BL小説短編集

相沢蒼依

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両片想い

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 首から下の上半身裸の写真を撮影し、それを添付したコメントを使ってゲイ専門のSNSで呼びかけた。

『俺の初めてと1週間好きにできる権利を売ります。どうぞよろしく!』

 すると俺の躰を求めて、たくさんの男が競うようにお金を出した。値段がどんどん釣り上げられた結果、一番の高値で俺を買ってくれた人は、某IT企業の若い社長さんだった。

 待ち合わせ場所に現れた社長さんをはじめて見たときの印象は、そういう趣味をしているようにはまったく見えない、とても爽やかそうな人で、逆に面食らってしまった。

 おとり捜査の警察官かもしれないと、内心ひやひやしたんだ。

「はじめまして鉄平くん。君って、ハーフなのかな?」

 開口一番に告げられたセリフを聞いて、愛想笑いしながら答える。

「はじめまして。クォーターです」

「そんな君とこれからいいコトするんだけど、自分を売らなきゃならないくらいに、お金が必要なんだ?」

 なんてことない質問をするように、社長さんに訊ねられた。

 立ったまま世間話に花を咲かせる内容じゃなかったが、フレンドリーに話しかけられたお蔭で、これまでの経緯を淀みなく喋った。

「そっか、なるほどね。生活するだけでも大変なのに、学校に通いながらバイトもそれなりの数をこなすとなると、躰がいくつあっても足りないよな」

「はい。母親は浮気相手と別れたっぽいんですが、そのせいで抜け殻になっちゃって、パートを休みがちになってるんです」

「あのさ、君の初めてと1週間好きにしていい権利だけど、延長する気はない?」

「延長ですか?」

 いきなりの提案に、眉根を寄せながら疑問で返してしまった。

「毎月、君にお小遣いをあげることを前提に、俺と1年契約で恋人になってもらうってことさ」

「1年契約で恋人……」

「契約料はそうだな、毎月20万円。それにプラスして俺とエッチしたら、ボーナスを提供してあげるよ」

 あまりにもうますぎる話に、頭の中が一気に混乱した。お金をいただけるのなら、たくさん欲しい。しかし、それの代価は自分の躰。そしてこの人を悦ばせることだろう。

 黙り込んだ俺に、社長さんはたたみかけるように交渉する。

「正直なところ、高校生とこんな話をする時点で、世間的にはアウトなことだけどさ。あれこれ難しく考えずに、ビジネスとして考えてみたらいいんじゃないかな」
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