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ピロトーク:絡まる意図②
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***
「涼一っ!」
ただいまを言わず家の中に入ると、俺に向かって飛び込んできた。その身体を無言のまま、ぎゅっと抱きしめる。
周防のことが何とか上手くいき、嬉しさのあまりに言葉が出てこない。
しばらく、抱き合ってから――
「……お前がいてくれてホントに助かった。じゃないと、あんなナイスなアドバイスなんて、思い浮かばなかったぞ」
ありがとうの気持ちを込めて、頬にキスをしてやると、照れくさそうな顔をして、口元に笑みを浮かべた涼一。
「太郎くんの素性が分かっても、それ以外のことは全然知らなかったからね。驚愕する事実ばかりで一瞬、頭の中が真っ白になっちゃった」
「俺も周防からのメール読んでて、手が震えちまった。迷うことなく、涼一に転送したんだ」
「やっぱりね。ひとりで抱えるより、ふたりでって感じ?」
結果オーライ、涼一の機転で乗り越えられた。
「今まで、修羅場に遭遇したことないからさ。どうすればいいか、さっぱり分からなかったぞ」
「それって僕が、修羅場に遭遇してるから切り抜けられるって、思われたのかな」
「え? いやいや涼一なら俺よりも、機転が利くと思って」
「その機転も経験からだよ。いろいろと、くぐり抜けてるからね」
じと目をしながら俺を見上げる。何だろう、このモヤモヤした感情は。過去のことなんだから終わってるのに、嫉妬せずにはいられない。
……修羅場になるような、すごいことを、コイツはくぐり抜けてるのか。知りたいけど、知りたくない――
「なぁんてね。ウソだよ」
「は――?」
「修羅場体験なんて、全然してないから。だから周防さんの件が上手くいって、本当に良かったって、胸を撫で下ろしたんだ」
その言葉に、俺も胸を撫で下ろす。
「郁也さん、僕がすごい過去の持ち主だと思ったでしょ?」
ふふふと笑いながら、わざわざ俺の耳元で告げてくる。
「全然! 涼一にそんな過去があるなんて、考えてもいないし」
目を逸らしながら言うと、頬っぺたをぎゅっとつねられてしまった。
「ウソが苦手な郁也さんっ。バレバレなんだからね、まったく――」
「涼一、結構痛い」
「ウソをついたバツ、きちんと受けてね」
バツと言いながら、何故か俺にちゅっとキスをする。
「これが僕の、修羅場みたいなものだから」
「何だよそれ、俺が何かしてるって言いたいのか?」
そう言ってから、しまったと思った。
「自覚ないトコが、郁也さんらしいよね」
「ごめん。今さっき自覚した。ご迷惑をおかけしてました」
涼一には周防のことについて、めちゃくちゃ世話になってしまっているのを忘れていた。
周防の前に太郎が現れなきゃ、それこそ俺らが修羅場になっていたかもしれない。
頭を下げた俺にご褒美だよと言って、またキスをしてくれる。何だかんだ、優しいヤツなんだから。
「退院祝いの食事会、僕すっごく楽しみなんだ。太郎くんと話がしてみたくて」
それはそれは、嬉しそうに言ってくれたのだが。
「だからと言って、あんまり仲良くなりすぎると、周防の機嫌が悪くなるからな。程ほどにしておけよ」
「とか何とか言っちゃって。郁也さんの機嫌も、悪くなるからでしょ?」
むっ(`‐ω‐´)
「涼一お前は、自分の魅力が分ってないから、そういうことが言えるんだ。もっと警戒してくれよ」
「何言ってるの、郁也さんの美貌に比べたら僕なんて全然なのに。それに僕らの周りには、そんなことをする人なんていないでしょ。大丈夫だよ」
そんなことを言った涼一を、不安げに見つめるしか出来なかった。見えない何かが、俺の中にいつもあって。
それが何か表現出来れば、涼一も納得してくれるんだろうけど、上手く出来ないんだ。
確証のない不安が現実化するなんて、このときは思わなかった。少し前から涼一が、身近な人間に狙われていたなんて――
「涼一っ!」
ただいまを言わず家の中に入ると、俺に向かって飛び込んできた。その身体を無言のまま、ぎゅっと抱きしめる。
周防のことが何とか上手くいき、嬉しさのあまりに言葉が出てこない。
しばらく、抱き合ってから――
「……お前がいてくれてホントに助かった。じゃないと、あんなナイスなアドバイスなんて、思い浮かばなかったぞ」
ありがとうの気持ちを込めて、頬にキスをしてやると、照れくさそうな顔をして、口元に笑みを浮かべた涼一。
「太郎くんの素性が分かっても、それ以外のことは全然知らなかったからね。驚愕する事実ばかりで一瞬、頭の中が真っ白になっちゃった」
「俺も周防からのメール読んでて、手が震えちまった。迷うことなく、涼一に転送したんだ」
「やっぱりね。ひとりで抱えるより、ふたりでって感じ?」
結果オーライ、涼一の機転で乗り越えられた。
「今まで、修羅場に遭遇したことないからさ。どうすればいいか、さっぱり分からなかったぞ」
「それって僕が、修羅場に遭遇してるから切り抜けられるって、思われたのかな」
「え? いやいや涼一なら俺よりも、機転が利くと思って」
「その機転も経験からだよ。いろいろと、くぐり抜けてるからね」
じと目をしながら俺を見上げる。何だろう、このモヤモヤした感情は。過去のことなんだから終わってるのに、嫉妬せずにはいられない。
……修羅場になるような、すごいことを、コイツはくぐり抜けてるのか。知りたいけど、知りたくない――
「なぁんてね。ウソだよ」
「は――?」
「修羅場体験なんて、全然してないから。だから周防さんの件が上手くいって、本当に良かったって、胸を撫で下ろしたんだ」
その言葉に、俺も胸を撫で下ろす。
「郁也さん、僕がすごい過去の持ち主だと思ったでしょ?」
ふふふと笑いながら、わざわざ俺の耳元で告げてくる。
「全然! 涼一にそんな過去があるなんて、考えてもいないし」
目を逸らしながら言うと、頬っぺたをぎゅっとつねられてしまった。
「ウソが苦手な郁也さんっ。バレバレなんだからね、まったく――」
「涼一、結構痛い」
「ウソをついたバツ、きちんと受けてね」
バツと言いながら、何故か俺にちゅっとキスをする。
「これが僕の、修羅場みたいなものだから」
「何だよそれ、俺が何かしてるって言いたいのか?」
そう言ってから、しまったと思った。
「自覚ないトコが、郁也さんらしいよね」
「ごめん。今さっき自覚した。ご迷惑をおかけしてました」
涼一には周防のことについて、めちゃくちゃ世話になってしまっているのを忘れていた。
周防の前に太郎が現れなきゃ、それこそ俺らが修羅場になっていたかもしれない。
頭を下げた俺にご褒美だよと言って、またキスをしてくれる。何だかんだ、優しいヤツなんだから。
「退院祝いの食事会、僕すっごく楽しみなんだ。太郎くんと話がしてみたくて」
それはそれは、嬉しそうに言ってくれたのだが。
「だからと言って、あんまり仲良くなりすぎると、周防の機嫌が悪くなるからな。程ほどにしておけよ」
「とか何とか言っちゃって。郁也さんの機嫌も、悪くなるからでしょ?」
むっ(`‐ω‐´)
「涼一お前は、自分の魅力が分ってないから、そういうことが言えるんだ。もっと警戒してくれよ」
「何言ってるの、郁也さんの美貌に比べたら僕なんて全然なのに。それに僕らの周りには、そんなことをする人なんていないでしょ。大丈夫だよ」
そんなことを言った涼一を、不安げに見つめるしか出来なかった。見えない何かが、俺の中にいつもあって。
それが何か表現出来れば、涼一も納得してくれるんだろうけど、上手く出来ないんだ。
確証のない不安が現実化するなんて、このときは思わなかった。少し前から涼一が、身近な人間に狙われていたなんて――
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