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番外編 運命の人

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「だったら出逢ったときに、恋愛に発展するナニかがあったに違いないわ!」

「叔母様のいいところって、アレか。メロンを使ったと」

「メロン?」

「なんでもない、気にするな」

 発展途中の妹の胸元を見て指摘したが、不思議そうに目を瞬かせている彼女には、伝わっていないらしい。

 パーティなんかで女のコと腕を組んだときに、自分をアピールするために、ここぞとばかりに押しつけられることにウザさを感じて、内心辟易していた。

(叔母様が皇太子殿下を落とすやり手だったとは、考えたこともなかったな――)

 顎に手をやり、ぼんやり考えていると。

「ウチの使用人と恋に落ちるなら、カールがいいわよね」

「カールだと!?」

 唐突に告げられた言葉に、思わずギョッとして、ソファから腰をあげてしまった。

「だって使用人の中で、見た目が一番いいですもの。それに優しくて紳士的ですし、今度お友達のお屋敷でおこなわれるパーティで、エスコートをしていただきたくて」

「…………」

「お兄様ってば、そんなにわたくしのことが好きだったのかしら?」

「へっ?」

「まるで、ヤキモチを妬いてるみたいなお顔でしてよ」

 妹にクスクス笑われても、なにも言えなかった。下手な弁解をして、余計な詮索をされないように顔を背け、「好きに言ってろ」と捨てセリフを吐く。

 身分違いの恋――しかも同性同士なんて、明るい未来がまったく見えなかった。

 だからこそバカな俺よりも、皇太子殿下を手に入れた、やり手の叔母様にお知恵を借りようと、勇んでアクセスしたら、すぐに遊びに来いとお呼ばれしたのである。

「アンドレア様、駅までお送りしますよ」

「いらない。友達がそこまで迎えに来てくれることになってる」

 カールとの恋愛の相談をしに行くため、秘密裏に行動したかったが、できる執事様をあしらうのに苦労する。

「カール、リリアーネが友達のパーティに行くのに、おまえにエスコートしてほしいと言ってた。日取りを聞いて、対処してやってほしい」

「かしこまりました」

「それが終わったら、自由に過ごせ。俺みたいにハメを外しすぎて、怒られるなよ」

 一応釘をさしてから、颯爽とその場を立ち去った。

「行ってらっしゃいませ」

「遅くなるから夕飯はいらない」

 右手をヒラヒラ振って屋敷から遠のき、角を曲がったところで待たせてあるタクシーに乗り込む。そこから空港に向かい、飛行機を使って、叔母様がいらっしゃる南方にある宮殿に赴く。
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