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頭が爆発しちゃった
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僕は、ただ毎日毎日退屈な僕と言う人生を演じ、そして眠りについてまた演じる。
何の事件も起こらないまま、僕は、高等学校という名の牢獄の囚役を終えようと、毎日僕を演じ続ける。
あと一月で、高等学校ともオサラバ、という時に、事件は起こる。
授業中静かにする分、休み時間は動物園と化す。ざわつくクラスメイトに顔を背け、僕は本を読んでいた。
本を読みながら、一人の女子に目を向ける。この本は何回開いたかわからない。目は文字を追わず、その一人の女子のほうばかりを見ていた。
小さな爆発音が教室に響き、笑い声や怒号、そして走り回る音が、突如悲鳴へと変わった。僕は、少しだけ視点を悲鳴がした方向へと向けた。
クラスメイトの――名前は忘れた――女の首が、消えていた。まわりにいたクラスメイトの全身には、その女の血であろう赤い染みが出来ていた。動きを止め、そこを呆然と見る者、悲鳴を上げる者、吐き出す者……。僕は、吸い込まれるように首が消えた女のところへ駆け込んだ。
そしてまた、小さな爆発音。首が飛ぶ。そして、また爆発音。まだ爆発音。またまた爆発音。爆発したのは、全て女。女の首が、次々に飛んでいく。
そんな事は起こらない。起こるわけがない。僕は夢だと自分に言い聞かせ、机に座りなおし、本に目を向けた。
その時、教室のドアが激しい音を立てた。一人の男が入ってくる。
「食堂のおじさん?」
男は、食堂のおじさんらしかった。僕は知らない。食堂など行かないから。
食堂のおじさんが、汚く、そして大声で笑い出した。
「うへ、へへ……飯に、爆弾入れといた。あと、自販機のジュース。他にも入れたよ。もう忘れたけど。でも何で頭が爆発したんだろ……死姦したかったんだ……死体は貰っていくから。うへへ、へ」
「よくもリンカを!」
食堂のおじさんが、死体を廊下においてある台車に乗せだした。誰も一歩も動かなかった。しかし、男が、目に涙を浮かべながら食堂のおじさんの下へと走り寄った。手には、カッターナイフが握り締められている。
カッター少年の首が、消し飛んだ。
「うええははははあ! 女だけじゃないんだ……この学校のみーんな。そう、教師も生徒も全て。僕のリモコンで、死んじゃう。でも、それは確率なんだ。誰が当たるかわかんない。君は運がいい……って、生きてないか。うへへ」
クラスメイトが一斉に、食堂のおじさんから離れていく。廊下に集まっていた野次馬も、もう姿は見えない。
「ちなみにこれは、校舎全体に放送がいってるから。あと、校舎から出た奴は……どかーん」
隣のクラスから、爆発音が聞こえた。そして、悲鳴。
「うへ、やっちゃった。うへへ。あ、そう。死体は貰っていくね。もちろん男女どっちも。僕は差別は嫌いなんだ」
そういい残し、食堂のおじさんはどこかへ行った。多分、隣のクラスだろうか。
ざわつく者は、もういなくなっていた。休み時間が終わっても教師は来ない。ただガタガタと震えているのだろうか。
馬鹿か? なぜ誰も気づかない? 確率と言った。と言う事は、今誰かが食堂のおじさんを殺しに行っても、自分が爆発するとは限らない。遅かれ早かれ全員爆発するように決まっているのなら、早いほうがいい。そこの女、泣くのやめろ。あぁ、僕は食堂行ってないから大丈夫だと思ってたけど、今日ジュース買ったな。最悪。
「みんな! 聞いてくれ! 僕たちの胃に爆弾が入ってるとしたら、吐けばいい! 吐けば爆弾も出る!」
バカが騒ぎ出した。確か、学年トップの学力を持ってるとかいう奴だ。学力があっても、ただのバカだな。
「それより、誰か食堂のおじさんを殺しに行かないのか。確立なんだから、自分が死ぬとは限らない。ものすごい確率の低さだぞ」
僕の声が、静かな教室に響く。
「確率、とは限らない! しかも、今食堂のおじさんに逆らえば、誰かが死ぬ。ケンタだって、死んだ。友達や、クラスメイトだって!」
学力トップが、泣きながら騒いだ。ケンタとかいう奴は、リンカとかいう女の死体のそばで、カッターナイフを持ったまま犬死にしていた奴だ。
