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カルピス・ウォーター
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昨日、長野県が爆発した。毎週日曜日になると、四十七都道府県の内、どれかが爆発する。既に沖縄と神奈川と長野が荒野と化していた。何故なのかは誰にもわからない。勿論、単なる学生の身分である僕にもわからない。最初こそ、学校が休みになるだの会社がやすみになるだので喜んでいたのだが、今じゃどこが爆発するのかにおびえる毎日だ。「あそこは大丈夫だ!」なんていうデマに右往左往され、転々と住家を変える人もいる。
そんな時、僕は一人の男に出会った。僕が住むアパートの隣に住んでいる男なのだが、一日中部屋に篭り、たまに出てきてもぼさぼさの髪の毛と贅肉の塊となった腹を掻き毟り、近所の人から忌み嫌われている中年ニート。「怪しい人には近づいてはいけません」という代々からの言い伝えを守らないわけがなく、僕は引越しの挨拶や、それだけでなくすれ違い様の挨拶でさえしないように徹底していた。
朝。暇を持て余した僕は、友人の家に遊びに行こうと部屋を出た。その時、ちょうど中年ニートと出会ってしまったのだ。離れていても異臭を放つその男を見て、僕は部屋に戻りたくなる衝動に駆られたのだが、我慢して廊下を歩く。そして中年ニートとすれ違うといった時、中年ニートがぼそりと「……次は大阪」と言ったのを聞いてしまった。
そしてその週の日曜日、大阪が崩壊した。
そのニュースを見た瞬間、僕は中年ニートの部屋へ転がり込んだ。部屋中に放つ腐敗臭に顔をしかめながら、部屋の中へと入っていく。中年ニートはパソコンをいじっていた。広がるゴミの上に座り、頭を掻き毟っている。ふけが風に舞い、はらはらと地面に落ちていった。
「まあ、座りなよ」
中年ニートは、僕に背を向けながらそう呟いた。しかしゴミ山に座るわけも無くただうろたえていると、中年ニートは声を荒げながら、「ゴミに座ればいいだろ!」と叫んだ。
「次はさぁ、群馬だよ」
「なぜわかるんですか」
背中にじっとりとひっつくシャツをぱたぱたとしながら、僕は仕方なくゴミ山に座り込んだ。
「神の声が聞こえるんだ」
それからというもの、僕は中年ニートのマネージャーとして、預言者NEETを祭り上げた。そして信者から金を請求し、安全な場所を教え、億万長者になった僕たちは南国の島で悠悠自適の生活を送った。
そして、最後に残った北海道が爆発し、日本人は僕と中年ニートだけになった。
そんな時、僕は一人の男に出会った。僕が住むアパートの隣に住んでいる男なのだが、一日中部屋に篭り、たまに出てきてもぼさぼさの髪の毛と贅肉の塊となった腹を掻き毟り、近所の人から忌み嫌われている中年ニート。「怪しい人には近づいてはいけません」という代々からの言い伝えを守らないわけがなく、僕は引越しの挨拶や、それだけでなくすれ違い様の挨拶でさえしないように徹底していた。
朝。暇を持て余した僕は、友人の家に遊びに行こうと部屋を出た。その時、ちょうど中年ニートと出会ってしまったのだ。離れていても異臭を放つその男を見て、僕は部屋に戻りたくなる衝動に駆られたのだが、我慢して廊下を歩く。そして中年ニートとすれ違うといった時、中年ニートがぼそりと「……次は大阪」と言ったのを聞いてしまった。
そしてその週の日曜日、大阪が崩壊した。
そのニュースを見た瞬間、僕は中年ニートの部屋へ転がり込んだ。部屋中に放つ腐敗臭に顔をしかめながら、部屋の中へと入っていく。中年ニートはパソコンをいじっていた。広がるゴミの上に座り、頭を掻き毟っている。ふけが風に舞い、はらはらと地面に落ちていった。
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中年ニートは、僕に背を向けながらそう呟いた。しかしゴミ山に座るわけも無くただうろたえていると、中年ニートは声を荒げながら、「ゴミに座ればいいだろ!」と叫んだ。
「次はさぁ、群馬だよ」
「なぜわかるんですか」
背中にじっとりとひっつくシャツをぱたぱたとしながら、僕は仕方なくゴミ山に座り込んだ。
「神の声が聞こえるんだ」
それからというもの、僕は中年ニートのマネージャーとして、預言者NEETを祭り上げた。そして信者から金を請求し、安全な場所を教え、億万長者になった僕たちは南国の島で悠悠自適の生活を送った。
そして、最後に残った北海道が爆発し、日本人は僕と中年ニートだけになった。
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