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両片想い
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☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。
俺の名前は石川琢磨。白鷺課長から、社長の息子を指導をまかされている平社員である。
朝一の会議を終わらせた白鷺課長はご自分のデスクに座るなり、気だるげな様子で腰を擦りながら、何度目かのため息をついた。
出社したときから物思いにふけるようにまぶたを伏せて、盛大な深いため息をついていた。
具合の悪そうな感じとは明らかに違う、何とも言えないその状態を、白鷺課長を狙う女子社員と、ただの部下の俺は横目で眺めつつ、いらない妄想にかられてしまった。
女子社員の多くは、朝まで彼女とイチャイチャしていたに違いないと考えたんだろう。内心嫉妬に駆られている表情を、それぞれ浮かべていた。
社内にいる独身社員の中でもひと際目立つ白鷺課長だから、それはしょうがないことだと思った。でも俺は見てしまったんだ。
客に出すお茶をなかなか持って行かない社長の息子に、そろそろカツを入れてやろうと給湯室のドアを開けかけて、手が止まってしまった。
社長の息子の肩に顎をのせた白鷺課長が、すぐ傍にあった頬にキスをしているところをドアの隙間から覗き見て、心臓が止まりそうだった。
誰にでも愛想がいい白鷺課長が、新人として入社してきた社長の息子を『坊ちゃん』呼びして冷たく扱っていることは、ものすごく違和感があった。
他の社員との違いに理由を訊ねてみたところ、社長から厳しく接するように頼まれていることと、学生時代に彼の家庭教師をして面倒を見ていた関係もあって、その延長線でビシバシしごいていると教えてくれた。
『坊ちゃんは甘やかすと、調子にのってすぐにつけ上がる。石川もその心づもりで接してやってくれ』
なんてことを、言われていたのだけれど――見たことのない優しげな笑みを浮かべた白鷺課長が、社長の息子の頬にキスをした。
(――これは思いっきり、甘やかしているのではないだろうか……)
俺の名前は石川琢磨。白鷺課長から、社長の息子を指導をまかされている平社員である。
朝一の会議を終わらせた白鷺課長はご自分のデスクに座るなり、気だるげな様子で腰を擦りながら、何度目かのため息をついた。
出社したときから物思いにふけるようにまぶたを伏せて、盛大な深いため息をついていた。
具合の悪そうな感じとは明らかに違う、何とも言えないその状態を、白鷺課長を狙う女子社員と、ただの部下の俺は横目で眺めつつ、いらない妄想にかられてしまった。
女子社員の多くは、朝まで彼女とイチャイチャしていたに違いないと考えたんだろう。内心嫉妬に駆られている表情を、それぞれ浮かべていた。
社内にいる独身社員の中でもひと際目立つ白鷺課長だから、それはしょうがないことだと思った。でも俺は見てしまったんだ。
客に出すお茶をなかなか持って行かない社長の息子に、そろそろカツを入れてやろうと給湯室のドアを開けかけて、手が止まってしまった。
社長の息子の肩に顎をのせた白鷺課長が、すぐ傍にあった頬にキスをしているところをドアの隙間から覗き見て、心臓が止まりそうだった。
誰にでも愛想がいい白鷺課長が、新人として入社してきた社長の息子を『坊ちゃん』呼びして冷たく扱っていることは、ものすごく違和感があった。
他の社員との違いに理由を訊ねてみたところ、社長から厳しく接するように頼まれていることと、学生時代に彼の家庭教師をして面倒を見ていた関係もあって、その延長線でビシバシしごいていると教えてくれた。
『坊ちゃんは甘やかすと、調子にのってすぐにつけ上がる。石川もその心づもりで接してやってくれ』
なんてことを、言われていたのだけれど――見たことのない優しげな笑みを浮かべた白鷺課長が、社長の息子の頬にキスをした。
(――これは思いっきり、甘やかしているのではないだろうか……)
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