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ノース・カロライナから来た男(下手くそ杯参加作)
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第1話 屋根
男はノース・カロライナ州からやって来た。ノース・カロライナ州はその名の通り北の方に位置するだろうから、とても寒い。新潟県ぐらい雪が積もることもなきにしもあらず。ノース・カロライナ州からやって来たから男の名前はノース・カロライナである。ノース・カロライナは自宅の屋根に積もる雪をこそぎ落としていた。
午後の黄昏、隣人のキャサリン・ハンバーグステーキが「私の家の屋根の上の雪も落としておいてくれますかしら?」と屋根で作業をしているノース・カロライナに言った。しかしノース・カロライナは耳栓をしていたためキャサリン・ハンバーグステーキの声は聞こえなかった。
なぜ耳栓をしているのか。それは誰にもわからないし、ノース・カロライナだってわからない。
「しかし、寒いな」とノース・カロライナは言った。ノース・カロライナの周りには誰もいないので誰も返事はしない。しかし周りに誰もいないことはノース・カロライナ自身が一番よく知っていた。なぜならノース・カロライナは雪をこそぎ落としながら常に周辺に睨みを効かせていたからだった。
4時間ほどでノース・カロライナは自宅の屋根に積もる雪をすべてこそぎ落とすことができた。以前こそぎ落とした時は4時間半かかったので新記録であった。しかしノース・カロライナはそんなものには興味がなかった。それよりも、夜から始まるベースボールが楽しみなのである。
ノース・カロライナはソファに座ってハイネケンを飲んでいる。これからベースボールの試合が始まる。そこでノース・カロライナはノース・カロライナ州がアメリカのどこに位置しているのか疑問に思った。今までこんなことに疑問を抱くことはなかった。ノース・カロライナにとってノース・カロライナ州がどこにあろうと関係ないし、どうでもよかったのである。
しかしノース・カロライナの家には地図はない。パソコンもスマホもネット回線すらない。あるのはTVとベッドとソファとキッチンとシャワールームだけである。
ノース・カロライナは自宅の屋根に積もる雪を4時間もこそぎ落としたので汗みずくになっていた。ソファが汗で臭くなると嫌なので、ソファから立ち上がってシャワールームへ行った。そこで裸になり、湯と水でいい感じの温度のシャワーを出し、シャワーを浴びた。その間ノース・カロライナは鼻歌を歌っていた。ノース・カロライナ自身で作ったオリジナル曲だった。ノース・カロライナはギターが弾けないので鼻歌でしか音楽を奏でられない。
ノース・カロライナがシャワーを浴び終わりバスタオルで髪を拭いていると、家の電話が鳴った。なにを隠そうノース・カロライナは潜入スパイなのである。
「はい、ノース・カロライナです」
「やあ、ノース・カロライナ」
「おっ、その声は、CIAの局長ですね」
「うむ、よくわかったな、ノース・カロライナ。流石だ君は」
「まあ、何度も聞いた声ですからね」
「うーん、そう言われるとそうか」
「で、局長、なんの用ですかな」
「そうそう、ノース・カロライナ、君に新たなミッションを与える」
「はい、どういうミッションでしょう」
「落ち着いて聞いてくれよ。隣人のキャサリン・ハンバーグステーキを自殺に見せかけて殺せ」
「な、なぜハンバーグステーキさんを殺す必要が!」
「それは、説明すると長くなるから割愛したいんだが」
「いやいや、駄目です。私の愛する隣人ですから」
「うーむ、説明しよう。隣人のキャサリン・ハンバーグステーキはロシア連邦のスパイなのである」
「そういうことでしたか。では今から殺しに行きます」
「そうは問屋がおろさないのだ」
「どういうことです?」
「隣人のキャサリン・ハンバーグステーキは、たった今ロシア連邦に飛んだ」
「えー! なぜです局長?」
「キャサリン・ハンバーグステーキはアメリカ政府の極秘情報を自宅にあるスーパーコンピューターで盗んでいたのだ! すべて集め終わったからロシア連邦に戻ったのだ!」
「そ、そしたら私はなにをすればいいんでしょ?」
「うむ、今すぐロシア連邦に飛んで、キャサリン・ハンバーグステーキがUSBメモリをウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン大統領に渡す前に殺すのだ! ロシア軍が殺したと思わせるように細工せよ!」
「アイアイサー!」
こうしてノース・カロライナは飛行機でもってロシア連邦に飛んだ。果たして、ノース・カロライナはキャサリン・ハンバーグステーキがUSBメモリに入ったアメリカ政府の極秘情報をウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン大統領に渡す前に殺すことができるのか。
第2話 失敗をお楽しみに!
