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物置の扉が閉まる音を聞いてから、そっと振り返った。大好きな幼なじみはそこにいなくて、なにもない空間を認識した途端に、胸が絞られるように痛んだ。
「龍……」
名前を呼んでも当然のことながら、返事は返ってこない。伸ばした手をうまいことすり抜けるように、彼は俺を拒絶する。
そうされることがわかっていたから、龍に嫌なことをしないように、代わりになるセフレを作った。
龍に声が似てるとか髪の毛の質や一重まぶたなど、ちょっとしたところが似てる年下を口説き落とした。中には性行為を拒否る相手もいたが、気持ち良さを躰に覚え込ませたあとは、流されるように俺の手に落ちていった。
だから龍にも同じことをすれば、きっと最後まですることができたというのに――。
「好きすぎて、ベルトに触れることさえできなかった……」
ワイシャツのボタンを外すのも、手が震える始末。スラックスを脱がすことすらできなかった。
二年前に怜司の部屋で龍を襲ったときは、怜司に先を越されたところを目の当たりにしたせいで、余計なことを考えずに龍に手を出すことができた。
「怜司よりも先に、龍とひとつになろうと思ったのに」
年齢が違えば学年も変わる。一緒にいられる機会がどんどん減っていく分だけ、龍との距離が遠のいている気がした。だから俺よりも龍と一緒にいることのできる怜司に、嫉妬心を抱いているのは事実で。
「龍と幼なじみじゃなかったら、恋人になれたのかな。それとも――」
せめて同い年だったなら、今よりも同じ時間を共有できただろう。そうすれば龍が俺を好きになるキッカケだって、作ることができるハズ。それかどちらかが異性だったなら、恋人になれる確率はぐっとあがる。
だけど現実の俺は男で、龍よりも二つ年上の立場は変えられない。
「俺ひとりじゃ、龍の気持ちをなんとかすることはできないんだな」
仕掛けるのは両親が出かける、ゴールデンウイーク初日。ライバルの怜司と共謀して、龍をコチラ側に堕とす。怜司がいい温泉宿を見つけてくれたことで、互いの両親が二泊三日も自宅を留守にするゆえに、その間ずっと一緒にいられる計画が叶った。
その日がくるまでに、計画を龍に悟られないように気をつけることを、怜司に言い伝えなければと考えつく。
今日のおしおきだって、計画がうまくいっているせいで、気分が高揚した結果がもたらしたことのように思えた。念には念を入れなければならない。
怜司が帰宅したら、忘れる前に注意しようと思いつつ、静かに物置をあとにしたのだった。
物置の扉が閉まる音を聞いてから、そっと振り返った。大好きな幼なじみはそこにいなくて、なにもない空間を認識した途端に、胸が絞られるように痛んだ。
「龍……」
名前を呼んでも当然のことながら、返事は返ってこない。伸ばした手をうまいことすり抜けるように、彼は俺を拒絶する。
そうされることがわかっていたから、龍に嫌なことをしないように、代わりになるセフレを作った。
龍に声が似てるとか髪の毛の質や一重まぶたなど、ちょっとしたところが似てる年下を口説き落とした。中には性行為を拒否る相手もいたが、気持ち良さを躰に覚え込ませたあとは、流されるように俺の手に落ちていった。
だから龍にも同じことをすれば、きっと最後まですることができたというのに――。
「好きすぎて、ベルトに触れることさえできなかった……」
ワイシャツのボタンを外すのも、手が震える始末。スラックスを脱がすことすらできなかった。
二年前に怜司の部屋で龍を襲ったときは、怜司に先を越されたところを目の当たりにしたせいで、余計なことを考えずに龍に手を出すことができた。
「怜司よりも先に、龍とひとつになろうと思ったのに」
年齢が違えば学年も変わる。一緒にいられる機会がどんどん減っていく分だけ、龍との距離が遠のいている気がした。だから俺よりも龍と一緒にいることのできる怜司に、嫉妬心を抱いているのは事実で。
「龍と幼なじみじゃなかったら、恋人になれたのかな。それとも――」
せめて同い年だったなら、今よりも同じ時間を共有できただろう。そうすれば龍が俺を好きになるキッカケだって、作ることができるハズ。それかどちらかが異性だったなら、恋人になれる確率はぐっとあがる。
だけど現実の俺は男で、龍よりも二つ年上の立場は変えられない。
「俺ひとりじゃ、龍の気持ちをなんとかすることはできないんだな」
仕掛けるのは両親が出かける、ゴールデンウイーク初日。ライバルの怜司と共謀して、龍をコチラ側に堕とす。怜司がいい温泉宿を見つけてくれたことで、互いの両親が二泊三日も自宅を留守にするゆえに、その間ずっと一緒にいられる計画が叶った。
その日がくるまでに、計画を龍に悟られないように気をつけることを、怜司に言い伝えなければと考えつく。
今日のおしおきだって、計画がうまくいっているせいで、気分が高揚した結果がもたらしたことのように思えた。念には念を入れなければならない。
怜司が帰宅したら、忘れる前に注意しようと思いつつ、静かに物置をあとにしたのだった。
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