65 / 87
自画像
しおりを挟む
お昼休みの職場のデスクで俺は、自分を映している鏡と対峙していた。自画像って思っていた以上に難しいかも……
「う~っ、カッコよく描けてしまった場合、涼一からツッコミが入るかもしれないと思ったら、手が止まってしまうな」
ありのままの自分を映し出し、描けばいいのが分かる。だが俺の自画像を強請った涼一に伝えたかった。今日が誕生日であることを。
俺が生まれた日に、愛しいお前が傍にいて笑ってくれている。それだけでもすっげぇ幸せなんだ。
「自画像と一緒にさりげなく、好きな物も描いてやれ。ももたろうマスコットは外せないな」
ブツブツ言いながらスケッチブックにさらさら描いていると、後ろに人の気配を感じる。突き刺すようなじりじりした視線の持ち主は、間違いなく三木編集長であろう。
お茶出しの指令だろうか、せっかくノって描いてるトコなのに。
「何か用ですか、編集長?」
振り向かずに訊ねてみると、いやはやスゲェなと声が返ってきた。
「相変わらず、奇天烈な絵を描いてるみたいだな。それは自画像なのか?」
「奇天烈なんて言葉、久しぶりに聞きましたよ。さすが編集長って感じですね。俺の自画像をそんな風に、評価してくれるなんて」
じと目をして振り向くと、ぼさぼさの頭を掻きながら苦笑いをする。
「じゃあこれはどうだ、異様に独創的な自画像。しかもここで描いてるあたり、周りの編集者に己の誕生日をアピールしてお祝いさせようって魂胆だろ」
何なんだ、その奇抜な表現力。人が一生懸命に描いてるというのに。
「違いますよ。これは涼一にアピールするのに、わざわざ書いてるんです」
「あっそ。仲良くやってくれ! しっかしお前、その絵はツッコミどころ満載だな。そこまでアピール性の強いモノは、悪夢を見そうだ」
ひーっと言って早々と去って行く背中に、心の中で舌を出してやった。
俺の好きな物を知ってほしいだけなのによぅ。
気を取り直してペン入れをし、色鉛筆で彩色した。
これを見たら涼一と過ごす時間は、きっと甘いものになるに違いない――
めでたし めでたし、なのか!?
「う~っ、カッコよく描けてしまった場合、涼一からツッコミが入るかもしれないと思ったら、手が止まってしまうな」
ありのままの自分を映し出し、描けばいいのが分かる。だが俺の自画像を強請った涼一に伝えたかった。今日が誕生日であることを。
俺が生まれた日に、愛しいお前が傍にいて笑ってくれている。それだけでもすっげぇ幸せなんだ。
「自画像と一緒にさりげなく、好きな物も描いてやれ。ももたろうマスコットは外せないな」
ブツブツ言いながらスケッチブックにさらさら描いていると、後ろに人の気配を感じる。突き刺すようなじりじりした視線の持ち主は、間違いなく三木編集長であろう。
お茶出しの指令だろうか、せっかくノって描いてるトコなのに。
「何か用ですか、編集長?」
振り向かずに訊ねてみると、いやはやスゲェなと声が返ってきた。
「相変わらず、奇天烈な絵を描いてるみたいだな。それは自画像なのか?」
「奇天烈なんて言葉、久しぶりに聞きましたよ。さすが編集長って感じですね。俺の自画像をそんな風に、評価してくれるなんて」
じと目をして振り向くと、ぼさぼさの頭を掻きながら苦笑いをする。
「じゃあこれはどうだ、異様に独創的な自画像。しかもここで描いてるあたり、周りの編集者に己の誕生日をアピールしてお祝いさせようって魂胆だろ」
何なんだ、その奇抜な表現力。人が一生懸命に描いてるというのに。
「違いますよ。これは涼一にアピールするのに、わざわざ書いてるんです」
「あっそ。仲良くやってくれ! しっかしお前、その絵はツッコミどころ満載だな。そこまでアピール性の強いモノは、悪夢を見そうだ」
ひーっと言って早々と去って行く背中に、心の中で舌を出してやった。
俺の好きな物を知ってほしいだけなのによぅ。
気を取り直してペン入れをし、色鉛筆で彩色した。
これを見たら涼一と過ごす時間は、きっと甘いものになるに違いない――
めでたし めでたし、なのか!?
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
赤ちゃんプレイの趣味が後輩にバレました
海野
BL
赤ちゃんプレイが性癖であるという秋月祐樹は周りには一切明かさないまま店でその欲求を晴らしていた。しかしある日、後輩に店から出る所を見られてしまう。泊まらせてくれたら誰にも言わないと言われ、渋々部屋に案内したがそこで赤ちゃんのように話しかけられ…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる