7 / 42
7
しおりを挟む
「っぁああ~…」
ルイスは資料の山に埋もれながら椅子の背もたれに体を預けた。
連日の徹夜のせいか天井が回転して見える
「やっぱり無いな…願いが叶う伝説も、特効薬も魔法も…」
ルイスは両手で顔を覆い息をついた。
「仮に例の塔に行くとして…ユツキが着いてくるか?周りが許すか?ありえない…」
ルイスは独り言を呟く
「あー!くそっ!もっと何でもあれよ!世界は広いんだろ!?」
ルイスは机の上にあった紙の束を床にはたき落とす
「随分荒れておりますな」
ジョナサンがやってくるとすぐさま床に散らばっている紙を拾い上げ片付け始めた。
「やはり塔しかないかもしれない」
「左様でございましたか」
「お前、分かってたのか。」
「何をでございましょう」
ジョナサンが目を細めて微笑む
ルイスにはそれが誤魔化しているように見えた。
「ユツキを助けられるのは、この『失せ物の塔』以外にない。他にも遺跡や塔はあったが、確実に願いを叶えるのはここだけだ。」
ルイスはジョナサンの誤魔化しを見ないふりしていった。
「…よく、お調べになりましたね」
珍しくジョナサンが言葉を詰まらせた。
「他でもないユツキためだ」
「その意欲をもっと他のことにも向けていただければ爺も安心してお側を離れられるのですが」
気を取り直したようにジョナサンがニコリと笑う
「こういう時だけ爺を使うな!」
「ほっほっほ」
ジョナサンは愉快そうに笑った。
数日後、ローラント邸にやってきたルイスは神妙な面持ちだった。
客間に通されたルイスは挨拶をした後三十分以上無言だった。
ユツキは何度かをかけようかと思ったが、あまりにもの鬼気迫る様子に声をかけるのを躊躇っていた。
「ユツキ」
「は、はい…!」
突然声をかけられ、見るとルイスは真剣そのものな表情でユツキをじっと見ている
「今から大事な話をする。」
「はい」
「ユツキの体を治す方法が一つ、見つかった。」
「!」
椅子から身を乗り出しルイスに近づく
「本当ですか」
ユツキの目の奥を覗くような瞳に一瞬たじろぎそうになる
「だが、条件がある」
「条件?なんですか?」
ユツキが不安げな顔をする
「ここからはるか南にある、『失せ物の塔』
そこの最上階の魔物を倒せば願いが叶うんだ。ただ…」
「ただ?」
「当事者の願いしか叶えられないというのがある。つまりユツキの体を治すにはユツキも一緒に最上階へ登る必要があるんだ。」
「なるほど…失せ物の塔の話なら昔母上にえ本を読んでもらったことがあります。おとぎ話かと思っていましたが、本当にあるとは…」
ユツキが考え込むように額に手を当てる
「条件はユツキが一緒に向かうこと。それと、全員を説得すること」
「説得?」
ユツキは顔を上げる
「ユツキの執事が容易く首を縦に振るとは思えない。あと、兄貴もな」
「確かに…」
ユツキの兄、イブキ・グランデューク・ローラントは医者の卵でユツキの体調管理に厳しい
少しでも異変があれば本人が気がついていないことですらすぐさま察知する
性格は少しキツイが根は優しい人だ。
「父上も許してくださるか…」
「安心しろ。俺も一緒に説得する」
ユツキは頭を悩ませた。
「私は殿下が一緒であれば口出しは致しません」
レイザーがユツキの後ろから顔を出す
「いいのか?珍しい…普段なら外出にすら文句を言っているだろうに」
「ユツキ様が殿下を信じるというのであれば、私に何かを言う権利はございません。」
レイザーが頭を下げる
「ただし、私も連れていってください。私にはユツキ様を守る義務があります。」
「レイザー…」
頭を深々と下げるレイザーにルイスはふっと笑った。
「第一執事を連れていかない訳にはいかないな」
「ありがとうございます。」
レイザーは頭を上げるとユツキに視線を向ける
「命にかけてもお守り致します。」
「そ、そんな重く考えなくても…」
ユツキが困ったような表情でレイザーの手をポンポンと撫でた。
ルイスは資料の山に埋もれながら椅子の背もたれに体を預けた。
連日の徹夜のせいか天井が回転して見える
「やっぱり無いな…願いが叶う伝説も、特効薬も魔法も…」
ルイスは両手で顔を覆い息をついた。
「仮に例の塔に行くとして…ユツキが着いてくるか?周りが許すか?ありえない…」
ルイスは独り言を呟く
「あー!くそっ!もっと何でもあれよ!世界は広いんだろ!?」
ルイスは机の上にあった紙の束を床にはたき落とす
「随分荒れておりますな」
ジョナサンがやってくるとすぐさま床に散らばっている紙を拾い上げ片付け始めた。
「やはり塔しかないかもしれない」
「左様でございましたか」
「お前、分かってたのか。」
「何をでございましょう」
ジョナサンが目を細めて微笑む
ルイスにはそれが誤魔化しているように見えた。
「ユツキを助けられるのは、この『失せ物の塔』以外にない。他にも遺跡や塔はあったが、確実に願いを叶えるのはここだけだ。」
