死神に呪われし少女

詩音

文字の大きさ
上 下
5 / 15
ここで彼女の人生は終わった

そして彼は蘇る

しおりを挟む
「あいつ本当に出てこねーな」
 そう話すのは大翔(はると)。亡くなった翔と家からでなくなった奈々の友達である。
「奈々」
 まだあの日言われたことを気にかけている六花。二人は死神のことは知らない。だからなぜ奈々があーなったのかはわかっていないのだ。
「まだ気にしてんのかよ。もういいだろあんなの」
 奈々と六花の話を聞いた大翔は奈々に対し呆れを感じていた。
「あんなのって何よ。奈々は誰よりも傷ついた。多分私にあんなことを言ったのも」
「気を使ったにしてもひでーし。本心ならなさらにひでーよ」
 奈々が六花にいったことはすべて呪いのかかった自分ですべてが悪い方向に行くようにしてしまった。そのせいで六花を傷つけそれ以降は何も連絡をとれていなかった。
「明日から夏休みか。つまり一年になるのか」
「あんたは行くの?」
「行かねー」
 六花のいくか聞いた場所は翔が亡くなった事故現場つまり公園前の横断歩道だ。行くべきとも思えるがあの場所はこの二人のとっても行きたくなくなる場所であった。
「奈々に電話してみようぜ」
「なんで?」
「奈々が自分から距離をおいたためわざとやったと思うならお前がコンタクトしないかぎりあいつとは話せない。それにあいつが行きたいのなら俺たちが逃げるわけにもいかねー」
 一番傷ついた奈々が行く勇気のあるのに見ていただけのやつらが行かないというかっこ悪い状況を作りたくない大翔。自分が電話したところで真相はわからない。だが、六花が電話をし聞けば、あの時の言葉が本当か否かわかるかもしれない。
「奈々に電話」
 それでも六花をそっとしておくためにかけるのに抵抗がある。
「だったら俺がかけてやる」
 大翔が六花の携帯で電話をかけようと電話帳を開くとそこにはたくさんの奈々の履歴があった。それもただ六花が一方的に電話をかけている。もちろん反応はない。
「でるわけないよ。一年何回もかけてみた。でも出なかった。これが答え」
「だったら」
 大翔が自分の携帯を取り出し電話かけた。
「もしもし。大翔です」
「あー大翔君久しぶり」
 大翔が電話を掛けた先で出たのは奈々の母親だった。奈々の母親はあれ以来奈々に全力を注いでいる。奈々もあの日を忘れるくらい母親との距離を戻すことができた。
「あの奈々って明日外に出たいとか言ってました?」
「聞いたけどいかないって」
「そうですか」
 やはり行かないらしい。あの場に立つ勇気は奈々にはない。
「二人はどうするの?」
「軽く見るくらいにします。自分たちもまだあの場所はちょっと」
「無理しないでね」
「わかりました」
 電話を切り少し深呼吸をした。行きたいでなくなんか誰かは行く必要がある気がしたから行くことを決めた。
「それで、お前は来るか?」
「暇だし行くわよ」
 なんやかんやで二人で行くことになった。

 そして次の日。二人はすぐに向かった。
「なつかしいね。確か水着買いに行ったんだっけ」
「そうだな。奈々が外に出てこれたら海に必ず行こうな」
「そうだね」
 二人はあの日買った水着は奈々が復活した時に着ようと決めていた。
「ここか」
 二人は去年の記憶がよぎった。それは重くつらいもの。
「なんかいねーか?」
 横断歩道を見ていると人影が見えた。それははっきりと見えているわけでもなくかといって薄いわけでもない。
「もしかして幽霊?」
「いや違うあれはちゃんと実態がある」
 二人はその人影のほうに近づいた。するとなつかしい顔が見えた。
「一年ぶりかお前らとも」
 横断歩道の前の木に隠れていたのは翔だった。
「うそ、でしょ」
「嘘じゃねーよ。言い伝え知ってるだろ一年だけ蘇るそれに選ばれたってわけだ」
「まじかよ。ってか早く奈々に知らせないと」
 奈々に早く知らせたかった。翔に会えばもしかしたら復活するかもしれないと思っていたから。
「悪いそれは待ってくれ」
「なんで?」
「悪いな二人とも。多分奈々って人を俺が守った人なんだよな」
 翔はまるで知らない人を助けたかのように言った。
「そうだよ。忘れたの?」
「言い伝えの真実は一年蘇る間にやり残した未練をはらすことだ。そして俺の未練は事故で助けた人との約束を果たすことらしい。そうしなければ俺の記憶は奈々ってやつから消えるらしいんだ」
 翔が言っていることを説明すると蘇るためには未練が必要になる。そしてその未練を晴らすために未練のもととなったものや人の記憶をなくし何が未練なのかもわからなくなる。そしてそれに失敗しると人だった場合記憶が完全に消えることになる。
「だったら早く合わせないと」
「お前らといない時点でなんかあるんだろ。それで俺があいつのこと知らないって言ったらどうなるよ」
「あの子なら、今よりもひどい状況になるかもしれない。それでもあってほしい」
 六花は会うことを強く推した。誰よりも奈々がつらいのを知っている六花だからこそ思えることである。
「それより未練思い出さねーとまずいだろ。奈々から記憶がなくったら意味がねーんだよ。それでも一年あるんだろ。ならやはりあうべきだぜ」
「だったらお前らも立会人な。俺の家こいよ」
 こうして奈々の壊れた人生に一つの希望の光が芽生えた。これからが本当の物語の始まりである。

序章長くなってすいません
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

ペア

koikoiSS
青春
 中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。  しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。  高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。  友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。 ※他サイトでも掲載しております。

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜

三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。 父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です *進行速度遅めですがご了承ください *この作品はカクヨムでも投稿しております

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

青の時間

高宮 摩如(たかみや まこと)
青春
青という事。 それは未熟という事。 知るべき事がまだあるという事。 社会というものをまだ知らないという事。 そして、そういう自覚が無いという事。 そんな青い世代の生き様を登場人物名一切無しという”虚像”の世界観で絵描き出す青春群像劇。

[1分読書]あたしの実弟の実兄が好きなんだけど・・・血のつながりはありません

無責任
青春
実弟の実兄、だけど義兄。ちょっと複雑な家庭環境だけど・・・ 高校1年生の主人公、真田ひかり。 彼女には血のつながっている妹と弟が・・・。 その弟には、父親が別の兄が・・・。 その名は、田中信繁。 野球部のエースだ。 ちょっと複雑な関係・・・。 だから困る・・・。

サンスポット【完結】

中畑 道
青春
校内一静で暗い場所に部室を構える竹ヶ鼻商店街歴史文化研究部。入学以来詳しい理由を聞かされることなく下校時刻まで部室で過ごすことを義務付けられた唯一の部員入間川息吹は、日課の筋トレ後ただ静かに時間が過ぎるのを待つ生活を一年以上続けていた。 そんな誰も寄り付かない部室を訪れた女生徒北条志摩子。彼女との出会いが切っ掛けで入間川は気付かされる。   この部の意義、自分が居る理由、そして、何をすべきかを。    ※この物語は、全四章で構成されています。

処理中です...