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Love too late:押し付けられるキモチ
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「そのあと、病院でイヤそうな顔しながらも、俺のことをちゃんと診てくれたろ? そのときタケシ先生から、まばゆい光が見えたんだ。この太陽みたいに、あったかい光がさ」
太郎は伸ばした右手で、太陽をぎゅっと掴むように握りしめた。
「自分の病気を知って、あとどれくらい生きられるのか、今までしてきた最低なこととか、いろいろ考えさせられてさ。すっげぇ真っ暗闇の中にいた俺を、アンタは明るく照らしてくれたんだ」
「あっそ。深く反省したのなら、今までのおこないを改めてやり直すために、治療を受けなさい」
俺はいつもどおりに、患者を診ただけ。神様仏様のように、キラキラ光った覚えはない。
どこまでもドライな対応を貫いてやると、太郎は朝日に向かって伸ばしていた腕を下ろし、寂しげな表情を浮かべて俯いた。
「……絶対にイヤだ」
隣で振り絞るような声を出し、両拳を握りしめ、挑むように俺の顔を見ながら、悔しそうに唇を噛みしめる。
「アンタと付き合えないくらいなら、死んだほうがマシだ!」
「おい――」
命を粗末にするな、そう言いかけたとき。
「好きなんだよっ! もうワケわかんねぇくらいに、タケシ先生のことがめちゃくちゃ好きなんだ!」
顔をこれでもかと真っ赤にしながら、太郎に告げられた愛の告白に、ちゃんと返事をせねばなるまい。そしてなんとか治療をさせるべく、きちんと説得をしなければ。
(俺なんて大事な命をかけられるような、いい男でもないのにさ――)
「悪いがおまえは、すべてにおいて対象外だ。男だし自己中でKYな上に、サル顔は正直、好みのタイプではない」
「え……」
どうだ、どんなにバカでもこれだけ言えば、自分は無理だと理解できるだろう。ほかに好きなヤツがいると言うよりも、はっきり無理だとわかれば、簡単に諦めがつくはず。
軽くため息をついてゆっくりと腕を組み、仕上げの言葉を告げようと、口を開きかけた瞬間だった。
「……諦めねぇ」
地の底から聞こえてくるような、低い声で囁いた太郎の短いセリフが、まるで呪いの言葉のように聞こえた気がした。
「はい?」
「タケシ先生の好みのタイプじゃないのなら、好みのタイプになるように洗脳してやる!」
おいおいちょっと待て。洗脳っておまえはなにか、宗教でもやっているのか!?
「そんでもって好きになるように、仕向けてやるから。タケシ先生に、絶対に好きって言わせてみせるぞ!」
諦めの悪いヤツ――本当に呆れすぎて、言葉にならない。だがここは多少折れてやるしかあるまい。バカなヤツだが命がかかっているんだ、大目に見てやらねば。
「太郎おまえその前にさ、病気の治療をしろよ。完治したら、いくらでも構ってやる」
「イヤだね。治療をしてる間にタケシ先生に恋人ができたら困るし、人は平気でウソをつくから」
「だったら、誓約書でもなんでも書いてやるよ……」
「病気が治るって保障が、どこにもないだろっ! なんでそんな約束できないことを、簡単に言うな」
痛いところを突かれ、口をつぐむしかなかった。
「俺にとって、最期になるかもしれない恋なんだ。簡単に諦められるワケがないだろ……」
「――無理なものは、無理なんだ」
そう、俺には好きなヤツがいる。絶対に、両想いになれない相手だけど。
沈黙の続く中、昇りきった朝日が俺たちを眩しい光で、明るく照らしていく。
「おまえみたいに面倒くさいヤツが、一番嫌いなタイプだしな」
俺の吐き捨てるように告げた言葉を受け止めたのか、太郎は唇を尖らせ、ふて腐れた表情を浮かべた。
そして最後まで、治療を受けると言ってはくれなかったのである。
太郎は伸ばした右手で、太陽をぎゅっと掴むように握りしめた。
「自分の病気を知って、あとどれくらい生きられるのか、今までしてきた最低なこととか、いろいろ考えさせられてさ。すっげぇ真っ暗闇の中にいた俺を、アンタは明るく照らしてくれたんだ」
「あっそ。深く反省したのなら、今までのおこないを改めてやり直すために、治療を受けなさい」
俺はいつもどおりに、患者を診ただけ。神様仏様のように、キラキラ光った覚えはない。
どこまでもドライな対応を貫いてやると、太郎は朝日に向かって伸ばしていた腕を下ろし、寂しげな表情を浮かべて俯いた。
「……絶対にイヤだ」
隣で振り絞るような声を出し、両拳を握りしめ、挑むように俺の顔を見ながら、悔しそうに唇を噛みしめる。
「アンタと付き合えないくらいなら、死んだほうがマシだ!」
「おい――」
命を粗末にするな、そう言いかけたとき。
「好きなんだよっ! もうワケわかんねぇくらいに、タケシ先生のことがめちゃくちゃ好きなんだ!」
顔をこれでもかと真っ赤にしながら、太郎に告げられた愛の告白に、ちゃんと返事をせねばなるまい。そしてなんとか治療をさせるべく、きちんと説得をしなければ。
(俺なんて大事な命をかけられるような、いい男でもないのにさ――)
「悪いがおまえは、すべてにおいて対象外だ。男だし自己中でKYな上に、サル顔は正直、好みのタイプではない」
「え……」
どうだ、どんなにバカでもこれだけ言えば、自分は無理だと理解できるだろう。ほかに好きなヤツがいると言うよりも、はっきり無理だとわかれば、簡単に諦めがつくはず。
軽くため息をついてゆっくりと腕を組み、仕上げの言葉を告げようと、口を開きかけた瞬間だった。
「……諦めねぇ」
地の底から聞こえてくるような、低い声で囁いた太郎の短いセリフが、まるで呪いの言葉のように聞こえた気がした。
「はい?」
「タケシ先生の好みのタイプじゃないのなら、好みのタイプになるように洗脳してやる!」
おいおいちょっと待て。洗脳っておまえはなにか、宗教でもやっているのか!?
「そんでもって好きになるように、仕向けてやるから。タケシ先生に、絶対に好きって言わせてみせるぞ!」
諦めの悪いヤツ――本当に呆れすぎて、言葉にならない。だがここは多少折れてやるしかあるまい。バカなヤツだが命がかかっているんだ、大目に見てやらねば。
「太郎おまえその前にさ、病気の治療をしろよ。完治したら、いくらでも構ってやる」
「イヤだね。治療をしてる間にタケシ先生に恋人ができたら困るし、人は平気でウソをつくから」
「だったら、誓約書でもなんでも書いてやるよ……」
「病気が治るって保障が、どこにもないだろっ! なんでそんな約束できないことを、簡単に言うな」
痛いところを突かれ、口をつぐむしかなかった。
「俺にとって、最期になるかもしれない恋なんだ。簡単に諦められるワケがないだろ……」
「――無理なものは、無理なんだ」
そう、俺には好きなヤツがいる。絶対に、両想いになれない相手だけど。
沈黙の続く中、昇りきった朝日が俺たちを眩しい光で、明るく照らしていく。
「おまえみたいに面倒くさいヤツが、一番嫌いなタイプだしな」
俺の吐き捨てるように告げた言葉を受け止めたのか、太郎は唇を尖らせ、ふて腐れた表情を浮かべた。
そして最後まで、治療を受けると言ってはくれなかったのである。
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