いくら時間が経っただろう。クラスの過半数が死に絶え、残るのは僕と学力トップ、オタク根暗男A、B、そしてヤリマン女と噂される軽いバカ女、男の憧れ知的美人、僕がひそかに恋心を抱いている神矢さん。神矢さんが残ってる。少しの安心。
残ったものの、いつ死ぬか分からないという恐怖心からか、血だらけのクラス、そして大量の死体に気が失せたのか、誰も一言も喋らない。
突然、オタクAが知的美人の元へ歩み寄った。知的美人は一瞥をくれるだけで相手にはせず、ただ下を向いている。
「山下さん!」
オタクAが、知的美人――山下という名前らしい――の肩を掴む。と同時に、オタクBが知的美人の後ろを取った。
抵抗する気力すらない知的美人を、AとBの二人が囲む。
「フフ……こんな時でもないと、あんたみたいな美人とセックスできないんだよね……」
「服を脱いで」
知的美人が、言うとおりに服を脱ぐ。学力トップも、ヤリマン女も、興味眼でそれを見ている。
下着姿になった知的美人を押し倒すAとB。手は、もうブラジャーにかかっている。静かな教室に、興奮した息遣いとつばを飲み込む音が響く。
「下着を取るよ……ククク」
Aが、下着を取ろうとしたときに、知的美人の頭が吹き飛んだ。血が飛び散る。AとBは悲鳴を上げて知的美人から離れた。
「ここからって時――」
続いて、Aの首が吹き飛んだ。
「僕の山下さん。お前達には渡さない……」
「近藤君!?」
ヤリマン女とBが、同時に学力トップを見る。手には、リモコンが握り締めてあった。
「山下さんは僕のもの……山下さんの爆破装置は、僕が持ってたんだ。山下さんは僕だけのものだから……」
学力トップは、知的美人を教室の端まで運び、知的美人の死体を飽きることなく弄んだ。
「ちょ、ちょっと! あとは根暗男と根暗女と友紀だけ?」
ヤリマン女が叫ぶ。僕は、取り乱したヤリマン女の頭を椅子でめためたに叩き潰し、おびえる神矢さんの右手を取った。
「神矢さん。僕たちだけでも生き残ろう!」
「は、はい」
僕たちは、教室を抜け、食堂のおじさんがいるであろう、放送室に急いだ。
なんて事が起こったらなぁ。僕は、神矢さんを思い浮かべながら、今日もオカズにしようと思った。
何の事件も起こらないまま、僕は、高等学校という名の牢獄の囚役を終えようと、毎日僕を演じ続ける。
あと一月で、高等学校ともオサラバ、という時に、事件は起こる。
授業中静かにする分、休み時間は動物園と化す。ざわつくクラスメイトに顔を背け、僕は本を読んでいた。
本を読みながら、一人の女子に目を向ける。この本は何回開いたかわからない。目は文字を追わず、その一人の女子のほうばかりを見ていた。
小さな爆発音が教室に響き、笑い声や怒号、そして走り回る音が、突如悲鳴へと変わった。僕は、少しだけ視点を悲鳴がした方向へと向けた。
クラスメイトの――名前は忘れた――女の首が、消えていた。まわりにいたクラスメイトの全身には、その女の血であろう赤い染みが出来ていた。動きを止め、そこを呆然と見る者、悲鳴を上げる者、吐き出す者……。僕は、吸い込まれるように首が消えた女のところへ駆け込んだ。
そしてまた、小さな爆発音。首が飛ぶ。そして、また爆発音。まだ爆発音。またまた爆発音。爆発したのは、全て女。女の首が、次々に飛んでいく。
そんな事は起こらない。起こるわけがない。僕は夢だと自分に言い聞かせ、机に座りなおし、本に目を向けた。
その時、教室のドアが激しい音を立てた。一人の男が入ってくる。
「食堂のおじさん?」
男は、食堂のおじさんらしかった。僕は知らない。食堂など行かないから。
食堂のおじさんが、汚く、そして大声で笑い出した。
「うへ、へへ……飯に、爆弾入れといた。あと、自販機のジュース。他にも入れたよ。もう忘れたけど。でも何で頭が爆発したんだろ……死姦したかったんだ……死体は貰っていくから。うへへ、へ」
「よくもリンカを!」
食堂のおじさんが、死体を廊下においてある台車に乗せだした。誰も一歩も動かなかった。しかし、男が、目に涙を浮かべながら食堂のおじさんの下へと走り寄った。手には、カッターナイフが握り締められている。
