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おねしょ地蔵
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ワシはこの山奥に住むじいさんタヌキ。
ジジタヌキじゃ。
山奥にあるこの小さな村はなぁ、いつの頃からかお地蔵さまがいらっしゃってな。
ほかには、な~んもないところじゃったが、むかしから村の子どもたちの元気よく遊ぶ声だけがひびく良いところなんじゃ。
ワシはこの村が大好きなのだよ。
だからこの村のことなら知らないことはなにもない。
そんなこのジジタヌキが地蔵さまの前を通ったときのことじゃ。
地蔵さまがシクシク泣いておってなぁ。
心配になって聞いてみたんじゃよ。
「はて?地蔵さまや。どうしたのじゃ?」
地蔵さまはシクシク泣くばかりでのう。
だからもう一度きいてみたんじゃ。
「地蔵さまや。なにかかなしいことでもあったのかの?」
地蔵さまは
「子どもたちがわたしを『おねしょ地蔵』と言って指をさして笑うんです。
しかも、まいにちまいにちここに来ては『おねしょ地蔵』って手をたたきながら大はしゃぎしているんです。
わたしはおねしょなどしてはいないと思うのですが。
でも、夏の暑い日も雪が降る寒い日もここから動けず夜になると疲れてぐっすりねてしまうのです。
だから、もしかしてほんとうにおねしょしているのかもしれないと自信がなくなってきたんです。
たしかに、朝目が覚めるとなんだかぬれているような気がするのです。
だから、かなしくてかなしくて涙がとまらないのです。」
「なるほど、それはつらい思いをしておるのぅ。
なんとか確かめることはできないのかの?」
「ムリです。
どうせわたしは『おねしょ地蔵』といわれつづけるしかないのです。
ただただ子どもたちを見守るのがわたしの役目なのに、これでは見守るどころか笑われるだけの何の役にも立たない地蔵です。
グスン・・・」
ワシはどうしたものかと考えた。
「そうじゃ、朝目が覚めておねしょしているのがわかるのなら、ワシが夜中の間ずっとここにおって見ているというのはどうじゃな?
そうすれば、きっと何かがわかるじゃろ・・」
「でも、ほんとうにおねしょしていたら見られるのははずかしい・・・です。」
「大丈夫じゃよ。ワシはもうジジタヌキじゃ。
おねしょのひとつやふたつ見たって、どうってことないわい!
それにワシだって子どもの頃はおねしょなど毎日しとったもんだ!」
そうして、夜になるとこのジジタヌキがやってきては木のかげからお地蔵さまを見守る日が続いていました。
月も出ていない真っ暗なある夜のことです。
風の音しか聞こえない暗やみに鼻歌がかすかにきこえてきます。
「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」
ジジタヌキは目をじっとこらしました。
でも、暗くてなにも見えません。
すると鼻歌まじりに「ジョジョォ~、ジョジョジョジョォ~」
変な音もきこえてきました。
よぉーく目をこらして見てみると、ぼんやりとある姿が見えてきました。
「あれは・・・キツネではないか!」
陽気な歌をうたいながらやってきたのは、まちがいなくキツネなのでした。
「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」
キツネはお地蔵さまのところまでくると、なんとなんとお地蔵さまめがけて “おしっこ” をかけているではありませんか!
それも、お地蔵さまの前を通るたびに何度も・・・
ジジタヌキはあきれてしまいました。
「これでは、おねしょ地蔵と言われるわけじゃ。」
夜が明けると、お地蔵さまはまたおねしょをしてしまったのかとシクシク泣きだしました。
子どもたちもあいかわらず「おねしょ地蔵や~い!」といってお地蔵さまをからかっています。
ジジタヌキはお地蔵さまの所へ行くと、夜に起きたことを教えてあげました。
「これは、すこしこらしめてやらないかんのう。
ワシにまかせてくれんかの?」
お地蔵さまは、おねしょが自分のせいではないことがわかり、ホッとしました。
そして、ジジタヌキにまかせることにしたのです。
ある夜のことです。
「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」
どうやらあのキツネが来たようじゃな。
ジジタヌキは目をじっとこらしました。
キツネはお地蔵さまのところまでくると、いつもどおり “おしっこ” をかけようと片足を上げたその瞬間、聞いた事のないような声があたり一面ひびきわたりました。
グワワワワ~~
ドワワワワ~~
グビャアアアアアアアアアア~~~~~
地面がギシギシとゆれるほどです。
キツネはびっくりしてお地蔵さまを見ると、かいぶつかと思うような大きいジジタヌキがお地蔵さまの後ろにそびえたっていました。
そして、今にもキツネにおそいかかってきそうでした。
ジジタヌキにとっては、山のように大きく化けることなどあさめし前なのです。
腰が抜けるほどおどろいたキツネは “おしっこ” をするのも忘れて、ガクガクふるえながら後ろも振りかえらずピコンピコンと逃げていってしまいました。
「あっはっは!これにこりて、もうこんな悪さはしないだろう!」
それからというもの、二度とキツネはお地蔵さまに近寄らなくなったのじゃよ。
もちろんお地蔵さまは「おねしょ地蔵」などとからかわれることもなくなり、毎日子どもたちを見守りつづけています。
ジジタヌキじゃ。
山奥にあるこの小さな村はなぁ、いつの頃からかお地蔵さまがいらっしゃってな。
ほかには、な~んもないところじゃったが、むかしから村の子どもたちの元気よく遊ぶ声だけがひびく良いところなんじゃ。
ワシはこの村が大好きなのだよ。
だからこの村のことなら知らないことはなにもない。
そんなこのジジタヌキが地蔵さまの前を通ったときのことじゃ。
地蔵さまがシクシク泣いておってなぁ。
心配になって聞いてみたんじゃよ。
「はて?地蔵さまや。どうしたのじゃ?」
地蔵さまはシクシク泣くばかりでのう。
だからもう一度きいてみたんじゃ。
「地蔵さまや。なにかかなしいことでもあったのかの?」
地蔵さまは
「子どもたちがわたしを『おねしょ地蔵』と言って指をさして笑うんです。
しかも、まいにちまいにちここに来ては『おねしょ地蔵』って手をたたきながら大はしゃぎしているんです。
わたしはおねしょなどしてはいないと思うのですが。
でも、夏の暑い日も雪が降る寒い日もここから動けず夜になると疲れてぐっすりねてしまうのです。
だから、もしかしてほんとうにおねしょしているのかもしれないと自信がなくなってきたんです。
たしかに、朝目が覚めるとなんだかぬれているような気がするのです。
だから、かなしくてかなしくて涙がとまらないのです。」
「なるほど、それはつらい思いをしておるのぅ。
なんとか確かめることはできないのかの?」
「ムリです。
どうせわたしは『おねしょ地蔵』といわれつづけるしかないのです。
ただただ子どもたちを見守るのがわたしの役目なのに、これでは見守るどころか笑われるだけの何の役にも立たない地蔵です。
グスン・・・」
ワシはどうしたものかと考えた。
「そうじゃ、朝目が覚めておねしょしているのがわかるのなら、ワシが夜中の間ずっとここにおって見ているというのはどうじゃな?
そうすれば、きっと何かがわかるじゃろ・・」
「でも、ほんとうにおねしょしていたら見られるのははずかしい・・・です。」
「大丈夫じゃよ。ワシはもうジジタヌキじゃ。
おねしょのひとつやふたつ見たって、どうってことないわい!
それにワシだって子どもの頃はおねしょなど毎日しとったもんだ!」
そうして、夜になるとこのジジタヌキがやってきては木のかげからお地蔵さまを見守る日が続いていました。
月も出ていない真っ暗なある夜のことです。
風の音しか聞こえない暗やみに鼻歌がかすかにきこえてきます。
「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」
ジジタヌキは目をじっとこらしました。
でも、暗くてなにも見えません。
すると鼻歌まじりに「ジョジョォ~、ジョジョジョジョォ~」
変な音もきこえてきました。
よぉーく目をこらして見てみると、ぼんやりとある姿が見えてきました。
「あれは・・・キツネではないか!」
陽気な歌をうたいながらやってきたのは、まちがいなくキツネなのでした。
「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」
キツネはお地蔵さまのところまでくると、なんとなんとお地蔵さまめがけて “おしっこ” をかけているではありませんか!
それも、お地蔵さまの前を通るたびに何度も・・・
ジジタヌキはあきれてしまいました。
「これでは、おねしょ地蔵と言われるわけじゃ。」
夜が明けると、お地蔵さまはまたおねしょをしてしまったのかとシクシク泣きだしました。
子どもたちもあいかわらず「おねしょ地蔵や~い!」といってお地蔵さまをからかっています。
ジジタヌキはお地蔵さまの所へ行くと、夜に起きたことを教えてあげました。
「これは、すこしこらしめてやらないかんのう。
ワシにまかせてくれんかの?」
お地蔵さまは、おねしょが自分のせいではないことがわかり、ホッとしました。
そして、ジジタヌキにまかせることにしたのです。
ある夜のことです。
「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」
どうやらあのキツネが来たようじゃな。
ジジタヌキは目をじっとこらしました。
キツネはお地蔵さまのところまでくると、いつもどおり “おしっこ” をかけようと片足を上げたその瞬間、聞いた事のないような声があたり一面ひびきわたりました。
グワワワワ~~
ドワワワワ~~
グビャアアアアアアアアアア~~~~~
地面がギシギシとゆれるほどです。
キツネはびっくりしてお地蔵さまを見ると、かいぶつかと思うような大きいジジタヌキがお地蔵さまの後ろにそびえたっていました。
そして、今にもキツネにおそいかかってきそうでした。
ジジタヌキにとっては、山のように大きく化けることなどあさめし前なのです。
腰が抜けるほどおどろいたキツネは “おしっこ” をするのも忘れて、ガクガクふるえながら後ろも振りかえらずピコンピコンと逃げていってしまいました。
「あっはっは!これにこりて、もうこんな悪さはしないだろう!」
それからというもの、二度とキツネはお地蔵さまに近寄らなくなったのじゃよ。
もちろんお地蔵さまは「おねしょ地蔵」などとからかわれることもなくなり、毎日子どもたちを見守りつづけています。
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