レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

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劇場版超戦士ジャップマン ジャップマンvs悪党団

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劇場版超戦士ジャップマン ジャップマンvs悪党団
れつだん 花見祭(仮)参考作: 数年ぶりとなる超戦士ジャップマン書き下ろし!

「えっ? 田中さんって昔暴走族だったんですか?」
 工場の隅っこにある小さな喫煙所には油で薄汚れた作業着を着込んだ僕と田中さんしか居ない。今日は夜勤の日だから暗い。ヤニで汚れた丸椅子に座り、ヤニで汚れた壁にもたれかかり、僕はナチュラル・アメリカン・スピリット・メンソール・ライトを吸い、田中さんはマールボロを吸っている。田中さんは僕より五つほど年上で、確か今年で三十五になるはずだ。おでこは薄く、まるでわかめのように汗でへばりついている。
 田中さんは二本目のマールボロに火を付け、「まぁ、暴走族って言っても、小さなものだけどね」と微かに笑う。「七星って書いてセヴンスターっていう名前だったんだ」
「へぇ。喧嘩とか激しかったでしょ?」と僕は言いながらヤニで汚れた灰皿に灰を落とした。田中さんもそれを見てか同じ動作をする。iPhone6Sで時間を確認する。昼休みはあと十五分ある。汚い食堂で汚い弁当を腹に入れてきた。
「そりゃぁ、あったよ。だからほら」と言いながら後頭部の髪の毛を掻き分け掻き分け、僕に見せてくる。「十センチぐらいの傷跡あるでしょ。思いっきり木刀で殴られたの」「えぇ、怖い!」「血がね、凄い出て――」
 其の瞬間、ヤニで汚れた白熱灯が切れた。
「ピン、ポン、パン、ポン!」と放送が流れた。「はい、どもぉ!」というおっさんの声がヤニで汚れた喫煙所に響いた。
「今からあと十分足らずで、世界が終わります。あ、自己紹介が遅れましたね。僕の名前はオワラ・スンダーと言います。悪党団というワルモノグループに所属しています」
「いたずらか? 何だ?」と田中さんは慌てふためきながら三本目のマールボロに火を付けた。
「世界を終わらせたくなければ、超戦士ジャップマンを生きたまま私に差し出してください。制限時間は一時間。レディー・ゴー!」
「超戦士ジャップマン? 何だ?」
 超戦士ジャップマン……。さかのぼる事数年前、アリの穴かテキスポか忘れたが、小説投稿サイトに投稿されると、何とかという固定ハンドルネームから「松本人志の大日本人のパクリだ!」と批判され、作者が泣いたという伝説の作品。そして……僕のもう一つの姿。オワラ・スンダーを止めなければ世界は終わってしまう。しかし此処で超戦士ジャップマンに変身すると、田中さんに正体を見破られてしまうし、この日雇い人足仕事も続けられないだろう。しかし超戦士ジャップマンにならなければ世界は終わってしまう……。知らず知らずの内にカタカタ震えていた僕の右腕を田中さんが握った。
「大畑君……いや、超戦士ジャップマン。あの悪党を倒して来てくれ!」
「えっ? 田中さん、知っていたんですか?」
「いや、知らないけれど、知っておいた方が話が運び易いだろう?」
「そ、そうでしたか……」
 そうなれば、形振り構っていられない。今此処で超戦士ジャップマンに変身し、オワラ・スンダーと悪党団を倒すだけだ!

 行け! 超戦士ジャップマン! 世界の平和を守れ! 頑張れ! 超戦士ジャップマン! 悪党団を倒せ!
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