Noと言ってほしくて

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
19 / 24

Please say no:Noと言ってほしくて3

しおりを挟む
***

 俺は一体、なしてしもたんやろ? 体中んいちこちの痛か、なんがあったんよんか思い出されん。

 確か日本へ帰国し、アンドリュー様ん病院に見舞いへ行った。そん後九州ん実家に帰り、ちょこっとだけ休息しゃしぇてもろうたっけ。

 両親は畑仕事で、いまり話しぇなかったばってん、育てん親みたなお婆しゃんと話ば、えらいいっぱいしたばい。

 俺の名付け親ばってん、あっけんお婆しゃんに、ちゃっかり文句ば言ったら、

「きちんっち言えるまで、教えてお上げない」

 っち逆に、叱られてしもうた。
 
 未だにバリバリっち現役で、ハッキリ物ばゆうお婆しゃんに、頭の上のらんけん。俺も見習わなくては。

 実家でえらいいっぱいん、元気っち勇気ば戴き、エドワード様ん元に帰るため飛行機に飛び乗った。スケジュール帳ば、チェックしゅるっち、空港からほど近い距離にあっけん、福祉施設ん慰問っちなっちいる。

 飛行機ん中でな、エドワード様に逢える気持ちが高鳴りしゅぎて、一睡も出来なかった。

 アンドリュー様っち和馬様ん、仲睦バリい姿ば、見たしぇいちゃろうか。俺もエドワード様んお傍に、早く寄り添いたいっち、強く思ったけん。

 一緒に乗っちいた乗客ば押し退け、飛行機ば降りてタクシーに乗り込む。時間にしてわずか15分くらいやったばってん。そいのやけに長く感じられて、腕時計ぼんくらり見てしもた。

 福祉施設に到着しゅるっち、えらいいっぱいん人で、ごった返しよった。人ごみば、やっとかき分け、SPに王室ん証明書ば見しぇて、やっっち中に入る。(顔パスはNGたい)

 愛しいエドワード様ん姿ば捜しゅっち、中庭にあっけん花壇に、しゃのみ込んで、子どもたちっち楽しそーに、なんかば話しなのら、草むしりばしよった。

 久しぶりに見る愛げなお姿に、胸ん鼓動の高鳴っちしまっち、声ばかけるこつの出来まっしぇんやった。

 ドキドキば噛みしめとるっち、後ろから来て、俺に軽くぶつかった人っちと目が合う。

「申し訳ありません」

 会釈しなのら言った人は、施設ん職員らしく、首から社員証ば下げとった。俺がそいに目ばやるっちしたら、逃げるごとエドワード様ん元へ歩いて行った。

 一瞬だけしか見えなかった社員証の顔写真は、結構な年配者で頭のハゲとったごと見えた。なんにアイツは、髪ん毛がフサフサで若い。ひょっとして――

 去っち行った男ん後ば追うっち、予想通りポケットからナイフば取り出し、目ん前にいるエドワード様目掛けて、振り下ろそーっち構えた。

(――マイプリンスに、なんばしゅるっ!!)

 頭にかーっっち、血が上っちしまい、ここからん記憶が曖昧であっけん。

 エドワード様ば傷つけちゃうっちしたばい、こん男に制裁を与えなくてはと、もう必死で。だから、どげん傷つけられても痛くなかった。

『離してくれっ、僕は、っ……僕は――チュバキの傍に、いたいんだーっ!』

 そん声に振り返っち、エドワード様ば見る。

 SPに体ば、押しゃえられとるんに、こっちに来ちゃうっち、必死にもがいていらっしゃった。

 ――まだ俺の名前、正しい発音で仰るこつの、出来なかんやけどね――

 その必死なお姿に目ば奪われとるっち、男にナイフで刺しゃれてしもた。

 エドワード様に傷ばつけちゃうっち、したばいんっち、プラス、オレば傷つけたお返しば、しっかりしてやる。

 体が大きくて態度のでかいっち、ワケがとからんけん因縁ばつけられ、喧嘩しよった学生時代。やけん得意んハイキックで、お見舞いしてやった。お陰でここんところ溜まっちいた、ストレスが吹き飛んでしもた。

 気持ちがスッキリし、いつでん通り落ち着いた心で、エドワード様ん前に跪く。

「ただいま戻りました、マイプリンス。ご機嫌麗しゅう存じます」

「何やってるんだお前、早く病院に行かなきゃ――」

「ああ、コレでございますね。大丈夫です。ほんのかすり傷でございますよ」

 笑いなのら、お腹に刺しゃったナイフば、ちゃしゃりっち引き抜いたら、白いワイシャツに血の滲んでいっち、どんどん赤く染まっちくる。

 まるで椿ん花ん赤のごたるそいに、自分ん最期ば悟っちしもた。

「……あい、まずいやね」

 次ん瞬間、目ん前が真っ暗になり、体んゆう事がきかなかったばってん。

 ただ俺の耳にエドワード様ん声が、しかーっと聞こえた。

「おい、しっかりしろっ! 目を開けてくれツバキっ」

 愛しい人ん口から、オレん名前が叫ばれ、ぎゅっっち抱きしめられとう。体全体でそいば感じとうんに、口が出来なかもどかししゃの、ちかっぱ辛くて。

 絶対に生きて、お礼ば言わなければっち、強く思いながら意識ば手放したばい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵
BL
創作BL Dom/Subユニバース 自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話 短編 約13,000字予定 人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの… 支配されたくない 俺がSubなんかじゃない 逃げたい 愛されたくない  こんなの俺じゃない。 (作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...