レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

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もう二度と創作はしないと決めた

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 さて、そう決めたわけだ。幼稚園の頃から漫画を書き始め、13歳の頃に小説に転職してから20年間も毎日書いてインターネット上のどこぞに晒して年に数回新人賞の公募に出していたのをすっぱりとやめたわけだ。
 やめると決めたその日から1年半後の今に至るまで、人生とはここまで楽しいものだったのかと実感し充実した日々を送っていた。
 創作をやめてよかった点を発見したのでここに述べようと思う。
 まず第一に、真っ白なテキストエディタの前でうんうん頭を使わなくてよい。第二に、公募が近づいてきたからと焦って寝る時間を削らなくてよい。第三に、読書や映画やゲームやラジオを楽しんでいても罪悪感を感じなくてよい。第四に、新人賞受賞作や芥川賞受賞作などを読まなくてよい。
 事実、パソコンの前に向かうことがほとんどなくなったし、公募の締め切りなど頭から消え失せていたし、読書映画ゲームラジオ自炊筋トレと趣味を楽しめるようになったし、読みたい本を好きに読めるようになった。
 公募の結果発表の日に一次落ちを確認する作業が精神衛生上とてもよくないことにも気づけた。たまに一次通過などすることもあったが、そんなものになんの意味もないことにも気づけた。プロの作家になれない人生も楽しいことにも気づけた。僕はこの20年間、プロの作家になれない人生など意味がないと思って生きていた。自分を追い込んで、それ以外は無だと思っていた。でもそんなことはなかった。自分を含め皆なにかの夢を追って破れて今を生きている。生きがいなど他にいくらでも見つかる。誰しもが夢を叶えられるわけではない。自分は特別な人間ではない。なぜそんなことが20年もわからなかったのだろう。今、作家になるか死ぬかと考え詰めて自分を追い込んでいる人に言いたい。

 ソーシャルネットワーキングサービスが充実して、投稿サイトもたくさんあり、そこから書籍化という流れもあるし、キンドルダイレクトパブリッシングで電子書籍で誰でも出版できる時代になった今、数千もの数から一作が選ばれるような時代遅れの賞に固執することもない。スマホや電子書籍リーダーが普及して誰でも書いて誰でも発表できて誰でも読める。もちろん小説以外の分野でもそれは同じだ。誰でも参加できるので競争率は高まっているだろうし、そこから火がつくことも難しくなっているだろうが、そもそも今まで出版の敷居が高すぎたことが問題だ。自費出版は数百万かかる上にほとんどが読まれない。昔少しやったことがあるが、同人誌を作って文学フリマで売ってもまったく儲けにはならない。だからこそ賞が重要だったのだろう。
 音楽ではHi-STANDARD以降、自分たちで作って売るDIYが当たり前になり自主レーベルやレコード会社を立ち上げ活動を続けるのが当たり前になっている。小説や漫画もやっとインディーズ活動が可能となった。もちろんそれで飯を食うのは不可能に近いだろう。
 僕もキンドルで2冊出しているが、なにも宣伝していないので、半年に2冊売れればいいほうだ。アンリミテッドで読まれることはたまにあるが、あれは読んだページ数でいくらなのでなにもならない。創作をやめると決めて、最後になにか形に残しておこうと思ってキンドルで出版しただけだ。別に誰も読まなくていい。投稿サイトに出すと閲覧数や感想が気になってしまうので、200円に設定して出している。
 ソーシャルネットワーキングサービスで鬼のように宣伝している人がいるが、別に読まれなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。自分の書いたものが人の時間と金を費やすだけの価値があると思っているのだろうか。時間をかけて書いたから読んで欲しい、面白い才能があると言われたい、ゆくゆくはプロとして羽ばたきたいという欲にまみれた文章に果たして価値はあるのか。自分の思いや思想、その他諸々を他人に伝える必要はあるのか。

 はっきり言って創作なんて時間と体力とその他諸々の無駄でしかない。なんのメリットもない。そんなものに自分の人生を賭ける価値などない。
 20年も費やした僕が言うんだから間違いない。
 新しい人生を歩みましょう。とても楽しいから。心の底から人生が楽しいと言えるようになりますよ。とてもおすすめします。
 若い頃の夢は未来があるが、年を取ると夢は足かせにしかならない。

 あ、あと、興味が湧いたらアマゾンで検索して買って読んでください。本を買う資金になります。半年に一度ぐらいレポート見て、文庫本一冊になったかと嬉しくなります。

 本当は、100枚ほど書いて止まっているものを完成させたいし、新作も思いついてるので書きたい気持ちはあるが、二度と創作はしないと決めたので二度と創作はしない。
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