こんなに好きなのに伝わらないのなら――

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
86 / 114
特別番外編【Voice】

しおりを挟む
 黒瀬の意図を考えながら若林先輩のナカを解していくうちに、音声が別なものに変わった。さきほどまでの嫌がる声ではなく、甘さの中に切なさを含む淫靡な声が物置の中に響き渡る。

『あぁん、それ気持ちいぃっ! あっ兄貴が俺のぉっ、俺のをフェラしてくれるなんて…夢、みたいっンンっ』

 一緒にじゅぷじゅぷという音もハッキリ聞こえてきて、激しくフェラされているのが明らかだった。

『あっあっあ、宏斗兄さんんっ…もっと、もっとシて、俺のち〇ぽ美味しくしゃぶって!』

 黒瀬の積極的な声は、俺のモノを確実に変化させた。

『んぅっ、んっ、美味い…よ。辰之が感じてるのがわかる。イヤラしい汁がいっぱい出てる』

『ひゃぁん♡ それヤバいっ!』

 荒い息遣いと聞いたことのない黒瀬のエロい声で、痛いくらいに自身が反り勃つ。それは俺だけじゃなく、目の前にいる人物も同じだった。

「箱崎もうやめてくれぇ…これだったら殴られるほうが100倍マシだ」

「そんなこと言ってるくせに、しっかり勃起してるんですね」

「これはしょうがないだろ、辰之くんの声のせいだし」

『ああっ、あ、ああぁあ♡ お尻も触ってほしいっ…バイブを取ったときみたいにぃ、ッ……兄貴の指でごしごしされたい』

 鼻にかかるような甘ったるい黒瀬の声で、若林先輩のナカが締まる。

「おい、これだけ俺に屈辱的なことをしたんだ。もう許してくれよ」

 大声で俺に頼み込む若林先輩の声に被さるように、黒瀬先輩の声がした。

『それ、若林先輩にされて気持ちよかったから、俺にされたいだけだろ』

 苛立つ黒瀬先輩の気持ちと、俺の気持ちが見事にリンクする。ナカに挿れてる指先に、いやおうなしに力が入った。

「箱崎痛いって、マジで勘弁してくれよ」

 他にもわーわー喚く若林先輩の声にまじって、黒瀬先輩の焦れた声が続く。

『アイツと何度も寝てるんだろ。そのたびに辰之は若林先輩の手で、とことん感じさせられたに違いないって』

 嫉妬が滲み出る黒瀬先輩の声を滅多に聞くことができないんゆえに、俺の心に染み渡っていった。

『わっ、若林先輩にヤられたのは、音楽室のあのときだけだよ。選ばされたんだ、抱かれるかバイブを入れるかの二択で』

 今にも泣き出しそうな黒瀬のセリフで、若林先輩に視線を向けた。冷凍庫なみの冷たさを宿しているであろうそれに、目の前にある顔が恐怖に固まる。

「若林先輩、黒瀬にそんなことをしたんですか?」

 少し前にあった、休み時間のことを瞬時に思い出せた。お腹を押さえながら具合を悪くしていた黒瀬を、最初に介抱したのは俺だった。

「辰之くんをそのままヤるんじゃなく、二択させて選ばせただけいいだろ」

 困惑に満ちた若林先輩の言葉のあとに、黒瀬の落ち着いた声が嫌な静寂を破った。

『若林先輩に抱かれないようにするために、俺はバイブを入れることを選んだ。理由は兄貴以外に、この躰に触れられたくなかったからだよ』

 俺はスマホに手を伸ばし、画面をタップして音声をオフにした。

「は、箱崎……。も、やめてく――」

 言いながら俺の手の動きの先を見て、若林先輩は絶句した。

「若林先輩、好きでもないヤツにヤられる気持ちを、じっくりと味わってください」

「むむむむ無理だ、そんなもん挿いるわけないっ! どう見たってXLサイズだろ」

「だからなんだって言うんですか」

「絶対壊れる! 俺の尻があぁああ゛ぁあ゛~」

 激しく暴れる前に、腰を押し進めて突っ込んでやった。

「がああぁ、くるひぃ…たしけてぇ!」

 若林先輩は黒瀬の喘ぎ声とは似ても似つかない下品な声を出しながら、白濁を撒き散らしつつ、白目を剥いて失神してしまった。

 ちなみに俺のモノは、半分も挿入されていない。

「散々ひとりで騒いでしっかりイケるあたり、若林先輩らしいけど。やっぱりこんなことしなきゃよかった……」

 深いため息をついて自身を引き抜き、ポケットティッシュで汚れたところを丁寧に拭う。ついでに、頬を濡らす涙もゴシゴシ拭ってやった。あとは目についたブレザーの汚れを、適当に叩いて落としておく。

(これに懲りて、他人に変なことをしようとしないだろ。そこまで馬鹿な人じゃないと思いたい)

 スマホの中にある黒瀬の音声をしっかり削除し、体育館の物置をあとにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

わるいむし

おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。 しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。 「恋人ができたんだ」 恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...