男はノース・カロライナ州からやって来た。ノース・カロライナ州はその名の通り北の方に位置するだろうから、とても寒い。新潟県ぐらい雪が積もることもなきにしもあらず。ノース・カロライナ州からやって来たから男の名前はノース・カロライナである。ノース・カロライナは自宅の屋根に積もる雪をこそぎ落としていた。
午後の黄昏、隣人のキャサリン・ハンバーグステーキが「私の家の屋根の上の雪も落としておいてくれますかしら?」と屋根で作業をしているノース・カロライナに言った。しかしノース・カロライナは耳栓をしていたためキャサリン・ハンバーグステーキの声は聞こえなかった。
なぜ耳栓をしているのか。それは誰にもわからないし、ノース・カロライナだってわからない。
「しかし、寒いな」とノース・カロライナは言った。ノース・カロライナの周りには誰もいないので誰も返事はしない。しかし周りに誰もいないことはノース・カロライナ自身が一番よく知っていた。なぜならノース・カロライナは雪をこそぎ落としながら常に周辺に睨みを効かせていたからだった。
4時間ほどでノース・カロライナは自宅の屋根に積もる雪をすべてこそぎ落とすことができた。以前こそぎ落とした時は4時間半かかったので新記録であった。しかしノース・カロライナはそんなものには興味がなかった。それよりも、夜から始まるベースボールが楽しみなのである。
ノース・カロライナはソファに座ってハイネケンを飲んでいる。これからベースボールの試合が始まる。そこでノース・カロライナはノース・カロライナ州がアメリカのどこに位置しているのか疑問に思った。今までこんなことに疑問を抱くことはなかった。ノース・カロライナにとってノース・カロライナ州がどこにあろうと関係ないし、どうでもよかったのである。
しかしノース・カロライナの家には地図はない。パソコンもスマホもネット回線すらない。あるのはTVとベッドとソファとキッチンとシャワールームだけである。
ノース・カロライナは自宅の屋根に積もる雪を4時間もこそぎ落としたので汗みずくになっていた。ソファが汗で臭くなると嫌なので、ソファから立ち上がってシャワールームへ行った。そこで裸になり、湯と水でいい感じの温度のシャワーを出し、シャワーを浴びた。その間ノース・カロライナは鼻歌を歌っていた。ノース・カロライナ自身で作ったオリジナル曲だった。ノース・カロライナはギターが弾けないので鼻歌でしか音楽を奏でられない。
ノース・カロライナがシャワーを浴び終わりバスタオルで髪を拭いていると、家の電話が鳴った。なにを隠そうノース・カロライナは潜入スパイなのである。
「はい、ノース・カロライナです」
「やあ、ノース・カロライナ」
「おっ、その声は、CIAの局長ですね」
「うむ、よくわかったな、ノース・カロライナ。流石だ君は」
「まあ、何度も聞いた声ですからね」
「うーん、そう言われるとそうか」
「で、局長、なんの用ですかな」
「そうそう、ノース・カロライナ、君に新たなミッションを与える」
「はい、どういうミッションでしょう」
「落ち着いて聞いてくれよ。隣人のキャサリン・ハンバーグステーキを自殺に見せかけて殺せ」
「な、なぜハンバーグステーキさんを殺す必要が!」
「それは、説明すると長くなるから割愛したいんだが」
「いやいや、駄目です。私の愛する隣人ですから」
「うーむ、説明しよう。隣人のキャサリン・ハンバーグステーキはロシア連邦のスパイなのである」
「そういうことでしたか。では今から殺しに行きます」
「そうは問屋がおろさないのだ」
「どういうことです?」
「隣人のキャサリン・ハンバーグステーキは、たった今ロシア連邦に飛んだ」
「えー! なぜです局長?」
「キャサリン・ハンバーグステーキはアメリカ政府の極秘情報を自宅にあるスーパーコンピューターで盗んでいたのだ! すべて集め終わったからロシア連邦に戻ったのだ!」
「そ、そしたら私はなにをすればいいんでしょ?」
「うむ、今すぐロシア連邦に飛んで、キャサリン・ハンバーグステーキがUSBメモリをウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン大統領に渡す前に殺すのだ! ロシア軍が殺したと思わせるように細工せよ!」
「アイアイサー!」
こうしてノース・カロライナは飛行機でもってロシア連邦に飛んだ。果たして、ノース・カロライナはキャサリン・ハンバーグステーキがUSBメモリに入ったアメリカ政府の極秘情報をウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン大統領に渡す前に殺すことができるのか。
第2話 失敗をお楽しみに!
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