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Love too late:真実の愛
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入院した部屋が個室でよかった。厄介なヤツが、面会に来てしまったから。
「先輩、良かったです。入院して手術なんて、大きな病気だと思っていましたから」
ベッドをリクライニングにした状態で対峙しながら、コッソリため息をついた。
タケシ先生に出逢う前、大学の後輩に告白され、軽い気持ちでOKして、付き合う約束をしたその当日。一緒に帰る間際に、自然気胸の発作に突然襲われ倒れてしまったせいで、それきりになっていた。
「大学で倒れたときは、世話になったな。ありがと……」
「こんな僕でよければ頼ってくれたら、すっごく嬉しいなって」
「そのことなんだけど悪いな。俺、好きな人ができた。だからおまえとは、もう付き合えない」
テレながら喋る後輩に、残酷な現実を突きつけた。
「え? 今、なんて……」
「すっげぇ好きな人ができたんだ。ソイツしか見えないし、心から大事にしたいって思ってる」
俺がそう言ったら、後輩は膝に置いてる拳をぎゅっと握りしめた。
「僕も先輩のこと、同じくらい大事に想っています」
「どんなに想われても、迷惑なだけだから。悪いが諦めてくれ」
俺の言葉を聞き、辛そうな表情を浮かべた後輩に対して、説得を試みる。
「……先輩の好きな人の二番目じゃ、ダメですか?」
(コイツ諦めが悪いな、どうしようか……)
いつもなら縋りつかれようが泣かれようが、今までなら無下にあしらってきた。だけどタケシ先生に告白して、大好きな人に諦めろと言われ続け、キズついたことで相手の痛みをみずから知ってしまったせいで、うまくあしらうことができない。
――なるべくなら、あまり深いキズをつけたくない。
「二番目で、おまえは幸せなのか?」
「先輩の傍にいられるのなら」
「だけど心は、どうやったって手に入らない。一番近くにいても、一番遠くにいることになるんだ」
――タケシ先生がそうだったから。俺のほうを全然見てくれなくて、すっげえ辛かった。
「おまえさ、二番目なんかで満足するなよ。一番、自分のことを好きになってくれる相手を捜せよな」
諦めることは、容易じゃないってわかってる。だからこそ、後輩の背中を強く押してやらないと。
「先輩……」
「話は済んだ。悪いけど、疲れたから出て行ってくれ。お見舞いは来なくていい」
言いながら、ぷいっとそっぽを向いたら、椅子から立ち上がる音と、鼻をすする音がした。
「うっ……失礼します……っ」
「――ごめんな」
呟いた言葉が届く前に、出て行ってしまった後輩。そして立ち去ったばかりの扉から、軽やかにノックの音が病室内に響く。
「……はい」
ノックしたヤツが誰かわからないけど、間違いなく泣いてる後輩とすれ違っているハズ。なにか言われるかもな。
そんな重い気持ちで、扉を開けた人物に渋々目を向けると、そこにはやけに爽やかで、にこやかな顔をしたタケシ先生がいた。
入院した部屋が個室でよかった。厄介なヤツが、面会に来てしまったから。
「先輩、良かったです。入院して手術なんて、大きな病気だと思っていましたから」
ベッドをリクライニングにした状態で対峙しながら、コッソリため息をついた。
タケシ先生に出逢う前、大学の後輩に告白され、軽い気持ちでOKして、付き合う約束をしたその当日。一緒に帰る間際に、自然気胸の発作に突然襲われ倒れてしまったせいで、それきりになっていた。
「大学で倒れたときは、世話になったな。ありがと……」
「こんな僕でよければ頼ってくれたら、すっごく嬉しいなって」
「そのことなんだけど悪いな。俺、好きな人ができた。だからおまえとは、もう付き合えない」
テレながら喋る後輩に、残酷な現実を突きつけた。
「え? 今、なんて……」
「すっげぇ好きな人ができたんだ。ソイツしか見えないし、心から大事にしたいって思ってる」
俺がそう言ったら、後輩は膝に置いてる拳をぎゅっと握りしめた。
「僕も先輩のこと、同じくらい大事に想っています」
「どんなに想われても、迷惑なだけだから。悪いが諦めてくれ」
俺の言葉を聞き、辛そうな表情を浮かべた後輩に対して、説得を試みる。
「……先輩の好きな人の二番目じゃ、ダメですか?」
(コイツ諦めが悪いな、どうしようか……)
いつもなら縋りつかれようが泣かれようが、今までなら無下にあしらってきた。だけどタケシ先生に告白して、大好きな人に諦めろと言われ続け、キズついたことで相手の痛みをみずから知ってしまったせいで、うまくあしらうことができない。
――なるべくなら、あまり深いキズをつけたくない。
「二番目で、おまえは幸せなのか?」
「先輩の傍にいられるのなら」
「だけど心は、どうやったって手に入らない。一番近くにいても、一番遠くにいることになるんだ」
――タケシ先生がそうだったから。俺のほうを全然見てくれなくて、すっげえ辛かった。
「おまえさ、二番目なんかで満足するなよ。一番、自分のことを好きになってくれる相手を捜せよな」
諦めることは、容易じゃないってわかってる。だからこそ、後輩の背中を強く押してやらないと。
「先輩……」
「話は済んだ。悪いけど、疲れたから出て行ってくれ。お見舞いは来なくていい」
言いながら、ぷいっとそっぽを向いたら、椅子から立ち上がる音と、鼻をすする音がした。
「うっ……失礼します……っ」
「――ごめんな」
呟いた言葉が届く前に、出て行ってしまった後輩。そして立ち去ったばかりの扉から、軽やかにノックの音が病室内に響く。
「……はい」
ノックしたヤツが誰かわからないけど、間違いなく泣いてる後輩とすれ違っているハズ。なにか言われるかもな。
そんな重い気持ちで、扉を開けた人物に渋々目を向けると、そこにはやけに爽やかで、にこやかな顔をしたタケシ先生がいた。
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