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私の推しは須藤課長!

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「須藤課長、副社長に提出する報告書、ヒツジちゃんに持って行ってもらっていいですか?」

(よかった、原尾さんが反応してくれて――)

 ホッとしたのもつかの間だった。

「かまわない。松本、護衛を頼む」

「護衛付きなんて、そんなの申し訳ないです!」

 須藤課長の配慮に戸惑う私の声を消すように、猿渡さんがデスクに頬杖をつきながら説明した。

「ええねん、気にする必要ないで。朝からヒツジちゃんの護衛は、ついてたんやから」

「朝って?」

「家を出た瞬間からや。そうやって気を遣うと思ったから、あえて言わんかったんやけど。君は須藤課長のアキレス腱なんだし、守るのは当然のことや」

「でも……」

 困って須藤課長を見つめると、キーボードを操作していた手を止めて私を見てから、猿渡さんに視線を飛ばす。

「自分の不注意でヒツジを危険な目に遭わせたことを、猿渡なりに償おうとしているのを、わかってあげてほしい。それにコイツらは、護衛するのを楽しんでいるからな」

「楽しんでいる?」

 大変そうなことだと思うのに、いったいなにが楽しんだろうかと、目を瞬かせてしまった。

「ヒツジの護衛についたら今やってる仕事を、もれなく誰かに押しつけることができるらしい。そうだよな猿渡?」

「須藤課長よぉ知ってはるなぁ。せやからみんな揃って、喜んで護衛をしているわけなんだわ。そういうわけで部署から出るときは、ひと声かけてな。じゃんけんで護衛を決めるから」

「猿渡悪いがヒツジが定時で帰るときは、原尾を護衛につけてやってくれ。思春期の娘さんとのコミュニケーションが、それなりに大事だろうから。残った独身貴族は、俺が決めたノルマを達成するまで帰さない」

 いきなりの残業命令に原尾さん以外のメンバーは、うんざりといった表情をありありと浮かべた。

「ただし高藤は1時間残業してから帰れ。例の想い人が経営してる店に通ってるんだろ?」

(須藤課長、本当になんでも知ってる。そしてそれを元に、部下を配慮しているなんて――)

 優しくて格好いいと思って見つめたら、バッチリ目があってしまった。その瞬間、須藤課長の頬がぶわっと赤くなる。

 慌てて俯いて私から視線を逸らす須藤課長に、高藤さんが声をかけた。

「確かに彼女のお店に顔を出してますが、仕事を疎かにしてまで、通う必要はないと思います」
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