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Love too late:壊したくない距離感
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(さっきからいったい、なんなんだ? 桃瀬のノートに、すごい秘密が潜んでいるとか?)
「桃瀬のノートって、見やすいから人気があるのか?」
足早に歩く桃瀬になんとか追いついき、眉を寄せながら小首を傾げると、軽い溜息と一緒に呆れた声が返ってくる。
「そんなんじゃないって。なんか女子の間でワケのわからない、まじないが流行っているらしい。そんなモン、効くわけないのにな」
「まじないって、ああ――」
男子の俺から見ても、イケメンだなぁと思わせる桃瀬の容姿。風になびくサラサラで真っ直ぐな黒髪と、男らしさを強調するような太い眉毛の下には、きりりっとした瞳が印象的に映る。
そんな瞳を細めながら、形のいい唇に笑みを浮かべれば、そこら辺にいる女子はみんな、ノックダウンするだろう。だからこそ桃瀬に、食いつかないハズがない。
「誰かと付き合えば、まじないがおさまるのでは?」
おさまるであろう解決策を俺が言ったのに、隣でなぜだか浮かない顔をした。
「そうなんだよな。誰かと付き合えば、面倒なことが起こらなくて済むんだよなぁ」
はーっと大きなため息をつきながら切なげな表情を浮かべ、視線を窓の外に向ける。窓から見える景色は、グラウンドが広がる校庭のみ。
「桃瀬、おまえ……」
誰かほかに、好きなヤツがいるんじゃ。そう口にしようとした矢先――。
「おーい、桃瀬!」
今度は、男子からお呼びがかかった。どんだけ人気者なんだ、コイツ。
「昼休み、クラス対抗でサッカーしようぜ」
「悪い、先約がある。今日はA組とバスケ対抗試合なんだ。明日にしちゃダメか?」
「そっかー、わかった」
悪いなと言いながら、桃瀬はやって来た生徒の肩を親しげにポンポン叩く。
「そうそう、今日学院から編入してきた周防。ヨロシクしてやって」
さりげなく紹介してくれて嬉しかったのだが、心の準備がいかんせん追いつかない。
「周防です、ヨロシク」
(もしかして、俺が人見知りだと言ったから、わざわざ紹介してくれたとか?)
「おぅ、隣でクラス委員をやってる林。周防も明日のサッカー、参加してくれよな」
林は気さくに俺の肩をバシバシ叩き、笑顔を振りまいて去っていった。
なんの気なしに小さくなっていく同級生を見送っていたら、桃瀬がどこか楽しげに口を開いた。
「強制ってワケじゃないんだけど、クラス間の横の繋がりを深められたらいいなって、昼休み遊ぼうぜ企画を立てたんだ」
「おもしろいことを考えたんだな」
こんな企画、毎日が勉強漬けの学院では、到底考えられない。やる気のないヤツは昼寝しているし、残っているヤツのほとんどが勉強に勤しんでいたから。そもそもクラス間の横の繋がりを、どうこうしようなんて考えるヤツは、学院を探しても誰ひとりとしていない。遊ぶなんて言葉、久しぶりに聞いたかも。
「だってさ、高校生活は今だけなんだ。いろんなヤツとくだらないこと喋り合って、笑っていたいなと思った」
頭をポリポリ掻き、テレながら告げる桃瀬を羨ましく思う。こんな考え方をするヤツに早く出逢っていれば、俺のひねくれた性格が、少しはマシになっていたかもしれない。
「桃瀬のおかげで、早く学園に馴染めそうだよ」
ほほ笑んで言った瞬間、桃瀬ははにかんだような笑顔をしながら、
「そうか、それは良かった」
呟くように言い、照れる顔を見られたくないのか、ふいっとそっぽを向いた。
(コイツ、いじりまくるとおもしろいかも――)
そんな悪魔の囁きをした、もうひとりの自分が現れて、コッソリとほくそ笑んだのだった。
「桃瀬のノートって、見やすいから人気があるのか?」
足早に歩く桃瀬になんとか追いついき、眉を寄せながら小首を傾げると、軽い溜息と一緒に呆れた声が返ってくる。
「そんなんじゃないって。なんか女子の間でワケのわからない、まじないが流行っているらしい。そんなモン、効くわけないのにな」
「まじないって、ああ――」
男子の俺から見ても、イケメンだなぁと思わせる桃瀬の容姿。風になびくサラサラで真っ直ぐな黒髪と、男らしさを強調するような太い眉毛の下には、きりりっとした瞳が印象的に映る。
そんな瞳を細めながら、形のいい唇に笑みを浮かべれば、そこら辺にいる女子はみんな、ノックダウンするだろう。だからこそ桃瀬に、食いつかないハズがない。
「誰かと付き合えば、まじないがおさまるのでは?」
おさまるであろう解決策を俺が言ったのに、隣でなぜだか浮かない顔をした。
「そうなんだよな。誰かと付き合えば、面倒なことが起こらなくて済むんだよなぁ」
はーっと大きなため息をつきながら切なげな表情を浮かべ、視線を窓の外に向ける。窓から見える景色は、グラウンドが広がる校庭のみ。
「桃瀬、おまえ……」
誰かほかに、好きなヤツがいるんじゃ。そう口にしようとした矢先――。
「おーい、桃瀬!」
今度は、男子からお呼びがかかった。どんだけ人気者なんだ、コイツ。
「昼休み、クラス対抗でサッカーしようぜ」
「悪い、先約がある。今日はA組とバスケ対抗試合なんだ。明日にしちゃダメか?」
「そっかー、わかった」
悪いなと言いながら、桃瀬はやって来た生徒の肩を親しげにポンポン叩く。
「そうそう、今日学院から編入してきた周防。ヨロシクしてやって」
さりげなく紹介してくれて嬉しかったのだが、心の準備がいかんせん追いつかない。
「周防です、ヨロシク」
(もしかして、俺が人見知りだと言ったから、わざわざ紹介してくれたとか?)
「おぅ、隣でクラス委員をやってる林。周防も明日のサッカー、参加してくれよな」
林は気さくに俺の肩をバシバシ叩き、笑顔を振りまいて去っていった。
なんの気なしに小さくなっていく同級生を見送っていたら、桃瀬がどこか楽しげに口を開いた。
「強制ってワケじゃないんだけど、クラス間の横の繋がりを深められたらいいなって、昼休み遊ぼうぜ企画を立てたんだ」
「おもしろいことを考えたんだな」
こんな企画、毎日が勉強漬けの学院では、到底考えられない。やる気のないヤツは昼寝しているし、残っているヤツのほとんどが勉強に勤しんでいたから。そもそもクラス間の横の繋がりを、どうこうしようなんて考えるヤツは、学院を探しても誰ひとりとしていない。遊ぶなんて言葉、久しぶりに聞いたかも。
「だってさ、高校生活は今だけなんだ。いろんなヤツとくだらないこと喋り合って、笑っていたいなと思った」
頭をポリポリ掻き、テレながら告げる桃瀬を羨ましく思う。こんな考え方をするヤツに早く出逢っていれば、俺のひねくれた性格が、少しはマシになっていたかもしれない。
「桃瀬のおかげで、早く学園に馴染めそうだよ」
ほほ笑んで言った瞬間、桃瀬ははにかんだような笑顔をしながら、
「そうか、それは良かった」
呟くように言い、照れる顔を見られたくないのか、ふいっとそっぽを向いた。
(コイツ、いじりまくるとおもしろいかも――)
そんな悪魔の囁きをした、もうひとりの自分が現れて、コッソリとほくそ笑んだのだった。
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