カッター少年の首が、消し飛んだ。
「うええははははあ! 女だけじゃないんだ……この学校のみーんな。そう、教師も生徒も全て。僕のリモコンで、死んじゃう。でも、それは確率なんだ。誰が当たるかわかんない。君は運がいい……って、生きてないか。うへへ」
クラスメイトが一斉に、食堂のおじさんから離れていく。廊下に集まっていた野次馬も、もう姿は見えない。
「ちなみにこれは、校舎全体に放送がいってるから。あと、校舎から出た奴は……どかーん」
隣のクラスから、爆発音が聞こえた。そして、悲鳴。
「うへ、やっちゃった。うへへ。あ、そう。死体は貰っていくね。もちろん男女どっちも。僕は差別は嫌いなんだ」
そういい残し、食堂のおじさんはどこかへ行った。多分、隣のクラスだろうか。
ざわつく者は、もういなくなっていた。休み時間が終わっても教師は来ない。ただガタガタと震えているのだろうか。
馬鹿か? なぜ誰も気づかない? 確率と言った。と言う事は、今誰かが食堂のおじさんを殺しに行っても、自分が爆発するとは限らない。遅かれ早かれ全員爆発するように決まっているのなら、早いほうがいい。そこの女、泣くのやめろ。あぁ、僕は食堂行ってないから大丈夫だと思ってたけど、今日ジュース買ったな。最悪。
「みんな! 聞いてくれ! 僕たちの胃に爆弾が入ってるとしたら、吐けばいい! 吐けば爆弾も出る!」
バカが騒ぎ出した。確か、学年トップの学力を持ってるとかいう奴だ。学力があっても、ただのバカだな。
「それより、誰か食堂のおじさんを殺しに行かないのか。確立なんだから、自分が死ぬとは限らない。ものすごい確率の低さだぞ」
僕の声が、静かな教室に響く。
「確率、とは限らない! しかも、今食堂のおじさんに逆らえば、誰かが死ぬ。ケンタだって、死んだ。友達や、クラスメイトだって!」
学力トップが、泣きながら騒いだ。ケンタとかいう奴は、リンカとかいう女の死体のそばで、カッターナイフを持ったまま犬死にしていた奴だ。
いくら時間が経っただろう。クラスの過半数が死に絶え、残るのは僕と学力トップ、オタク根暗男A、B、そしてヤリマン女と噂される軽いバカ女、男の憧れ知的美人、僕がひそかに恋心を抱いている神矢さん。神矢さんが残ってる。少しの安心。
残ったものの、いつ死ぬか分からないという恐怖心からか、血だらけのクラス、そして大量の死体に気が失せたのか、誰も一言も喋らない。
突然、オタクAが知的美人の元へ歩み寄った。知的美人は一瞥をくれるだけで相手にはせず、ただ下を向いている。
「山下さん!」
オタクAが、知的美人――山下という名前らしい――の肩を掴む。と同時に、オタクBが知的美人の後ろを取った。
抵抗する気力すらない知的美人を、AとBの二人が囲む。
「フフ……こんな時でもないと、あんたみたいな美人とセックスできないんだよね……」
「服を脱いで」
知的美人が、言うとおりに服を脱ぐ。学力トップも、ヤリマン女も、興味眼でそれを見ている。
下着姿になった知的美人を押し倒すAとB。手は、もうブラジャーにかかっている。静かな教室に、興奮した息遣いとつばを飲み込む音が響く。
「下着を取るよ……ククク」
Aが、下着を取ろうとしたときに、知的美人の頭が吹き飛んだ。血が飛び散る。AとBは悲鳴を上げて知的美人から離れた。
「ここからって時――」
続いて、Aの首が吹き飛んだ。
「僕の山下さん。お前達には渡さない……」
「近藤君!?」
ヤリマン女とBが、同時に学力トップを見る。手には、リモコンが握り締めてあった。
「山下さんは僕のもの……山下さんの爆破装置は、僕が持ってたんだ。山下さんは僕だけのものだから……」
学力トップは、知的美人を教室の端まで運び、知的美人の死体を飽きることなく弄んだ。
「ちょ、ちょっと! あとは根暗男と根暗女と友紀だけ?」
ヤリマン女が叫ぶ。僕は、取り乱したヤリマン女の頭を椅子でめためたに叩き潰し、おびえる神矢さんの右手を取った。
「神矢さん。僕たちだけでも生き残ろう!」
「は、はい」
僕たちは、教室を抜け、食堂のおじさんがいるであろう、放送室に急いだ。
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