33 / 329
両片想い
31
しおりを挟む
俺の微笑みを見た壮馬は、必死に真面目な顔を作り込んだ後に、大きく息を吸い込んだ。
目の前でおこなわれる仰々しい様子に、嫌な予感が俺の背筋を沿うように冷たく流れる。
「白鷺課長のことを愛してますっ! この気持ちは一生涯変わりません、誓います!!」
冒頭で名前呼びを否定した、俺の気持ちを考慮したんだろう。仕事で使う名字を使ってくれたのはいいが、予想以上にでかい壮馬の声を間近で聞いて、耳の中がキーンとした。
あまりに突飛なことをされたせいか、目を瞬かせるのがやっとで、すぐには二の句が継げられない。
「白鷺鉄平が好きすぎて、夢の中にも出てくるくらい大好きなんだよ。堪らないほど好きな想いをいつも伝えているのに、そうやってだんまりを決めこまれる俺の気持ちを、少しは理解してくれてもいいだろ?」
「……だからお前はあえて、自分の気持ちを告げずにいたのか」
言いながら壮馬の首に両腕をかける。俺の腕の重みで顔が近づくはずなのに、躰を強張らせてそれをしないようにされた。
「鉄平は、どんな気持ちになった?」
「言葉で表現するのなら、寂しいとか物足りないって感じかな」
「俺も毎回同じ気持ちになった。だから何度もこの想いを告げたんだ。ひとえに、鉄平の気持ちが知りたくて。だけど……」
「ぅん?」
こんなに傍にいるのに、俺の力を簡単になきものにする壮馬の力が憎らしい。微妙すぎるこの距離感が、俺たちの今の関係みたいだ。
「俺はやっぱり、いつまで経ってもガキだなって。鉄平は鉄平の立場で考えることがあるから、自分の気持ちを隠していたのを、なんとなくだけど分かった気がした。それなのに俺は――」
「お前はガキじゃない。俺の気持ちをきちんと考えた上で、理解しているだろ。それだけ大人になったんだな」
首に絡ませている片手で、後頭部を撫でてやった。
「壮馬、もう少しだけ顔を近づけてくれ。唇が触れる手前まで」
「これくらい?」
「恋人として、キスの仕方を教えてやるよ」
指示したところにいる壮馬の顔は近すぎて、ぼやけてしまう。それでも目を開けたまま、柔らかい下唇をちゅっと食んでやった。
目の前でおこなわれる仰々しい様子に、嫌な予感が俺の背筋を沿うように冷たく流れる。
「白鷺課長のことを愛してますっ! この気持ちは一生涯変わりません、誓います!!」
冒頭で名前呼びを否定した、俺の気持ちを考慮したんだろう。仕事で使う名字を使ってくれたのはいいが、予想以上にでかい壮馬の声を間近で聞いて、耳の中がキーンとした。
あまりに突飛なことをされたせいか、目を瞬かせるのがやっとで、すぐには二の句が継げられない。
「白鷺鉄平が好きすぎて、夢の中にも出てくるくらい大好きなんだよ。堪らないほど好きな想いをいつも伝えているのに、そうやってだんまりを決めこまれる俺の気持ちを、少しは理解してくれてもいいだろ?」
「……だからお前はあえて、自分の気持ちを告げずにいたのか」
言いながら壮馬の首に両腕をかける。俺の腕の重みで顔が近づくはずなのに、躰を強張らせてそれをしないようにされた。
「鉄平は、どんな気持ちになった?」
「言葉で表現するのなら、寂しいとか物足りないって感じかな」
「俺も毎回同じ気持ちになった。だから何度もこの想いを告げたんだ。ひとえに、鉄平の気持ちが知りたくて。だけど……」
「ぅん?」
こんなに傍にいるのに、俺の力を簡単になきものにする壮馬の力が憎らしい。微妙すぎるこの距離感が、俺たちの今の関係みたいだ。
「俺はやっぱり、いつまで経ってもガキだなって。鉄平は鉄平の立場で考えることがあるから、自分の気持ちを隠していたのを、なんとなくだけど分かった気がした。それなのに俺は――」
「お前はガキじゃない。俺の気持ちをきちんと考えた上で、理解しているだろ。それだけ大人になったんだな」
首に絡ませている片手で、後頭部を撫でてやった。
「壮馬、もう少しだけ顔を近づけてくれ。唇が触れる手前まで」
「これくらい?」
「恋人として、キスの仕方を教えてやるよ」
指示したところにいる壮馬の顔は近すぎて、ぼやけてしまう。それでも目を開けたまま、柔らかい下唇をちゅっと食んでやった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる