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エルフィールの戸惑い

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教室の片隅で、グリンディアが甘えた声を出す。

「オズ♪ 足のマッサージしてー」

オズワルドは慣れた様子で頷いた。

「わかりました♪」



そんな二人のやり取りを見て、エルフィールの親友レイチェルがささやいた。

「オズワルドは、すっかりあの子の子分って感じだね」

グリンディアとオズワルドの親しげな様子に、エルフィールは少し鼻を鳴らす。

「ふん…相手が伝説の一族の子孫だからって…情けない…」




一方、グリンディアはマッサージを受けてご機嫌だった。

「オズ♪ スッキリした♪ ありがとう♪」

オズワルドも満足げに微笑んで答える。

「いえいえ♪ スッキリしてもらえて良かったです♪」




レイチェルは二人を見ながら、少し考え込んだ表情で言った。

「でも、あの二人って妙に仲がいいのよね。なんかまるで…」

「…そうね」

エルフィールも、どこか複雑な気持ちを抱えながら同意する。


レイチェルがさらに続けた。

「そういえば、グリンディアちゃんが来てからクラスの雰囲気が変わったよね。クラスで一番魔力値が高かったジェリコも、今じゃすっかり大人しくなっちゃって」

ジェリコは、オズワルドとの魔法試合で負けた後、以前のように威張る事はなくなり、教室の隅で静かに過ごしていた。

「でも、グリンディアちゃんが好き放題するのも仕方ないよね。だって、あの子は凄すぎるんだもん」

「えっ?」

「エルフィールの誕生日パーティーでグリンディアちゃんが魔法で作った花火、覚えてる? あんなすごい光、今まで見たことがなかった。」

エルフィールはその時の光景を思い出し、頷いた。

「確かに…あれは本当にすごかったわね。」


レイチェルはさらに続けた。

「クラスのみんなも言ってるけど、グリンディアちゃんの魔力値って私達と比較にならないくらい高いんじゃないかしら?」

エルフィールも内心、認めざるを得なかった。

「そうね…あの子の魔力は本当にすごいわ。流石伝説の一族ね。」

彼女の心には、少しの劣等感が広がっていく。この学校では、魔力値が全て…。

レイチェルがぽつりと呟いた。
「私も、グリンディアちゃんと仲良くなりたいなぁ。」

「…そうね」

エルフィールは悔しさを感じながら、心の中でつぶやく。

――あんな子に勝てるはずがない…。



その時、グリンディアの声がまた響いた。

「お礼に、たまにはワシがオズにマッサージをしてあげようか?」

オズワルドは驚いた様子で答えた。

「ええっ? 本当に?!」

「こんな感じか?」

「気持ち良いです…ありがとうございます」
グリンディアは不器用ながらも、オズワルドの肩を揉み始めた。

「ここはどうじゃ?」
グリンディアはさらに力を入れる。

「ああ…そこは気持ちがいいです…」

「ほう…ここはどうじゃ?」

「グリンディア様…そ、そこは…いけませんよ…」

「ふふふ…オズ…気持ち良いか…?」
グリンディアはいたずらっぽく笑いながら、もう一度同じ場所を指で擦る。
オズワルドは顔を赤らめ、もぞもぞと動きながらも必死に耐えた。


そのやり取りに、ついにエルフィールは堪えきれず、声を張り上げた。

「あ…あなたたち!! 教室で何をやってるんですか!!」

グリンディアは平然と振り返る。
「へっ?ワシはオズにマッサージをしてあげてただけじゃけど?」

「教室で変なマッサージしちゃダメです!!」

「変なマッサージなんてしてないわ!」

「オズワルドが変な声を出してたじゃないですか!」


グリンディアとの口論の最中、エルフィールは心に戸惑いを感じていた。

この学校では、魔力値が全て――そう思って生きてきたはずなのに、ほんの少しだけその考えに逆らってみたい気持ちが芽生えていた。
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