39 / 329
両片想い
37
しおりを挟む
『課長……』
まるで恋人を見つめるまなざしで、白鷺課長に顔を寄せた社長の息子。
こっそり覗いている目の前の出来事が、ドラマか映画のワンシーンのように見えてしまったのは、ふたりそろって俳優並みの男前だからかもしれない。
場違い感を肌に感じて音を立てないように退いた刹那、白鷺課長が勢いよく給湯室から出てきた。
(――あれ? いい雰囲気だったはずなのに、どうして?)
一瞬見えた横顔が、歪んだものに俺の目に映った。気になってあとをつけると、廊下の壁に背を預けながら胸元を押さえる、つらそうな姿を見かけた。
声をかけるべきか否かを迷いながら、部署の扉から不自然な様子を窺っていると、隣の課の派遣社員の女が足音を立てて、白鷺課長の傍に駆け寄った。
イケメンな社員だけに話しかけて、ここぞとばかりに媚を売ってばかりで、あまり仕事をしないという悪評が立っているだけに、誰も相手にしない女だった。
当然この噂は、白鷺課長だって知っているはず。それなのにつらそうな表情を一瞬で消して、嫌な顔ひとつせずに、笑顔で対処していることが驚きだった。
そこを踏まえて、嫌われている女に大人の対応ができる白鷺課長のメンタルの強さを考えたら、自分よりも年下の男を手玉に取るなんて、造作のないことのような気がする。
社内にいる独身女性の憧れの的になっている白鷺課長が、社長の息子とデキているっぽい感じだったのに、つらそうな表情を隠れてしていた事実は、まるで片想いをしてるみたいに見えなくもない。
そんなことを考えながら、白鷺課長と社長の息子の逢瀬を日々チェックしていたけれど、なかなか尻尾を現さなかった。
そんな矢先に垣間見た、白鷺課長のため息と怠そうに腰を撫で擦る姿。そして目の前にいる社長の息子の左頬の腫れは、いったい何があったのか。
(あまりに謎すぎて、俺の推理力じゃ想像できやしない)
「桜井くん、何だか左頬が腫れているように見えるんだけど、相当痛そうだね。大丈夫?」
神妙な顔でパソコンの画面を見つめる社長の息子に、思いきって声をかけてみた。すると離れた席にいる白鷺課長に、さりげなく視線を飛ばす。
まるで恋人を見つめるまなざしで、白鷺課長に顔を寄せた社長の息子。
こっそり覗いている目の前の出来事が、ドラマか映画のワンシーンのように見えてしまったのは、ふたりそろって俳優並みの男前だからかもしれない。
場違い感を肌に感じて音を立てないように退いた刹那、白鷺課長が勢いよく給湯室から出てきた。
(――あれ? いい雰囲気だったはずなのに、どうして?)
一瞬見えた横顔が、歪んだものに俺の目に映った。気になってあとをつけると、廊下の壁に背を預けながら胸元を押さえる、つらそうな姿を見かけた。
声をかけるべきか否かを迷いながら、部署の扉から不自然な様子を窺っていると、隣の課の派遣社員の女が足音を立てて、白鷺課長の傍に駆け寄った。
イケメンな社員だけに話しかけて、ここぞとばかりに媚を売ってばかりで、あまり仕事をしないという悪評が立っているだけに、誰も相手にしない女だった。
当然この噂は、白鷺課長だって知っているはず。それなのにつらそうな表情を一瞬で消して、嫌な顔ひとつせずに、笑顔で対処していることが驚きだった。
そこを踏まえて、嫌われている女に大人の対応ができる白鷺課長のメンタルの強さを考えたら、自分よりも年下の男を手玉に取るなんて、造作のないことのような気がする。
社内にいる独身女性の憧れの的になっている白鷺課長が、社長の息子とデキているっぽい感じだったのに、つらそうな表情を隠れてしていた事実は、まるで片想いをしてるみたいに見えなくもない。
そんなことを考えながら、白鷺課長と社長の息子の逢瀬を日々チェックしていたけれど、なかなか尻尾を現さなかった。
そんな矢先に垣間見た、白鷺課長のため息と怠そうに腰を撫で擦る姿。そして目の前にいる社長の息子の左頬の腫れは、いったい何があったのか。
(あまりに謎すぎて、俺の推理力じゃ想像できやしない)
「桜井くん、何だか左頬が腫れているように見えるんだけど、相当痛そうだね。大丈夫?」
神妙な顔でパソコンの画面を見つめる社長の息子に、思いきって声をかけてみた。すると離れた席にいる白鷺課長に、さりげなく視線を飛ばす。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる