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私の推しは須藤課長!
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私がお手伝いできることを積極的におこない、経営戦略部のメンバーのフォローに勤しんだ。
通常業務をこなしながら、今回の転落事故を糸口にして、対向派閥が手を出せないように下準備をする毎日。みんなが一丸となって頑張ったおかげで、予定より早く終わったことを、猿渡さんがあとからコッソリ教えてくれた。
だって仕事の問題が解決した合図が、帰り際になされた――。
「ヒツジ、今日は一緒に帰るから」
という須藤課長のセリフだったせい。感極まって驚いたのは私だけじゃなく、ほかのメンバーは魂が抜けたような表情をありありと浮かべて、ある者はデスクに突っ伏したり、しゃがみ込む人もいたり。
いつも煩い猿渡さんですら疲れきった表情で、黙ったまま天井を仰ぎ見るなんてことをしたゆえに、予定より早く問題が解決したことを、このとき言えなかったみたい。
「ヒツジ?」
「あっ、わかりました。一緒に帰ります……」
須藤課長が自分に与えた罰――今後一切私に触れない、オナニーもしない、禁欲生活をすると宣言してから、めちゃめちゃ線を引かれた。ここ数日間は本当につらかったのか、もの欲しげに私を見る目が潤んでいて、妙な色香を放っていた。
ストイックさを極めるその姿に、メンバーはあえてツッコミを入れずに、同情の視線を注ぐだけで終わらせていたのも、問題解決に繋がったんだと思う。
「おまえたちも今日は、どこにも寄らずに帰ること。明日から営業部の企画会議に向けて、腹の探り合いやらいろんなイベントが控えているからな。こき使われることを想定して、しっかり休んでおくように。以上解散!」
元気いっぱいの須藤課長の号令を聞いたメンバーは、牢屋に入れられる罪人みたいな顔で「お疲れ様でした」とそれぞれ声をかけて、部署を出て行く。
メンバーの肩が落ちきった様子を、須藤課長の横で一緒に見送った。最後のひとり、申し訳なさそうな表情の原尾さんが私を見て、何度も頭を下げる姿に笑っていると。
「それだけでも妬けます」
ぽつりと呟いたひとことに反応して、隣を見上げた。部署の扉が閉まる音と同時に、優しく塞がれた唇。触れるだけのキスがもどかしくて、須藤課長の首に手をかけたら、抵抗するように唇が離される。
私がお手伝いできることを積極的におこない、経営戦略部のメンバーのフォローに勤しんだ。
通常業務をこなしながら、今回の転落事故を糸口にして、対向派閥が手を出せないように下準備をする毎日。みんなが一丸となって頑張ったおかげで、予定より早く終わったことを、猿渡さんがあとからコッソリ教えてくれた。
だって仕事の問題が解決した合図が、帰り際になされた――。
「ヒツジ、今日は一緒に帰るから」
という須藤課長のセリフだったせい。感極まって驚いたのは私だけじゃなく、ほかのメンバーは魂が抜けたような表情をありありと浮かべて、ある者はデスクに突っ伏したり、しゃがみ込む人もいたり。
いつも煩い猿渡さんですら疲れきった表情で、黙ったまま天井を仰ぎ見るなんてことをしたゆえに、予定より早く問題が解決したことを、このとき言えなかったみたい。
「ヒツジ?」
「あっ、わかりました。一緒に帰ります……」
須藤課長が自分に与えた罰――今後一切私に触れない、オナニーもしない、禁欲生活をすると宣言してから、めちゃめちゃ線を引かれた。ここ数日間は本当につらかったのか、もの欲しげに私を見る目が潤んでいて、妙な色香を放っていた。
ストイックさを極めるその姿に、メンバーはあえてツッコミを入れずに、同情の視線を注ぐだけで終わらせていたのも、問題解決に繋がったんだと思う。
「おまえたちも今日は、どこにも寄らずに帰ること。明日から営業部の企画会議に向けて、腹の探り合いやらいろんなイベントが控えているからな。こき使われることを想定して、しっかり休んでおくように。以上解散!」
元気いっぱいの須藤課長の号令を聞いたメンバーは、牢屋に入れられる罪人みたいな顔で「お疲れ様でした」とそれぞれ声をかけて、部署を出て行く。
メンバーの肩が落ちきった様子を、須藤課長の横で一緒に見送った。最後のひとり、申し訳なさそうな表情の原尾さんが私を見て、何度も頭を下げる姿に笑っていると。
「それだけでも妬けます」
ぽつりと呟いたひとことに反応して、隣を見上げた。部署の扉が閉まる音と同時に、優しく塞がれた唇。触れるだけのキスがもどかしくて、須藤課長の首に手をかけたら、抵抗するように唇が離される。
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