3 / 76
3
しおりを挟む夜の闇の中、商売柄もあってあまりに眠れぬもんだから、
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
5
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる