72 / 76
72
しおりを挟む
***
僕はショックがあまりに大きすぎて、浩司兄ちゃんの葬儀はおろか、自宅から出ることができなくなった。
しんと静まり返った部屋の中にひとりきり、ベッドの上で膝を抱えて、一日中ぼーっと過ごす毎日。思考が停止したまま、ただただ呼吸だけを繰り返す。
(僕があのとき、物音にいち早く反応して、浩司兄ちゃんと一緒に逃げることができていたなら――)
無駄だとわかっているのに、そんな考えばかりが頭を支配して、堂々巡りばかりしていた。
コンコンッ! 静まり返った室内に、ノックの音が響き渡った。
「龍、生きてるか?」
部活を終えた時間帯に、いつも現れる玲司。飽きもせずに、毎日僕の顔を拝みに来る。
「来たって、なにも変わってないよ」
「龍と仲のいいクラスメートが、心配してるんだぞ」
「仲のいいクラスメートなんていたっけ?」
力なく返答した僕の隣に、玲司が座り込む。
「いつまでもそんなふうにしてたら、兄貴だってあの世で心配して、天国に行けないと思う」
「浩司兄ちゃんがいなくなって、なにかが変わると思ったのに、時間だけは無常に流れていく」
「そうだな……」
「生き残った僕は、なにもしてないのにお腹は空くし、生きるために呼吸を繰り返してさ。なんのために生きてるんだろって、虚しくなってるんだ」
「龍が生きるための理由があれば、いい感じか?」
隣に座っていた玲司は腰を上げ、持っていた鞄に手を伸ばして、なにかを取り出す。
「ちょっ、それって――」
「兄貴の部屋にあった。いつもコレ使って、エッチしてたんだろ?」
玲司が鞄から取り出したものは、ローションとゴムだった。
「そんなものわざわざ持ってきて、どうするんだよ?」
眉根を寄せながら問いかけた僕を、玲司は真顔のまま静かに告げる。
「これから龍を襲う」
「は?」
「龍をめちゃくちゃにして、俺のモノにする」
逃げる間もなかった。バスケをやってる長い腕が僕の躰をベッドに勢いよく押し倒し、大柄な玲司が易々と跨る。
「やめろよ、こんな冗談……」
「兄貴に操たててる龍を、俺の手でとことんまで感じさせてやる」
冗談にしたかった僕のセリフをスルーした玲司は、迷うことなく顔を寄せて唇を押しつけた。
「ンンっ!」
自分よりも体格のいい玲司の躰を両腕で押し返したけれど、ビクともしない。強引に舌が挿入し、言葉どおりに僕を感じさせようと蠢く。
「やっ…ぁあっ、くぅっ!」
「腕、邪魔だな」
玲司は素早く自分のネクタイを解き、僕の両腕を後ろ手に縛りあげた。
僕はショックがあまりに大きすぎて、浩司兄ちゃんの葬儀はおろか、自宅から出ることができなくなった。
しんと静まり返った部屋の中にひとりきり、ベッドの上で膝を抱えて、一日中ぼーっと過ごす毎日。思考が停止したまま、ただただ呼吸だけを繰り返す。
(僕があのとき、物音にいち早く反応して、浩司兄ちゃんと一緒に逃げることができていたなら――)
無駄だとわかっているのに、そんな考えばかりが頭を支配して、堂々巡りばかりしていた。
コンコンッ! 静まり返った室内に、ノックの音が響き渡った。
「龍、生きてるか?」
部活を終えた時間帯に、いつも現れる玲司。飽きもせずに、毎日僕の顔を拝みに来る。
「来たって、なにも変わってないよ」
「龍と仲のいいクラスメートが、心配してるんだぞ」
「仲のいいクラスメートなんていたっけ?」
力なく返答した僕の隣に、玲司が座り込む。
「いつまでもそんなふうにしてたら、兄貴だってあの世で心配して、天国に行けないと思う」
「浩司兄ちゃんがいなくなって、なにかが変わると思ったのに、時間だけは無常に流れていく」
「そうだな……」
「生き残った僕は、なにもしてないのにお腹は空くし、生きるために呼吸を繰り返してさ。なんのために生きてるんだろって、虚しくなってるんだ」
「龍が生きるための理由があれば、いい感じか?」
隣に座っていた玲司は腰を上げ、持っていた鞄に手を伸ばして、なにかを取り出す。
「ちょっ、それって――」
「兄貴の部屋にあった。いつもコレ使って、エッチしてたんだろ?」
玲司が鞄から取り出したものは、ローションとゴムだった。
「そんなものわざわざ持ってきて、どうするんだよ?」
眉根を寄せながら問いかけた僕を、玲司は真顔のまま静かに告げる。
「これから龍を襲う」
「は?」
「龍をめちゃくちゃにして、俺のモノにする」
逃げる間もなかった。バスケをやってる長い腕が僕の躰をベッドに勢いよく押し倒し、大柄な玲司が易々と跨る。
「やめろよ、こんな冗談……」
「兄貴に操たててる龍を、俺の手でとことんまで感じさせてやる」
冗談にしたかった僕のセリフをスルーした玲司は、迷うことなく顔を寄せて唇を押しつけた。
「ンンっ!」
自分よりも体格のいい玲司の躰を両腕で押し返したけれど、ビクともしない。強引に舌が挿入し、言葉どおりに僕を感じさせようと蠢く。
「やっ…ぁあっ、くぅっ!」
「腕、邪魔だな」
玲司は素早く自分のネクタイを解き、僕の両腕を後ろ手に縛りあげた。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる