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番外編
恋人の日2
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残業に勤しむ不出来な恋人を、会社の向かいにある喫茶店でコーヒーを飲みながら待っていた。
暇を持て余していたので、スマホでネットサーフィンをしていたら、アプリのメッセージが見ていた画面を不意に占拠した。
(――雅輝からじゃないか、なになに?)
『江藤ちん、今日は何の日か知ってる?』
いきなりなされた質問に、唇がひくっと引きつる。
ついこの間、電話をかけてきたときといい(不器用なふたり:ひとりきりのドライブ7参照)弟とシンクロしまくる友人の思考に、自然と頭を抱えてしまった。
素直に答える気にもなれなかったので、今日が何の日なのかを調べて、良さげなものをセレクトした。
『毎月12日はパンの日だ。それがどうした?』
さぁどうだ、参っただろうと両腕を組んで雅輝からの返事を待った。
『今日は何の日か絶対に知ってるくせに、どうして俺にイジワルするんだ。江藤ちんのドS( o言o)』
『意地悪なんてしてねぇよ。本当に何の日か知らない』
宮本に言われなかった知らなかったネタなので、あえてシラを切る。
『今日はなんと、恋人の日なんだって。江藤ちんも佑輝と一緒に過ごしたら?』
頭の中にピンク色のお花畑が広がっているであろう友人に、何て返事をしていいのやら。送られてきたメッセージの文字まで、ピンク色に染まっている感じがした。
冷めてしまったコーヒーを一口飲んでから、喜びそうな言葉をポチポチ打ち込む。
『その事、彼に教えてもらったのか?』
友人が恋してやまない、自分よりもしっかりしている年上の彼のことを思い出す。
ひょんな場所で遭遇したこともあり、雅輝の相手をまじまじと観察しながら話しかけた。
事あるごとにいろいろ相談をされていた関係で、ふたりの行く末が気になっていたのもある。だから助言をするつもりで口を開いたのに、いつの間にかケンカ腰になってしまった。
最悪な態度をとる自分に怒ると思いきや、雅輝の彼は終始冷静に対応してくれた。
むしろ、熱くなってキレてしまったことが恥ずかしくなった。
「俺は何があっても、コイツを手放すつもりはありません。大事にします」
そう言いきった彼の瞳から、友人への愛情が見てとれた。だからそれ以上の文句を言わずに、ふたりの付き合いを応援することにしたんだ。
『博学な江藤ちんが知らないことに驚き。彼は接客業をしているから、この手のネタには詳しくてね。今夜仕事が終わったら、彼がオススメする映画を見る予定なんだ』
(雅輝のヤツ、そこまで俺様は有能じゃないっていうのに。映画か、そういや随分と見ていないな――)
間違いなくニヤけた顔でメッセージを打った友人の顔を想像して笑いながら、華麗な返事を考える。
『俺様もアイツと映画を見たいが、間違いなく寝ることが分かるから、今夜は自宅で過ごすことにする』
『なんだかんだ言っても、江藤ちんってばラブラブだよね。腰をいたわりながら、ほどほどに過ごせますように(*´・ω・)(・ω・`*)』
雅輝からのメッセージを読み終えるなり、スマホをカチ割りたくなった。
『はいはい、お幸せに。じゃあな|Д´)ノ 》』
(どう考えても、雅輝たちのほうがラブラブに決まってんのによ。しかも俺の腰をいたわるあたり、アイツらしいというか……)
呆れ果てて何もする気になれなくなったそのとき、喫茶店のドアベルが勢いよく鳴った。忙しない靴音を立てた宮本が、息を切らしてやっと現れる。
「ウゲッ、不機嫌そうな顔をしているということは、待ちくたびれちゃった感じ? 頑張って、いつもより早く終わらせたのに」
「不機嫌じゃねぇよ。お前の兄貴の頭の中がハッピーすぎて、呆れ果ててたとこだ」
「兄貴とメッセしてたんだ。恋人と順調に付き合ってる話を、ちゃっかり聞いてるけど」
テーブルの上に置かれたスマホと俺様の顔を、交互に見比べる。
宮本に見せつけるような、盛大なため息をひとつ吐いてから伝票を手に立ち上がり、会計を済ませるため歩き出した。
「その順調すぎる様子を、延々と文字で表現された俺様の気持ちが分かるか?」
「あー、なるほど。当てられまくったんですね」
顔面をくしゃっと嬉しそうに歪める恋人をスルーして、さっさと会計を終えるなり外に出た。
「ねぇ江藤さん」
「なんだ?」
「俺たちも兄貴に負けないように、頑張ってイチャイチャしましょうね」
(さっきの表情から、そういうことを言うだろうなって、簡単に予想したよ。さすがは兄弟揃って、頭の中がピンク色に染まってやがる)
「やっぱりお前は馬鹿だな。こういうことは、誰かと競うものじゃねぇんだよ」
「今日は恋人の日なんだし、ちょっと違うプレイを楽しみたいなって!」
「人の話を聞け、だからお前は仕事ができないんだ……」
かみ合わない会話が続いていたのに、ふたりきりの空間に入ればいつも通りに、不思議と息がぴったり合った。
毎日が恋人の日のふたりだからこそ、なせる技なのでした。
愛でたし愛でたしイチャイチャ((っ´ω`)(´ω`⊂ ))イチャイチャ
暇を持て余していたので、スマホでネットサーフィンをしていたら、アプリのメッセージが見ていた画面を不意に占拠した。
(――雅輝からじゃないか、なになに?)
『江藤ちん、今日は何の日か知ってる?』
いきなりなされた質問に、唇がひくっと引きつる。
ついこの間、電話をかけてきたときといい(不器用なふたり:ひとりきりのドライブ7参照)弟とシンクロしまくる友人の思考に、自然と頭を抱えてしまった。
素直に答える気にもなれなかったので、今日が何の日なのかを調べて、良さげなものをセレクトした。
『毎月12日はパンの日だ。それがどうした?』
さぁどうだ、参っただろうと両腕を組んで雅輝からの返事を待った。
『今日は何の日か絶対に知ってるくせに、どうして俺にイジワルするんだ。江藤ちんのドS( o言o)』
『意地悪なんてしてねぇよ。本当に何の日か知らない』
宮本に言われなかった知らなかったネタなので、あえてシラを切る。
『今日はなんと、恋人の日なんだって。江藤ちんも佑輝と一緒に過ごしたら?』
頭の中にピンク色のお花畑が広がっているであろう友人に、何て返事をしていいのやら。送られてきたメッセージの文字まで、ピンク色に染まっている感じがした。
冷めてしまったコーヒーを一口飲んでから、喜びそうな言葉をポチポチ打ち込む。
『その事、彼に教えてもらったのか?』
友人が恋してやまない、自分よりもしっかりしている年上の彼のことを思い出す。
ひょんな場所で遭遇したこともあり、雅輝の相手をまじまじと観察しながら話しかけた。
事あるごとにいろいろ相談をされていた関係で、ふたりの行く末が気になっていたのもある。だから助言をするつもりで口を開いたのに、いつの間にかケンカ腰になってしまった。
最悪な態度をとる自分に怒ると思いきや、雅輝の彼は終始冷静に対応してくれた。
むしろ、熱くなってキレてしまったことが恥ずかしくなった。
「俺は何があっても、コイツを手放すつもりはありません。大事にします」
そう言いきった彼の瞳から、友人への愛情が見てとれた。だからそれ以上の文句を言わずに、ふたりの付き合いを応援することにしたんだ。
『博学な江藤ちんが知らないことに驚き。彼は接客業をしているから、この手のネタには詳しくてね。今夜仕事が終わったら、彼がオススメする映画を見る予定なんだ』
(雅輝のヤツ、そこまで俺様は有能じゃないっていうのに。映画か、そういや随分と見ていないな――)
間違いなくニヤけた顔でメッセージを打った友人の顔を想像して笑いながら、華麗な返事を考える。
『俺様もアイツと映画を見たいが、間違いなく寝ることが分かるから、今夜は自宅で過ごすことにする』
『なんだかんだ言っても、江藤ちんってばラブラブだよね。腰をいたわりながら、ほどほどに過ごせますように(*´・ω・)(・ω・`*)』
雅輝からのメッセージを読み終えるなり、スマホをカチ割りたくなった。
『はいはい、お幸せに。じゃあな|Д´)ノ 》』
(どう考えても、雅輝たちのほうがラブラブに決まってんのによ。しかも俺の腰をいたわるあたり、アイツらしいというか……)
呆れ果てて何もする気になれなくなったそのとき、喫茶店のドアベルが勢いよく鳴った。忙しない靴音を立てた宮本が、息を切らしてやっと現れる。
「ウゲッ、不機嫌そうな顔をしているということは、待ちくたびれちゃった感じ? 頑張って、いつもより早く終わらせたのに」
「不機嫌じゃねぇよ。お前の兄貴の頭の中がハッピーすぎて、呆れ果ててたとこだ」
「兄貴とメッセしてたんだ。恋人と順調に付き合ってる話を、ちゃっかり聞いてるけど」
テーブルの上に置かれたスマホと俺様の顔を、交互に見比べる。
宮本に見せつけるような、盛大なため息をひとつ吐いてから伝票を手に立ち上がり、会計を済ませるため歩き出した。
「その順調すぎる様子を、延々と文字で表現された俺様の気持ちが分かるか?」
「あー、なるほど。当てられまくったんですね」
顔面をくしゃっと嬉しそうに歪める恋人をスルーして、さっさと会計を終えるなり外に出た。
「ねぇ江藤さん」
「なんだ?」
「俺たちも兄貴に負けないように、頑張ってイチャイチャしましょうね」
(さっきの表情から、そういうことを言うだろうなって、簡単に予想したよ。さすがは兄弟揃って、頭の中がピンク色に染まってやがる)
「やっぱりお前は馬鹿だな。こういうことは、誰かと競うものじゃねぇんだよ」
「今日は恋人の日なんだし、ちょっと違うプレイを楽しみたいなって!」
「人の話を聞け、だからお前は仕事ができないんだ……」
かみ合わない会話が続いていたのに、ふたりきりの空間に入ればいつも通りに、不思議と息がぴったり合った。
毎日が恋人の日のふたりだからこそ、なせる技なのでした。
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