レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

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ソープランド・テクノロジー・リターンズ

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 夜空に浮かぶ月が徐々に僕の家に近づいてきて、窓の外が月でいっぱいになった。手を伸ばせば届きそうなぐらいにまで近づいてきたそれは、急速にスピードを上げ、僕の家は月で押しつぶされた。
 そんな夢を見た。朝目が覚めた僕は、一応学校へ行く準備をしたものの行く気になれず、友人である田中の家へ煙草をふかしながらお邪魔した。田中の家は僕の住む街から一駅はなれた場所にある。今にも崩れ落ちそうなアパート。チャイムも鳴らさずにドアノブを捻る。開いた。田中も僕と同じように学校へは行かず、ダウンロードしたエロ動画でオナニーに耽っていた。「タイミング悪いなぁ」と爽やかな笑みで振り返る田中がパンツをはいたのを確認し、僕は部屋の中へ入った。
「学校サボってんじゃねーよ」
「おまえもだろ」
 足の踏む場も無い。冷蔵庫を開け、牛乳を取り出す。田中に煙草を一本やり、静かに二人で煙草をふかす。
「マジ最悪。単位やべーよ、留年決定だわ」
 からからと笑いながら言う田中の顔に、後悔や落胆という色は見えない。親の仕送りでパチンコに行き、すったからと言ってまた仕送りを貰う田中の生き方を羨ましいと思ったことは何度もあった。実家に住んでいる僕とは真逆の生活。少ない小遣いだけでやりくりすることは不可能で、僕はたまに田中のレポートを仕上げるというバイトでなんとか生きている。といってもまあ、飯や家賃、光熱費なんかは考えなくていいから楽かもしれないが。
「昨日発売したエロゲー、もうクリアしたからお前に貸すよ」
「またエロゲー買ったのかよ。一人暮らしのお前にどこにそんな金があるんだ」
 言いながらパソコンの横にあるエロゲーを手にとった瞬間、玄関のドアが開いた。
「ただいまー」
 若い女性だった。僕は目もあわせずに頭を下げ、「じゃ、僕もう帰るわ」という言葉をなんとか捻り出し、田中の部屋を後にした。エロゲーを地面に叩き付けたい衝動に駆られたが、弁償する金も無いのでやめておく。セックスがしてみたい。いや、そこまでは言わずとも、恋人が欲しいと思うのは僕ぐらいの年齢じゃ普通なんじゃないだろうか。
 遠くの方から腕を組み歩くカップルの姿が見えた。田中とさっきの若い女性だった。思わず物陰に隠れ、近づいてくる二人をじっと見ている内に、涙が出そうになった。気が付いた時にはすでに遅し。僕は田中の頭に石を投げつけていた。そんなに強く投げていないのにもかかわらず、大きな音を立てて後頭部にあたった。その瞬間田中が地面に倒れ、血が次々と流れていく。浮ついた表情だった女の顔が青くなり、田中を抱きかかえる。救急車、などと叫んでいるが、二人以外にだれもいない。思わずそこから逃げ出そうと振り向いた時、背後に立っていた女性と目があった。汗が一気に吹き出た。無駄に肌を露出させ、髪の毛は何十センチにも盛っている。化粧もけばい。女は一言「見てたわよ」とだけ言い、口元を醜くゆがませた。

 そこから立ち去ることも出来ず、ただ女と見つめ合っている。汗が止まらない。口の渇きが納まらない。僕は思わず腰を抜かした。女が僕の前にしゃがみ、短いスカートからパンツが覗いた。こんな状況なのに、その逆三角形に視点が集中する。女がポケットから名刺を取り出した。
「私、駅前のソープで働いてるの。暇だったら着てよ。じゃあね」
 そう言い残し、ヒールをかつかつと鳴らしながら女性はどこかへ消えた。名刺の裏には携帯番号とキスマークが着いていた。しばらくして救急車のサイレンが聞こえてきたので、僕はそ知らぬ顔で家路に着いた。

 貯金箱と財布の中身をテーブルにぶちまける。どう計算しても、ソープに行けるだけの金は無い。一万五千円程度。僕はその番号に電話した。一万五千円で足りるのかどうかを確認するために。しばらく着信がなり、あの女が電話に出た。
「よ、人殺し君」
「ソープっていくらぐらいかかるものなんですか?」
「今いくら持ってるの?」
「一万五千ぐらいです」
「ちょっと足りないねあと一万あれば大丈夫」
 仕方なく電話を切る。働きたくは無い。田中に借りたエロゲーを売ったところで、数千円にしかならないだろう。片方のポケットに違和感を感じたので手を入れてみる。思わず気を失いそうになった。田中の財布が入っていた。いつのまに? 家に行った時に? 財布を開けてみる。五万入っていた。僕は金だけを抜き出し、財布を布団の下にしまいこむと、あの女が働いているソープへ急いだ。

 セックスをした。一度だけでなく何度も。女の中は暖かく、僕の物に絡みつき、何度も何度も射精した。時間が来て、服を着替えていると女が僕にキスをした。また来ようと思った。
 至福の思いで店を出た瞬間、誰かに声をかけられた。タイミングが悪すぎる。僕は知らぬ顔で帰ろうと思ったが、思い切り肩を掴まれ、無理やり振り向かされた。田中の恋人だった。田中の恋人は目を真っ赤にさせ、今にも泣きそうになっている。
「人殺し」
 と田中の恋人は言った。
「泥棒」
 と田中の恋人は言った。
 僕は田中の恋人の腕を取り、嫌がる女を無理やり路地裏に連れて行った。そして女をレイプした。何度も何度も何度も何度も。結構可愛かった。終わった後、静かに泣きじゃくる女を立ち上がらせ、田中の家に行くと、田中がいた。
「よう。あのエロゲーやったか? あれ、一緒かよ。珍しいな」
 力を抜かし、床にへたりこんだ僕の背中に、何かが突き刺さるのを感じた。田中の恋人が包丁で僕の背中を刺していた。徐々に失う記憶。抜けていく力。そして……。
 声も出なくなり、視界もぼやけてくる。その僕の前で、二人は見せ付けるかのようにセックスをしていた。何度も何度も何度も何度も。僕は涙を流していた。死にながらも。声も出ない。僕は中出しをした。いずれ子供ができるだろう。その時に僕はいない。それが悲しかった。この女性は産むのだろうか、下ろすのだろうか。生んだとして、田中の子供だと勘違いしてしまうのではないだろうか。もう終わると思った瞬間、誰かが僕の体を抱き上げた。

 ソープの女。白い天井。女は泣いていた。体が動かない。女はパンツを脱いで僕の上に跨った。そして生のまま挿入した。僕は中出しをした。いずれ子供ができるだろう。その時に僕はいるのだろうか。何度も何度も何度も何度も中出しをした。しばらくして誰かが僕を見舞いにきた。田中と田中の恋人だった。
「おい! 大丈夫か! 誰にやられたんだ!」
 そこにいる女にだよ、と言おうとしたが、声が出ない。田中の頭には傷を縫った痕があった。田中の恋人の股からは白濁液が流れていた。しばらくして田中と田中の恋人が僕の目の前でセックスをはじめた。こちらも負けじとソープの女とセックスをした。僕は中出しをした。いずれ子供ができるだろう。その時に僕はいるのだろうか。何度も何度も何度も何度も中出しをした。

 夜空に浮かぶ月が徐々に僕の家に近づいてきて、窓の外が月でいっぱいになった。手を伸ばせば届きそうなぐらいにまで近づいてきたそれは、急速にスピードを上げ、僕の家は月で押しつぶされた。
 そんな夢を見た。
 夜空に浮かぶ月が徐々に僕の家に近づいてきて、窓の外が月でいっぱいになった。手を伸ばせば届きそうなぐらいにまで近づいてきたそれは、急速にスピードを上げ、僕の家は月で押しつぶされた。
 そんな夢を見た。
 そんな夢を見ていた。
 ずっと。永遠に。
 起きたら夢精していた。童貞がセックスの夢を見ることほど悲しい事は無い。
 パンツを履き替え、続きを見るために僕はまた目を閉じた。
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