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寝る前に、怜司からLINEがきた。
『龍の接し方について、兄貴にめちゃくちゃ叱られた』から文章がはじまり、長文で謝罪が延々と打ち込まれていたものの、それを読んで素直に許せる気になれなかった。しかも――。
「僕の古着を一着欲しいって、なんなんだよ……」
なんでも僕を襲わないようにするための身代わりにしたいという理由に、頭痛がしてきた。これに僕が反発して、怜司に洋服を手渡さなかったら、襲われる恐れがあるということになる。
自分の身を守るために、仕方なく怜司に身代わりをプレゼントしなければならないと考え、クローゼットを漁ることにした。
(浩司兄ちゃんはセフレで、怜司は僕の洋服で我慢するとか、正気の沙汰とは思えないよ……)
この世には僕よりも、魅力的な異性がたくさんいる。それなのにどうしてふたりは、どこにでもいる僕のような同性を好きになったのやら。
「めんどくさっ、もうこれでいいや!」
クローゼットの中をごそごそしているうちに、首がよれよれになったTシャツを見つけたので、それを引っ張り出し、お母さんが溜めこんでいる紙袋をリビングからひとつだけ頂戴した。小さく適当に降り畳んだTシャツをその中に入れる。
問題はここからである。それをいつ怜司に渡すか、だって――。
「アイツとは絶対に、ふたりきりになっちゃダメだ。放課後の二の舞になるのが目に見える」
時刻は午後11時35分、今から隣にある怜司の自宅のポストに紙袋を突っ込み、次の日の登校前にLINEしたら、顔を合わせずに済むことを考えついた。善は急げである。
夜遅くなので、物音をたてないように急いで家を出て隣に向かい、門扉についてるポストにちょっとだけ厚みのある紙袋を突っ込んで、強引に奥へと押し込む。
カタンという金属音で、紙袋が無事にポストにインされたのがわかり、ほっと一安心した。安堵のため息をつきつつ、自宅に戻りかけたそのとき。
「龍!」
「ゲッ、怜司……」
なぜか家から、怜司が顔を出した。
「龍ってばこんな遅くに、なにしてんだよ?」
一歩足を踏み出したのを見て、「こっちに来るな!」と慌てて怜司に静止を促す。
「僕に近づいてほしくない」
「ごめん……」
拒絶する僕のセリフを聞いた玲司は、憂鬱に表情を曇らせた。
「LINEで玲司に頼まれた例のものを見繕って、今ポストに入れた。僕がここからいなくなったあとで受け取って」
「わざわざ、こんな時間に用意してくれたのか?」
途端に瞳を輝かせた玲司は、嬉しそうな顔で自分の胸元をぎゅっと握りしめた。
「あんなふうに切羽詰まった感じで、LINEに書かれていたら、すぐに用意しないとなって思っただけ。深い意味はないよ……」
「マジかよ。ヤバ、すごく嬉しい。龍、ありがとう!」
まるで小さな子どものように、思いきりはしゃぐ玲司。顔を俯かせて、ほかにもなにかブツブツ言い続ける。
寝る前に、怜司からLINEがきた。
『龍の接し方について、兄貴にめちゃくちゃ叱られた』から文章がはじまり、長文で謝罪が延々と打ち込まれていたものの、それを読んで素直に許せる気になれなかった。しかも――。
「僕の古着を一着欲しいって、なんなんだよ……」
なんでも僕を襲わないようにするための身代わりにしたいという理由に、頭痛がしてきた。これに僕が反発して、怜司に洋服を手渡さなかったら、襲われる恐れがあるということになる。
自分の身を守るために、仕方なく怜司に身代わりをプレゼントしなければならないと考え、クローゼットを漁ることにした。
(浩司兄ちゃんはセフレで、怜司は僕の洋服で我慢するとか、正気の沙汰とは思えないよ……)
この世には僕よりも、魅力的な異性がたくさんいる。それなのにどうしてふたりは、どこにでもいる僕のような同性を好きになったのやら。
「めんどくさっ、もうこれでいいや!」
クローゼットの中をごそごそしているうちに、首がよれよれになったTシャツを見つけたので、それを引っ張り出し、お母さんが溜めこんでいる紙袋をリビングからひとつだけ頂戴した。小さく適当に降り畳んだTシャツをその中に入れる。
問題はここからである。それをいつ怜司に渡すか、だって――。
「アイツとは絶対に、ふたりきりになっちゃダメだ。放課後の二の舞になるのが目に見える」
時刻は午後11時35分、今から隣にある怜司の自宅のポストに紙袋を突っ込み、次の日の登校前にLINEしたら、顔を合わせずに済むことを考えついた。善は急げである。
夜遅くなので、物音をたてないように急いで家を出て隣に向かい、門扉についてるポストにちょっとだけ厚みのある紙袋を突っ込んで、強引に奥へと押し込む。
カタンという金属音で、紙袋が無事にポストにインされたのがわかり、ほっと一安心した。安堵のため息をつきつつ、自宅に戻りかけたそのとき。
「龍!」
「ゲッ、怜司……」
なぜか家から、怜司が顔を出した。
「龍ってばこんな遅くに、なにしてんだよ?」
一歩足を踏み出したのを見て、「こっちに来るな!」と慌てて怜司に静止を促す。
「僕に近づいてほしくない」
「ごめん……」
拒絶する僕のセリフを聞いた玲司は、憂鬱に表情を曇らせた。
「LINEで玲司に頼まれた例のものを見繕って、今ポストに入れた。僕がここからいなくなったあとで受け取って」
「わざわざ、こんな時間に用意してくれたのか?」
途端に瞳を輝かせた玲司は、嬉しそうな顔で自分の胸元をぎゅっと握りしめた。
「あんなふうに切羽詰まった感じで、LINEに書かれていたら、すぐに用意しないとなって思っただけ。深い意味はないよ……」
「マジかよ。ヤバ、すごく嬉しい。龍、ありがとう!」
まるで小さな子どものように、思いきりはしゃぐ玲司。顔を俯かせて、ほかにもなにかブツブツ言い続ける。
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