげに歪む。
「白鷺課長、そんなに俺のを握りしめていたら、桜井くんに誤解されちゃいますよ。まるで欲しがってるみたいでぇア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
「反省の色が見られない。どうやら、使い物にならないようにされたいのか。石川がこんなにドМだったとは知らなかった」
「鉄平、もうやめてあげなって。石川さんもどうして、煽るようなことを言うかな……」
眉根を寄せた社長の息子が傍に駆け寄り、白鷺課長の手を外してくれたお蔭で、激痛から開放された。情けなく、その場にしゃがみ込む。
「おまえ、自分が石川に襲われそうになったのに、どうして助けたりするんだ」
「直接手を下すよりももっと効果的に、石川さんを貶める方法があるから」
「「なんだって!?」」
へたり込む俺と白鷺課長のセリフがリンクして、会議室に響き渡る。
「俺は鉄平に助けられる自信があったから、実行できたんだけどさ」
得意げに言い放つなり、上着のポケットからスマホを取り出して、俺たちに見せつけた。
「そんな自信、どこから出てくるのやら。俺が助けに入らなかったら、本当に危なかったんだぞ」
出されたスマホを見ながら首を傾げる白鷺課長に、社長の息子はあっさりとそれを元に戻す。俺はふたりの様子を、無言で見続けるしかなかった。
「鉄平が部署に戻って、最初に気がつくと思った。石川さんがいないことに」
「確かにそうだ。周りのヤツに聞いたら、俺たちが出て行った後にトイレに行くと言って、席を空けたそうだ」
横目で俺を睨む白鷺課長の顔は、先ほどよりも穏やかそうに感じた。怒りが少しだけ、下火になったのかもしれない。
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