BL小説短編集

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
20 / 329
両片想い

18

しおりを挟む
【壮馬は私たちの宝物です。これまで大切に育ててきました。あまりに大切にしすぎたせいで、少々ワガママなところはありますが白鷺先生、よろしくお願いしますね】

 不意に頭の中に流れてきた、壮馬のご両親のセリフ。

 父親に見捨てられた俺と違い、壮馬は親にとても愛されながら育てられている。だからこそ、この関係を崩すようなことがあってはならない。

 俺のせいで、アイツに不幸を背負わせては駄目なんだ。

 心に燻る壮馬への気持ちは、無言を貫いてなきものにした。ただ強請られたときだけ、心の奥底に秘めている想いを告げる。それくらいは許されるであろう。

「ルームサービスで頼んだ赤ワインよりも、鉄平の顔のほうが赤いのはどうして?」

 バスルームでシャワーを浴び終えた俺にかけられた、開口一番の言葉。

 テーブルに用意されている果物やツマミを食べながらワインを飲んでいた恋人は、すでにできあがっているように見えた。

「シャワーを浴びたからだ。お前、ハイペースで飲んでるだろ」

(着心地のよいバスローブを見にまとっているから、さっきのような醜態を晒すことはないはず――)

「なぁ、一度聞いてみたかったんだけど」

 シャワーを浴びる前のみっともない自身の恰好を思い出していると、えらく低い声で訊ねられた。

「なんだ?」

「ヤってる最中、名前で呼ばれるのと課長って呼ばれるの、どっちがいいのかなぁってさ」

「課長に決まってるだろ。名前呼びは、あまりしてほしくない」

 本音は名前で呼ばれたほうが嬉しいのに、それが言えないのがつらい。

「だったら先生は?」

「ありよりのあり」

 ややふざけ気味に返しながら、空いてるグラスにワインを注いだ。

「そうなんだ。教え子に襲われるって思いながら感じたいから?」

「お前なら、そういうプレイが好きだろうなと思った。ただそれだけ」

 グラスの中でワインを回してから、喉を潤す程度に流し込む。赤ワインの酸味と渋みが、ちょうどいいバランスに感じられた。

「課長は何をしても、様になるからいいよな。俺が同じことしても、ぜーんぜん格好よく決まらない」

 俺の真似をして、同じようにグラスの中にあるワインを回してみせる壮馬。揺らし方が不安定なせいで、子どもがふざけてやっているような感じに見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...