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セブンティーン・プラスティック・ワールド
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いくら寝ても睡魔が消えることは無く、それは今も同じで、もう 朝の五時になってしまったというのにもかかわらず、私はいつまでたっても寝ることが出来なかった。睡眠薬は怖くて飲めない。そして、別に寝なければいけないということもないし、明日の朝が大変というわけでもない。
地下鉄から見える星が綺麗だったその晩に、私は遂に重い腰を上げることに成功した。不眠不休のHard scheduleだったものの、実際の所は夜九時に寝て朝八時に起きるという超健康的な生活を繰り返した結果。結果論に過ぎないのだが、何と言うかこの世は住みにくいと私は思うのであった。選択の自由が無い。無職か有職かを選択できない世の中になってしまったのだ。それは私にとって憂いるべきことであって、一切他人事には出来ぬ事実であった。
「やあ、リチャード・パトりクソン」
軽快なリズムで私に挨拶を交わしてきたのは、ドクター村藤であった。今、私はマンホールから顔を出し物事を考えている最中であったので、ドクター村藤の挨拶は聞こえなかった。そのため、結果としてその挨拶を無視してしまったのだが、私の名前はリチャード・パトリクソンではないため、それはそれでいいのだろう、と納得をさせた。
何もかもがすべてcategoryわけされた世の中で、そのcategoryから外れたものは、いわば世界の救世主、Christであって、こういう風に世の中を斜に構えてみていると、徐々に精神が汚れてしまうのであった。
魔王がこの世界を支配していた。恐怖政治である。名前はドラゴン魔王13世と言った。私とドクター村藤は、そんな世の中を正しい道へ導くためとし、DX爆弾の製作に取り掛かった。西暦2008年のことである。
DX爆弾 (でぃーえっくすばくだん)
爆弾の上をいくすさまじい爆弾。破壊力はそれほどでもない。しかし家の瓦ぐらいなら吹き飛ぶ。
伝説の大根戦車Homeworkを操作しなければ製作できなかったので、米軍基地から伝説の大根戦車を入手し、ドクターと時には笑いあい、時には喧嘩しながらDX爆弾を製作した。
「ねえ」
「なんだいキャサリン・ハンバーグステーキ」
中年カップル富田富雄とキャサリン・ハンバーグステーキは、どこやもわからぬ所で愛を語り合っていた。一方が「愛している」と囁くと、一方は「ウズベキスタン」と呟くので、一層二人の愛は深まったそうな。
「ところで、なぜこんなにもこの世界は住みにくいのだろうか」と富田富雄が棒読み風に言うと、キャサリン・ハンバーグステーキは鼻くそをほじるばかりで何も聞いていなかった。
「芸術的爆発也(オカモー・トタ・ロウ)!」
私とドクター村藤がDX爆弾を気に入らない私の永遠のライバルである田中多奈加は、魔法使いであった。芸術的爆発也は、周囲三十五キロを爆発で粉みじんにするという恐ろしき魔法であったが、田中多奈加は魔法力が足りぬため、私が愛用していたガラスのコップが割れたにすぎぬ。是、救済也。
「なあリチャード・パトリクソン」
「私の名前はL・Pではない、タイツ・マンだ」
「見せびらかせちゃえよ」
私は外の寒さに震えているDancing dogを手に取り、家に持ち帰り、手厚い待遇を約束した。
「へへ、こいつめ」
「い、いかん、リチャード・パトリクソン! DX爆弾は失敗じゃ!」
「そ、そんな馬鹿なことが! ぬ、ぬぉぉぉ」
ぱちぃんという音がして、私は永遠の眠りについた。
「な、なに、タイツ・マンが失敗して死んだだと!?」などと田中多奈加が吼えているが、私にはもう関係のないこと。徐々に意識が薄れてゆく。私が死んだらこの作品が成り立たぬではないか、などという心配とももはやおさらばなのである。
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
くそう、まだリチャード・パトリクソン、いや、タイツ・マンは生き返らぬのか! 我輩の最強魔法「マジックバスター」を使うしかあるまいっ。
「マジックバスター!」
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
私、%。現役天才女子高生。ピチピチの17歳。なんで天才かって? そりゃぁ、あなた、あたしが天才だって言うんだもの、そうに決まっているわ。あ、あと、超能力使えるのよ。見てなさい。
「この次の行には、街をぶらぶらと歩いていたあたしは汚い紙切れを拾った、になるわ」
街をぶらぶらと歩いていたあたしは汚い紙切れを拾った、
どう? 予知能力ってやつかしら? ああ、そうそう、汚い紙切れを拾わなきゃ、物語が先に進まないし、作者に怒られちゃうわ。あー、どっこいせ。何かしら、この紙切れは。
