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兄貴の悦び
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「辰之、これに懲りたら……っ!」
しかめっ面で僕にお説教をはじめた矢先に、兄貴は絶句する。目を見開いたまま固まる姿が、どこかおかしい。兄貴の顔の前で手を振ってみたのに、それすら目に入らないのか、茫然と遠くを見つめる。
「兄貴どうしたん…んんんっ!?」
振り返りながら声をかけたが、同じように言葉を飲み込んだ。あちこちに点在している、ベンチの様子を目の当たりにしたせいだったのだが。
「辰之、俺たちが場違いなことがわかるだろ?」
「そうだね。あんなに騒いでいたのに注目を浴びない理由が、わかりすぎるくらいに分かったよ」
僕らのイチャイチャなんて、兄弟喧嘩レベルと思われる。いやむしろ、そう思われてスルーされていたのかもしれない。
本番までヤっていないが、いい感じに服を乱した女子に男子が手を出していたり、その逆もあったりで、あちこちがくんずほぐれつ状態だった。それを見るために僕ら兄弟はここに現れて、わざと喧嘩をしているように装いながら、覗き見していたように思われたんだろう。
「前に来たときは、こんなんじゃなかったハズなんだけど」
「やっぱり元カノと来てたんだ」
目立たないように躰を小さくして、出口に向かう兄貴の背中に問いかけた。
「今はおまえと来てるんだからいいだろ! とっとと脱出するぞ」
僕の利き手を掴んだ兄貴は、早く来いと言わんばかりに引っ張り、屋上の扉を開けて校舎に戻った。遅れて僕も中に入ると、兄貴の足がピタリと止まる。不思議に思って足元を見てから兄貴の顔を見上げると、いきなり額にキスされた。
「辰之が勉強に打ち込めるように、まじないをかけた」
「えっ?」
「今度のテストでクラスで一番をとることと、学年で五位以内だったら、俺から夜這いをかけてやるよ」
「兄貴の夜這いがご褒美のテストなんて、そんなの――」
突然の無茶ぶりに、激しいめまいが僕を襲う。兄貴より優位に立とうとしたら、それを覆すものを用意するあたり、兄貴らしいというべきなのかもしれない。
「俺の弟は優秀だからなぁ。絶対に頑張ろだろう?」
「頑張るけど、その……。キスしたりちょっとだけ触ったりして、兄貴と仲良くしたいんだけど」
「おまえが勉強に集中できるように、我慢するつもり。ああなんて弟思いの兄貴なんだ、俺って!」
カラカラ笑いながら先に階段をおりていく兄貴に、なんて言葉をかけたらいいのやら。勃ちっぱなしのち〇ぽを抱えたままだからこそ、問題なんて解決できるはずもなく。
「頑張るに決まってるだろ! だって宏斗兄さんが好きなんだもん!!」
僕が涙目でシャウトすると、「俺も好きだよ」という声が下から聞こえた。妙に響いたそのセリフを胸に、しばらく勉強にいそしむことになったのだった。
おしまい (67595文字)
たくさんの閲覧とリアクションのお蔭で連載できました。ありがとうございます。お礼に番外編を執筆しようと思ったのですが、案が二つほどありまして。
1.弟のオナニーを見たお兄ちゃんが襲う話
2.お兄ちゃんのオナニーを見た弟が襲う話
お互い、我慢に我慢を重ねていますからねぇ。いい話が書けそうなのですが、いかんせんどっちにするか迷ってます。コメントなどで見たい話のリクエストを受けつけますのでよろしくです。
それが決まるまで、別の話を連載していきます。
しかめっ面で僕にお説教をはじめた矢先に、兄貴は絶句する。目を見開いたまま固まる姿が、どこかおかしい。兄貴の顔の前で手を振ってみたのに、それすら目に入らないのか、茫然と遠くを見つめる。
「兄貴どうしたん…んんんっ!?」
振り返りながら声をかけたが、同じように言葉を飲み込んだ。あちこちに点在している、ベンチの様子を目の当たりにしたせいだったのだが。
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「そうだね。あんなに騒いでいたのに注目を浴びない理由が、わかりすぎるくらいに分かったよ」
僕らのイチャイチャなんて、兄弟喧嘩レベルと思われる。いやむしろ、そう思われてスルーされていたのかもしれない。
本番までヤっていないが、いい感じに服を乱した女子に男子が手を出していたり、その逆もあったりで、あちこちがくんずほぐれつ状態だった。それを見るために僕ら兄弟はここに現れて、わざと喧嘩をしているように装いながら、覗き見していたように思われたんだろう。
「前に来たときは、こんなんじゃなかったハズなんだけど」
「やっぱり元カノと来てたんだ」
目立たないように躰を小さくして、出口に向かう兄貴の背中に問いかけた。
「今はおまえと来てるんだからいいだろ! とっとと脱出するぞ」
僕の利き手を掴んだ兄貴は、早く来いと言わんばかりに引っ張り、屋上の扉を開けて校舎に戻った。遅れて僕も中に入ると、兄貴の足がピタリと止まる。不思議に思って足元を見てから兄貴の顔を見上げると、いきなり額にキスされた。
「辰之が勉強に打ち込めるように、まじないをかけた」
「えっ?」
「今度のテストでクラスで一番をとることと、学年で五位以内だったら、俺から夜這いをかけてやるよ」
「兄貴の夜這いがご褒美のテストなんて、そんなの――」
突然の無茶ぶりに、激しいめまいが僕を襲う。兄貴より優位に立とうとしたら、それを覆すものを用意するあたり、兄貴らしいというべきなのかもしれない。
「俺の弟は優秀だからなぁ。絶対に頑張ろだろう?」
「頑張るけど、その……。キスしたりちょっとだけ触ったりして、兄貴と仲良くしたいんだけど」
「おまえが勉強に集中できるように、我慢するつもり。ああなんて弟思いの兄貴なんだ、俺って!」
カラカラ笑いながら先に階段をおりていく兄貴に、なんて言葉をかけたらいいのやら。勃ちっぱなしのち〇ぽを抱えたままだからこそ、問題なんて解決できるはずもなく。
「頑張るに決まってるだろ! だって宏斗兄さんが好きなんだもん!!」
僕が涙目でシャウトすると、「俺も好きだよ」という声が下から聞こえた。妙に響いたそのセリフを胸に、しばらく勉強にいそしむことになったのだった。
おしまい (67595文字)
たくさんの閲覧とリアクションのお蔭で連載できました。ありがとうございます。お礼に番外編を執筆しようと思ったのですが、案が二つほどありまして。
1.弟のオナニーを見たお兄ちゃんが襲う話
2.お兄ちゃんのオナニーを見た弟が襲う話
お互い、我慢に我慢を重ねていますからねぇ。いい話が書けそうなのですが、いかんせんどっちにするか迷ってます。コメントなどで見たい話のリクエストを受けつけますのでよろしくです。
それが決まるまで、別の話を連載していきます。
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