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逆立ちしたネコ
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これはずっと昔の話です。
山深いところに、いっけんのお寺がありました。
この寺の和尚様はネズミ年に産まれたせいかネズミの置物や子どもたちが描いたネズミの絵などが大好きで、とても大切にお寺に飾っていました。
和尚様は、村人に対してとてもやさしく困ったことがあればすぐに力になってくれるのでだれからも頼りにされていました。
村人は何かお礼をと思い、畑でとれた農作物を持って誰か彼か毎日お寺に来ていました。
そんな、ある日和尚様は供え物がかじられていることに気づきました。
「はて?これはどうしたのじゃろう?
このイモは、なんだかかじられた跡があるようだ・・・」
それでも、和尚様はその時は何も思いませんでした。
が、翌日見て見るとさらに他の物もかじられているではありませんか。
「はてはて、不思議なこともあるものじゃ。
こう毎日かじられているとは、ネズミでもこの寺におるのかもしれん。
わしがネズミ好きなことを知っておるにちがいないのう・・・
しかし、こう毎日かじられてはせっかく持ってきてくれた村人たちに申し訳が無い。
そうじゃ、ネコでも寺で飼うとするか・・・」
こうして、和尚様は一匹のノラ猫をお寺で飼うことにしました。
“たま”と名付けたノラ猫に和尚様は言いました。
「いいか・・“たま”。この寺のどこかにネズミがいるようじゃ。
悪さをしなければいいが、供え物をかじるのは良くない。
そこで、お前に番人になってほしいのだ。」
「わかったにゃ~ん。」
「わかってくれたか・・たのんだぞ。」
「まかせてにゃ~ん。」
“たま”はそれから供え物がある部屋で毎日過ごすようになりました。
でも、“たま”は知っています。
どこにネズミがいるのかを・・
ねこは匂いですぐにわかってしまうのです。
それは、供え物の横においてある石で出来ているネズミの置物です。
ネズミは石の置物の小さく割れたすきまから出入りして、そこに隠れているのです。
“たま”はそのネズミの置物を爪でひっかいても石で出来ているのでネズミはちっともこわくありません。
ただ、ネズミは“たま”がいると供え物を食べるどころか近づくことさえできません。
石から出てこないといけないからです。
ネズミは、“たま”がごはんを食べに和尚様の部屋に行く時をねらって供え物を食べていました。
それに気づいた“たま”は供え物の近くからなかなか離れようとしません。
こまったネズミは、もうここを出ていくしかないと思いました。
ねこに気づかれずに、ここを脱出するいい方法を思いついたネズミは、すぐさま実行することにしました。
“たま”がいないすきに石の置物の真下の床をカリカリカリカリかじって穴をあけるのです。
その穴から、逃げようとする策です。
少しずつ少しずつカリカリカリカリ・・・
ひまさえあれば、カリカリカリカリ・・・
そうして、穴が少しずつ大きくなっていきました。
でも、石の置物は重くて穴の開いた上ではなんだかグラグラしてきました。
ネズミは「これは、あぶねぇ。いつ、床に穴があくかわからんぞ・・」
でも、ここから逃げだして他のところに行かないと食べ物にありつけない。
このお寺からさよならして、次のえさ場をさがさなくてはいけません。
“たま”がそこにいるかぎり、供え物の近くにはいけないからこのお寺ではもうムリなのです。
すると、ある日ネズミの心配通り「バッキ~~ン」と床が抜けてしまいました。
石の置物が床下に転がり落ちたのです。
それと、同時にネズミも床下に落ちてしまいました。
“たま”はそれを見逃しませんでした。
しかし、その穴はネズミがやっと通れる大きさです。
“たま”はネズミしか見ていなかったので、その穴めがけて飛び込みました。
でも、“たま”の身体はその穴をすり抜けることが出来なかったのです。
それどころか、頭だけがすっぽりはまってしまって逆立ちになり手足をバタつかせ
「ングッ!グニャ~ン・・ググニャ~ン・・ギャ~ン・・」と鳴くことしかできません。
“たま”の鳴き声に和尚様はこれはただことではない・・
と大慌てでやってきました。
それは、それはびっくりしたことでしょう・・
なにせ、手足バタバタ、からだクネクネ、おしりもしっぽもフリフリ、フリフリ。
“たま”が床の穴に頭をつっこみ逆立ちになってもがいているのですから・・・
そんな“たま”を見た和尚様が、そっとひきあげてくれました。
「にゃ~ん。にゃ~ん。」
“たま”はホッとしたのか、和尚様に抱かれて涙を流すのでした。
和尚様がその穴から床下をのぞいてみると、そこにはネズミの石の置物がこなごなになって散らばっていました。
わけのわからない和尚様はネズミの置物がこわれたことより“たま”が大事に至らなかったことを喜んでくれました。
もちろんそれからは、供え物がネズミにかじられることはなくなったのです。
ネズミはどこかに引っ越していったようです。
山深いところに、いっけんのお寺がありました。
この寺の和尚様はネズミ年に産まれたせいかネズミの置物や子どもたちが描いたネズミの絵などが大好きで、とても大切にお寺に飾っていました。
和尚様は、村人に対してとてもやさしく困ったことがあればすぐに力になってくれるのでだれからも頼りにされていました。
村人は何かお礼をと思い、畑でとれた農作物を持って誰か彼か毎日お寺に来ていました。
そんな、ある日和尚様は供え物がかじられていることに気づきました。
「はて?これはどうしたのじゃろう?
このイモは、なんだかかじられた跡があるようだ・・・」
それでも、和尚様はその時は何も思いませんでした。
が、翌日見て見るとさらに他の物もかじられているではありませんか。
「はてはて、不思議なこともあるものじゃ。
こう毎日かじられているとは、ネズミでもこの寺におるのかもしれん。
わしがネズミ好きなことを知っておるにちがいないのう・・・
しかし、こう毎日かじられてはせっかく持ってきてくれた村人たちに申し訳が無い。
そうじゃ、ネコでも寺で飼うとするか・・・」
こうして、和尚様は一匹のノラ猫をお寺で飼うことにしました。
“たま”と名付けたノラ猫に和尚様は言いました。
「いいか・・“たま”。この寺のどこかにネズミがいるようじゃ。
悪さをしなければいいが、供え物をかじるのは良くない。
そこで、お前に番人になってほしいのだ。」
「わかったにゃ~ん。」
「わかってくれたか・・たのんだぞ。」
「まかせてにゃ~ん。」
“たま”はそれから供え物がある部屋で毎日過ごすようになりました。
でも、“たま”は知っています。
どこにネズミがいるのかを・・
ねこは匂いですぐにわかってしまうのです。
それは、供え物の横においてある石で出来ているネズミの置物です。
ネズミは石の置物の小さく割れたすきまから出入りして、そこに隠れているのです。
“たま”はそのネズミの置物を爪でひっかいても石で出来ているのでネズミはちっともこわくありません。
ただ、ネズミは“たま”がいると供え物を食べるどころか近づくことさえできません。
石から出てこないといけないからです。
ネズミは、“たま”がごはんを食べに和尚様の部屋に行く時をねらって供え物を食べていました。
それに気づいた“たま”は供え物の近くからなかなか離れようとしません。
こまったネズミは、もうここを出ていくしかないと思いました。
ねこに気づかれずに、ここを脱出するいい方法を思いついたネズミは、すぐさま実行することにしました。
“たま”がいないすきに石の置物の真下の床をカリカリカリカリかじって穴をあけるのです。
その穴から、逃げようとする策です。
少しずつ少しずつカリカリカリカリ・・・
ひまさえあれば、カリカリカリカリ・・・
そうして、穴が少しずつ大きくなっていきました。
でも、石の置物は重くて穴の開いた上ではなんだかグラグラしてきました。
ネズミは「これは、あぶねぇ。いつ、床に穴があくかわからんぞ・・」
でも、ここから逃げだして他のところに行かないと食べ物にありつけない。
このお寺からさよならして、次のえさ場をさがさなくてはいけません。
“たま”がそこにいるかぎり、供え物の近くにはいけないからこのお寺ではもうムリなのです。
すると、ある日ネズミの心配通り「バッキ~~ン」と床が抜けてしまいました。
石の置物が床下に転がり落ちたのです。
それと、同時にネズミも床下に落ちてしまいました。
“たま”はそれを見逃しませんでした。
しかし、その穴はネズミがやっと通れる大きさです。
“たま”はネズミしか見ていなかったので、その穴めがけて飛び込みました。
でも、“たま”の身体はその穴をすり抜けることが出来なかったのです。
それどころか、頭だけがすっぽりはまってしまって逆立ちになり手足をバタつかせ
「ングッ!グニャ~ン・・ググニャ~ン・・ギャ~ン・・」と鳴くことしかできません。
“たま”の鳴き声に和尚様はこれはただことではない・・
と大慌てでやってきました。
それは、それはびっくりしたことでしょう・・
なにせ、手足バタバタ、からだクネクネ、おしりもしっぽもフリフリ、フリフリ。
“たま”が床の穴に頭をつっこみ逆立ちになってもがいているのですから・・・
そんな“たま”を見た和尚様が、そっとひきあげてくれました。
「にゃ~ん。にゃ~ん。」
“たま”はホッとしたのか、和尚様に抱かれて涙を流すのでした。
和尚様がその穴から床下をのぞいてみると、そこにはネズミの石の置物がこなごなになって散らばっていました。
わけのわからない和尚様はネズミの置物がこわれたことより“たま”が大事に至らなかったことを喜んでくれました。
もちろんそれからは、供え物がネズミにかじられることはなくなったのです。
ネズミはどこかに引っ越していったようです。
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