%が拾った紙切れは、DX爆弾の作り方だったのだ。%はそれを一瞬見ただけで何の作り方なのかを認識し、一晩で製作し、爆発させ、この世界は終わった。実はドラゴン魔王13世の妹であったことは、誰も知らない。
地下鉄から見える星が綺麗だったその晩に、私は遂に重い腰を上げることに成功した。不眠不休のHard scheduleだったものの、実際の所は夜九時に寝て朝八時に起きるという超健康的な生活を繰り返した結果。結果論に過ぎないのだが、何と言うかこの世は住みにくいと私は思うのであった。選択の自由が無い。無職か有職かを選択できない世の中になってしまったのだ。それは私にとって憂いるべきことであって、一切他人事には出来ぬ事実であった。
「やあ、リチャード・パトりクソン」
軽快なリズムで私に挨拶を交わしてきたのは、ドクター村藤であった。今、私はマンホールから顔を出し物事を考えている最中であったので、ドクター村藤の挨拶は聞こえなかった。そのため、結果としてその挨拶を無視してしまったのだが、私の名前はリチャード・パトリクソンではないため、それはそれでいいのだろう、と納得をさせた。
何もかもがすべてcategoryわけされた世の中で、そのcategoryから外れたものは、いわば世界の救世主、Christであって、こういう風に世の中を斜に構えてみていると、徐々に精神が汚れてしまうのであった。
魔王がこの世界を支配していた。恐怖政治である。名前はドラゴン魔王13世と言った。私とドクター村藤は、そんな世の中を正しい道へ導くためとし、DX爆弾の製作に取り掛かった。西暦2008年のことである。
DX爆弾 (でぃーえっくすばくだん)
爆弾の上をいくすさまじい爆弾。破壊力はそれほどでもない。しかし家の瓦ぐらいなら吹き飛ぶ。
伝説の大根戦車Homeworkを操作しなければ製作できなかったので、米軍基地から伝説の大根戦車を入手し、ドクターと時には笑いあい、時には喧嘩しながらDX爆弾を製作した。
「ねえ」
「なんだいキャサリン・ハンバーグステーキ」
中年カップル富田富雄とキャサリン・ハンバーグステーキは、どこやもわからぬ所で愛を語り合っていた。一方が「愛している」と囁くと、一方は「ウズベキスタン」と呟くので、一層二人の愛は深まったそうな。
「ところで、なぜこんなにもこの世界は住みにくいのだろうか」と富田富雄が棒読み風に言うと、キャサリン・ハンバーグステーキは鼻くそをほじるばかりで何も聞いていなかった。
「芸術的爆発也(オカモー・トタ・ロウ)!」
私とドクター村藤がDX爆弾を気に入らない私の永遠のライバルである田中多奈加は、魔法使いであった。芸術的爆発也は、周囲三十五キロを爆発で粉みじんにするという恐ろしき魔法であったが、田中多奈加は魔法力が足りぬため、私が愛用していたガラスのコップが割れたにすぎぬ。是、救済也。
「なあリチャード・パトリクソン」
「私の名前はL・Pではない、タイツ・マンだ」
「見せびらかせちゃえよ」
私は外の寒さに震えているDancing dogを手に取り、家に持ち帰り、手厚い待遇を約束した。
「へへ、こいつめ」
「い、いかん、リチャード・パトリクソン! DX爆弾は失敗じゃ!」
「そ、そんな馬鹿なことが! ぬ、ぬぉぉぉ」
ぱちぃんという音がして、私は永遠の眠りについた。
「な、なに、タイツ・マンが失敗して死んだだと!?」などと田中多奈加が吼えているが、私にはもう関係のないこと。徐々に意識が薄れてゆく。私が死んだらこの作品が成り立たぬではないか、などという心配とももはやおさらばなのである。
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
くそう、まだリチャード・パトリクソン、いや、タイツ・マンは生き返らぬのか! 我輩の最強魔法「マジックバスター」を使うしかあるまいっ。
「マジックバスター!」
ぬぐっ。
「ほいーる」
なしっ。
「うぬぐれ」
私、%。現役天才女子高生。ピチピチの17歳。なんで天才かって? そりゃぁ、あなた、あたしが天才だって言うんだもの、そうに決まっているわ。あ、あと、超能力使えるのよ。見てなさい。
「この次の行には、街をぶらぶらと歩いていたあたしは汚い紙切れを拾った、になるわ」
街をぶらぶらと歩いていたあたしは汚い紙切れを拾った、
どう? 予知能力ってやつかしら? ああ、そうそう、汚い紙切れを拾わなきゃ、物語が先に進まないし、作者に怒られちゃうわ。あー、どっこいせ。何かしら、この紙切れは。
%が拾った紙切れは、DX爆弾の作り方だったのだ。%はそれを一瞬見ただけで何の作り方なのかを認識し、一晩で製作し、爆発させ、この世界は終わった。実はドラゴン魔王13世の妹であったことは、誰も知らない。
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