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番外編 運命の人
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「アンドレア様、お手を煩わせてしまいますが、一本だけ蝋燭に火を灯していただけますでしょうか」
「五本じゃなく一本というところが、控えめなおまえらしいな」
カールの性格を表すオネダリに、すぐさま応えてやる。一本だけ蝋燭に火を灯すをと、少し離れたところにいるカールが、俺に優しくほほ笑みかけた。俺の大好きな顔――ずっと傍で見ていたいと思うそれに、胸が熱くなる。
「ありがとうございます」
「カールにお願いがあるんだ。今後のことなんだが」
穏やかな雰囲気に導かれて、考えていたことをすんなりと口にした。不思議顔をするカールをちゃんと見て、今後の展開を説明する。きっと驚くに違いない。
「俺はこれから流行り病にかかり、三ヶ月後に亡くなる予定だ」
「え?」
「俺が寝込んでいる間は、おまえは暇を持て余すだろう? だから書斎のキャビネットにしまっている『古城の管理』と『骨董品の取り扱い』関連の本を読んで、勉強してくれ。セットでそれぞれ保管しているから、かなりの冊数になるけどな」
コッソリ用意したものを、人差し指を立てて、わかりやすいようにレクチャーしたのに、カールは意味がわからないと言いたげな顔で、俺をまじまじと見つめた。
「勉強することは構いませんが、どうして古城の管理と骨董品の取り扱いなのでしょうか?」
(聞いて驚け! この計画の大筋を考えたのが俺だからこそ(細かい修正は、叔母様がここぞとばかりにした)ド肝抜くに違いない!)
「それは俺が亡くなった後に、おまえはここを出て、南方にある古城のメンテナンスをするためだ」
「私の再就職先をお決めになっているとは。ちなみに、アンドレア様が亡くなるというのは?」
「プレザンス家の次期当主が、生きてちゃダメだろ。俺がこの世から消えたことにより、妹が婿をとって跡を継ぐのだからな」
カールが驚くと思っていたのに、なぜかしょんぼりとした悲しげな表情になった。
「カール、そんな顔をするな。俺は自分の立場について、まったく未練はない。むしろ別の名を考えるのが、今は楽しくてな。それに――」
悲壮感漂う顔をなんとかしたくて、俺はカールの傍に近寄り、片膝を床について、ほっそりとした利き手をやんわりと掴む。
「男爵家三男のカール・ドゥ・イタッセの使用人として、俺は仕えることになるんだ」
「アンドレア様が私に仕えるうぅっ!?」
やっと驚いてくれたことにほっとし、掴んだ手の甲にキスを落とした。
「つっ!」
「おまえの出身が貴族でよかった。しかもワガママな令息の執事をこなしているという経歴も、プラス要素でな。おかげで、古城の管理を任せてもらえることになってる」
「アンドレア様が、ワガママな令息なんて……」
カールが苦しげに顔を歪ませて、首を横に振って否定しても、この計画を遂行するにあたり、俺がダメな次期当主だというのを父上を含め、世間の目に映るように仕向けている。
「しょうがないだろ、そう噂されているんだ。それは事実なんだし、否定するだけ野暮だろ」
ダメな俺に仕えているおまえが悪く言われないか、そこだけが心配だった。
「五本じゃなく一本というところが、控えめなおまえらしいな」
カールの性格を表すオネダリに、すぐさま応えてやる。一本だけ蝋燭に火を灯すをと、少し離れたところにいるカールが、俺に優しくほほ笑みかけた。俺の大好きな顔――ずっと傍で見ていたいと思うそれに、胸が熱くなる。
「ありがとうございます」
「カールにお願いがあるんだ。今後のことなんだが」
穏やかな雰囲気に導かれて、考えていたことをすんなりと口にした。不思議顔をするカールをちゃんと見て、今後の展開を説明する。きっと驚くに違いない。
「俺はこれから流行り病にかかり、三ヶ月後に亡くなる予定だ」
「え?」
「俺が寝込んでいる間は、おまえは暇を持て余すだろう? だから書斎のキャビネットにしまっている『古城の管理』と『骨董品の取り扱い』関連の本を読んで、勉強してくれ。セットでそれぞれ保管しているから、かなりの冊数になるけどな」
コッソリ用意したものを、人差し指を立てて、わかりやすいようにレクチャーしたのに、カールは意味がわからないと言いたげな顔で、俺をまじまじと見つめた。
「勉強することは構いませんが、どうして古城の管理と骨董品の取り扱いなのでしょうか?」
(聞いて驚け! この計画の大筋を考えたのが俺だからこそ(細かい修正は、叔母様がここぞとばかりにした)ド肝抜くに違いない!)
「それは俺が亡くなった後に、おまえはここを出て、南方にある古城のメンテナンスをするためだ」
「私の再就職先をお決めになっているとは。ちなみに、アンドレア様が亡くなるというのは?」
「プレザンス家の次期当主が、生きてちゃダメだろ。俺がこの世から消えたことにより、妹が婿をとって跡を継ぐのだからな」
カールが驚くと思っていたのに、なぜかしょんぼりとした悲しげな表情になった。
「カール、そんな顔をするな。俺は自分の立場について、まったく未練はない。むしろ別の名を考えるのが、今は楽しくてな。それに――」
悲壮感漂う顔をなんとかしたくて、俺はカールの傍に近寄り、片膝を床について、ほっそりとした利き手をやんわりと掴む。
「男爵家三男のカール・ドゥ・イタッセの使用人として、俺は仕えることになるんだ」
「アンドレア様が私に仕えるうぅっ!?」
やっと驚いてくれたことにほっとし、掴んだ手の甲にキスを落とした。
「つっ!」
「おまえの出身が貴族でよかった。しかもワガママな令息の執事をこなしているという経歴も、プラス要素でな。おかげで、古城の管理を任せてもらえることになってる」
「アンドレア様が、ワガママな令息なんて……」
カールが苦しげに顔を歪ませて、首を横に振って否定しても、この計画を遂行するにあたり、俺がダメな次期当主だというのを父上を含め、世間の目に映るように仕向けている。
「しょうがないだろ、そう噂されているんだ。それは事実なんだし、否定するだけ野暮だろ」
ダメな俺に仕えているおまえが悪く言われないか、そこだけが心配だった。
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