17 / 76
17
しおりを挟む
「玲司が駆けつけてくれたから、なにもされなかったよ」
「誤魔化すなって。おまえ、アイツに胸倉掴まれてたろ。もしかして上級生相手に、喧嘩を売ったのか?」
怜司は不思議そうな表情で、わざわざ腰を曲げながら僕の顔を覗き込む。
「僕がそんなことする人種じゃないことくらい、わかってるクセに」
「じゃあなんで?」
納得いかないみたいといったなまなざしを玲司から注がれても、僕は実際なにもしていないのは事実。
「浩司兄ちゃんの名前を言ったことが、気に障ったみたいだよ」
「はあ? たったそれだけで、あのバカはキレたのかよ。心底飽きれた」
飽きれたと言ったタイミングで、掴まれてる手が放された。玲司らしい熱いぬくもりから解放された手が外気に晒されて、ちょっとだけ冷たくなる。
「玲司ありがとう。本当に助かった……」
その冷たさをなんとかすべく、スラックスのポケットに片手を突っ込む。
「教室の扉から緑色の制服が見えて、そのあとに従うように龍がついて行くのが見えたからさ。なにかあったらと思って、慌ててあとをつけたわけ」
「そうだったんだ。よく見てたね」
僕に近づいていた怜司の顔が、音もなく遠のいていく。
「龍本人が思ってるより、結構モテることを意識してほしいんだけどさ」
「僕が?」
中学時代、一度も告白されたらことのない僕をモテるなんて言うこと自体、おかしな話である。
告げられたセリフに疑問を感じ、首を傾げた僕に、玲司は渋い表情で説明しはじめる。
「誠実さを表すような龍の身なりや、物腰の柔らかさは、大変受けがよかったみたいで、クラスの女子から仲を取り持つように、実は結構頼まれたけど、思いっきりスルーさせてもらった」
「僕の身なり? よくわからない」
何度も目を瞬かせる僕がおかしかったのか、玲司がくすくす笑う。
「そういうとこが、龍のいいところなんだって。だから俺は好きなんだよ」
僕の視線から逃げるように、ぷいっと顔を背けるなり、教室に戻る玲司。彼の気持ちを知っていながら断ってる僕としては、声をかけづらかった。
このことに困り果てた結果、玲司の姿が見えなくなるまで、その場に立ちつくしてしまったのだった。
「誤魔化すなって。おまえ、アイツに胸倉掴まれてたろ。もしかして上級生相手に、喧嘩を売ったのか?」
怜司は不思議そうな表情で、わざわざ腰を曲げながら僕の顔を覗き込む。
「僕がそんなことする人種じゃないことくらい、わかってるクセに」
「じゃあなんで?」
納得いかないみたいといったなまなざしを玲司から注がれても、僕は実際なにもしていないのは事実。
「浩司兄ちゃんの名前を言ったことが、気に障ったみたいだよ」
「はあ? たったそれだけで、あのバカはキレたのかよ。心底飽きれた」
飽きれたと言ったタイミングで、掴まれてる手が放された。玲司らしい熱いぬくもりから解放された手が外気に晒されて、ちょっとだけ冷たくなる。
「玲司ありがとう。本当に助かった……」
その冷たさをなんとかすべく、スラックスのポケットに片手を突っ込む。
「教室の扉から緑色の制服が見えて、そのあとに従うように龍がついて行くのが見えたからさ。なにかあったらと思って、慌ててあとをつけたわけ」
「そうだったんだ。よく見てたね」
僕に近づいていた怜司の顔が、音もなく遠のいていく。
「龍本人が思ってるより、結構モテることを意識してほしいんだけどさ」
「僕が?」
中学時代、一度も告白されたらことのない僕をモテるなんて言うこと自体、おかしな話である。
告げられたセリフに疑問を感じ、首を傾げた僕に、玲司は渋い表情で説明しはじめる。
「誠実さを表すような龍の身なりや、物腰の柔らかさは、大変受けがよかったみたいで、クラスの女子から仲を取り持つように、実は結構頼まれたけど、思いっきりスルーさせてもらった」
「僕の身なり? よくわからない」
何度も目を瞬かせる僕がおかしかったのか、玲司がくすくす笑う。
「そういうとこが、龍のいいところなんだって。だから俺は好きなんだよ」
僕の視線から逃げるように、ぷいっと顔を背けるなり、教室に戻る玲司。彼の気持ちを知っていながら断ってる僕としては、声をかけづらかった。
このことに困り果てた結果、玲司の姿が見えなくなるまで、その場に立ちつくしてしまったのだった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる