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私の推しは須藤課長!
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「雛川さん、本当にいいの? そんなくだらないことくらいで動揺する恋人って、ちょっといただけないと思うよ」
馬鹿にする山田さんのセリフにイラついた私は、須藤課長の隣に並び、睨みをきかせた。
「山田さんにとって、くだらないことかもしれませんが、私にとってはくだらないことじゃないんです。須藤課長が一生懸命に、私を守ってくれようとしているんですから!」
「愛衣さん……」
繋がれた須藤課長の手に力が入る。それに応えるように、ぎゅっと握りしめた。
「雛川さんはわかってないでしょ。須藤課長がここに来た本当の理由」
「それは山田さんから、私を助けるために――」
「違うよ。ねぇ、須藤課長?」
小首を傾げながら山田さんに訊ねられた須藤課長は、ちょっとだけ顎を引く。目の前から注がれる視線から逃げるように、両目を泳がせる様子は、普段見ることのない姿だった。
「充明くん?」
不安げな表情だったので、思わず名前で呼んでしまった。
「須藤課長は仕事において頭は切れるけど、恋愛経験が少なすぎて自分に自信がない。だから恋愛経験が豊富な高藤さんや俺が雛川さんにモーションをかけて、心移りするんじゃないかと思っているんでしょ」
「半分当たっているが、それだけじゃない」
須藤課長は握りしめていた手を放して背筋を伸ばし、山田さんを食い入るように見つめる。不安そうにしていた表情はすでになく、肩の力がいい感じに抜けている様に、ほっと安堵した。
「俺は自分が嫌いだ。なにをするにも人より不器用で、何倍も苦労してる。愛想だってよくない。そんな男が誰かに好かれるなんて想像できなかったし、面白みのない俺に愛衣さんがいつか愛想を尽かすんじゃないかって、ハラハラしている現状を抱えてる」
「自分の悪いところがわかっているなら、改善するなりしたらいいのに。須藤課長、そういうところがもったいないですよね」
「できたら、とうの昔にやってるさ」
「やってますよ、充明くん。私のために、頑張ってくれたじゃないですか!」
模擬デートでテーマパークの見取り図を完璧に暗記して、私をエスコートしてくれた。嫌々ながらもメリーゴーランドに乗ったり、高所恐怖症なのに観覧車にも乗ってくれた。
馬鹿にする山田さんのセリフにイラついた私は、須藤課長の隣に並び、睨みをきかせた。
「山田さんにとって、くだらないことかもしれませんが、私にとってはくだらないことじゃないんです。須藤課長が一生懸命に、私を守ってくれようとしているんですから!」
「愛衣さん……」
繋がれた須藤課長の手に力が入る。それに応えるように、ぎゅっと握りしめた。
「雛川さんはわかってないでしょ。須藤課長がここに来た本当の理由」
「それは山田さんから、私を助けるために――」
「違うよ。ねぇ、須藤課長?」
小首を傾げながら山田さんに訊ねられた須藤課長は、ちょっとだけ顎を引く。目の前から注がれる視線から逃げるように、両目を泳がせる様子は、普段見ることのない姿だった。
「充明くん?」
不安げな表情だったので、思わず名前で呼んでしまった。
「須藤課長は仕事において頭は切れるけど、恋愛経験が少なすぎて自分に自信がない。だから恋愛経験が豊富な高藤さんや俺が雛川さんにモーションをかけて、心移りするんじゃないかと思っているんでしょ」
「半分当たっているが、それだけじゃない」
須藤課長は握りしめていた手を放して背筋を伸ばし、山田さんを食い入るように見つめる。不安そうにしていた表情はすでになく、肩の力がいい感じに抜けている様に、ほっと安堵した。
「俺は自分が嫌いだ。なにをするにも人より不器用で、何倍も苦労してる。愛想だってよくない。そんな男が誰かに好かれるなんて想像できなかったし、面白みのない俺に愛衣さんがいつか愛想を尽かすんじゃないかって、ハラハラしている現状を抱えてる」
「自分の悪いところがわかっているなら、改善するなりしたらいいのに。須藤課長、そういうところがもったいないですよね」
「できたら、とうの昔にやってるさ」
「やってますよ、充明くん。私のために、頑張ってくれたじゃないですか!」
模擬デートでテーマパークの見取り図を完璧に暗記して、私をエスコートしてくれた。嫌々ながらもメリーゴーランドに乗ったり、高所恐怖症なのに観覧車にも乗ってくれた。
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