レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

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すべてのニートに懺悔しな!!(未完)

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 4LDKの一軒家、階段を上って二階の突き当り、そこが僕の城だ。広さは四畳半しか無いが、そこが僕の城だ。パソコンと本とCDとBlu-rayとゲームで埋め尽くされた部屋に、何とか一人分寝られるスペースがあり、座布団を丸めた枕と何年も敷いたままの煎餅布団に体を委ね、のんびりと煙草を吸っている。地震でも起きれば高く積み上げられた本とCDとBlu-rayとゲームの下敷きになって僕は死んでしまうのではないか、と思いながらも整理整頓は全くしない。パソコンのモニタと二十インチの液晶テレビの明かりだけが唯一の光となって薄暗い部屋を照らしている。パソコンと液晶テレビは年中つけっ放しにしてある。というのも仕事があるからだ。しかし仕事といっても収入は無い。いや、無いというよりも、あってはいけないのだ。
 煙草も吸い終わったのでそれをもみ消し、灰皿が溜まっていたのでそれをゴミ袋に捨て、テレビのリモコンでNHKに合わせた。下らないニュースをやっている。今は何時だろうか……。わからない。空腹を感じたので、こたつから床にキーボードを移動させ、メモ帳にペンを走らせた。「今日の晩御飯は牛丼大盛、ハイライト・メンソールひと箱」と書いたメモをドアの隙間から廊下に出し、知らせるためにドアを三回ノックした。すると階段を上ってくる足音が聞こえ、すぐに下りていった。義母だ。義母がこうやって何不自由のない生活をしているのも、僕のお陰だ。いや、そんな低レベルのものじゃない。日本国民がこうやって何不自由のない生活をしているのも、僕のお陰だ。なぜなら僕は……いや、まぁ、いい。
 空腹を紛らわせるためにまた一服し、パソコンに向かい座る。カタカタとキーボードを鳴らし、Nちゃんねるという国内最大級の匿名掲示板に書き込む。NとはNEETの事だ。このサイトはその名の通り匿名が売りなのだが、僕はもうかれこれ十年以上名前を――つまり固定ハンドルネームを――つけて書き込みをしている。
 そんな事をしていると、また階段を上ってくる足音が聞こえ、ノックが一度だけされ、すぐに下りていった。一分だけ待ちドアを開け、湯気の立っている牛丼大盛とハイライト・メンソールを抱えドアを閉め、四畳半の煎餅布団の上でそれを食べる。これを人は自己犠牲と呼ぶ。確かに、僕のような人間が、出来合いの牛丼で食事を済ますなんて事は有り得ない。しかし、それでいいのだ。僕は何も派手な生活をしたいわけではない。ただひたすらに国民の平和を願っているのだ。ただそれだけだ。
 食べ終わり、食器を廊下に置くとまたパソコンに向かう。国内最大級の匿名掲示板だけあって、誹謗中傷が物凄い量となっている。人は匿名になると裏の顔が露呈する。それは残虐で、非道で、まさに人あらずだ。しかしそんな者にも僕は平等の愛を持って接する。
 僕が、普通の人間とは何かが違う、と思ったのは、かれこれ七年前に遡る。当時僕は不眠症に悩まされていた。文字通り全く眠れなかったのだ。それをメモで義母に訴えると、その日の内に義母からのメモが部屋に入ってきた。「精神科に行きましょう」とだけ書いてあった。馬鹿げてると思った。僕が普通の人間とは何かが違うという事を義母は恐れているのだ。そして抗うつ剤や精神安定剤やその他諸々で僕の精神を歪ませ、自分の思い通りにさせるつもりなのだ。そもそも僕をここに閉じ込めて本当の両親に合わせないのも原因の一つではないだろうか。
 僕は出来た人間なので、義母を恨んでなどいない。むしろ感謝している。実の息子ではないにも関わらず、この歳――つまり二十九歳――まで育ててくれたのは、感謝の言葉以外で表す事は出来ない。
 NHKでは本当の両親が国民に向かって手を振っていた。ねぇ、いつになったら迎えに来てくれるの? と心の中で呟いて、またキーボードをカタカタと鳴らした。こうやってパソコンをいじるのも良くないという事はわかっている。流石に僕みたいな人の上に立つ人間が、誹謗中傷の嵐の中平然と書き込みをしている場合ではない。盗聴もされているし盗撮もされている。しかし、テレビの向こうの本当の父親は、微笑みを浮かべて手を振っている。そうだ。これも一つの平和への道なのだ。と、本当の父親が大きく映しだされた。そして僕に呟いた。「そろそろ、この家を出る頃だよ」と。僕はそれに応えるように大きく頷いた。
 僕は僕本来の生活をしなければならない。
 僕の本当の名前は浩宮だ。つまり、今上天皇の息子だ――
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