ルイスはジョナサンの誤魔化しを見ないふりしていった。
「…よく、お調べになりましたね」
珍しくジョナサンが言葉を詰まらせた。
「他でもないユツキためだ」
「その意欲をもっと他のことにも向けていただければ爺も安心してお側を離れられるのですが」
気を取り直したようにジョナサンがニコリと笑う
「こういう時だけ爺を使うな!」
「ほっほっほ」
ジョナサンは愉快そうに笑った。
数日後、ローラント邸にやってきたルイスは神妙な面持ちだった。
客間に通されたルイスは挨拶をした後三十分以上無言だった。
ユツキは何度かをかけようかと思ったが、あまりにもの鬼気迫る様子に声をかけるのを躊躇っていた。
「ユツキ」
「は、はい…!」
突然声をかけられ、見るとルイスは真剣そのものな表情でユツキをじっと見ている
「今から大事な話をする。」
「はい」
「ユツキの体を治す方法が一つ、見つかった。」
「!」
椅子から身を乗り出しルイスに近づく
「本当ですか」
ユツキの目の奥を覗くような瞳に一瞬たじろぎそうになる
「だが、条件がある」
「条件?なんですか?」
ユツキが不安げな顔をする
「ここからはるか南にある、『失せ物の塔』
そこの最上階の魔物を倒せば願いが叶うんだ。ただ…」
「ただ?」
「当事者の願いしか叶えられないというのがある。つまりユツキの体を治すにはユツキも一緒に最上階へ登る必要があるんだ。」
「なるほど…失せ物の塔の話なら昔母上にえ本を読んでもらったことがあります。おとぎ話かと思っていましたが、本当にあるとは…」
ユツキが考え込むように額に手を当てる
「条件はユツキが一緒に向かうこと。それと、全員を説得すること」
「説得?」
ユツキは顔を上げる
「ユツキの執事が容易く首を縦に振るとは思えない。あと、兄貴もな」
「確かに…」
ユツキの兄、イブキ・グランデューク・ローラントは医者の卵でユツキの体調管理に厳しい
少しでも異変があれば本人が気がついていないことですらすぐさま察知する
性格は少しキツイが根は優しい人だ。
「父上も許してくださるか…」
「安心しろ。俺も一緒に説得する」
ユツキは頭を悩ませた。
「私は殿下が一緒であれば口出しは致しません」
レイザーがユツキの後ろから顔を出す
「いいのか?珍しい…普段なら外出にすら文句を言っているだろうに」
「ユツキ様が殿下を信じるというのであれば、私に何かを言う権利はございません。」
レイザーが頭を下げる
「ただし、私も連れていってください。私にはユツキ様を守る義務があります。」
「レイザー…」
頭を深々と下げるレイザーにルイスはふっと笑った。
「第一執事を連れていかない訳にはいかないな」
「ありがとうございます。」
レイザーは頭を上げるとユツキに視線を向ける
「命にかけてもお守り致します。」
「そ、そんな重く考えなくても…」
ユツキが困ったような表情でレイザーの手をポンポンと撫でた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
悪役なので大人しく断罪を受け入れたら何故か主人公に公開プロポーズされた。
柴傘
BL
侯爵令息であるシエル・クリステアは第二王子の婚約者。然し彼は、前世の記憶を持つ転生者だった。
シエルは王立学園の卒業パーティーで自身が断罪される事を知っていた。今生きるこの世界は、前世でプレイしていたBLゲームの世界と瓜二つだったから。
幼い頃からシナリオに足掻き続けていたものの、大した成果は得られない。
然しある日、婚約者である第二王子が主人公へ告白している現場を見てしまった。
その日からシナリオに背く事をやめ、屋敷へと引き篭もる。もうどうにでもなれ、やり投げになりながら。
「シエル・クリステア、貴様との婚約を破棄する!」
そう高らかに告げた第二王子に、シエルは恭しく礼をして婚約破棄を受け入れた。
「じゃあ、俺がシエル様を貰ってもいいですよね」
そう言いだしたのは、この物語の主人公であるノヴァ・サスティア侯爵令息で…。
主人公×悪役令息、腹黒溺愛攻め×無気力不憫受け。
誰でも妊娠できる世界。頭よわよわハピエン。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
仮面の兵士と出来損ない王子
天使の輪っか
BL
姫として隣国へ嫁ぐことになった出来損ないの王子。
王子には、仮面をつけた兵士が護衛を務めていた。兵士は自ら志願して王子の護衛をしていたが、それにはある理由があった。
王子は姫として男だとばれぬように振舞うことにしようと決心した。
美しい見た目を最大限に使い結婚式に挑むが、相手の姿を見て驚愕する。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる