それは報われない恋のはずだった

ララ

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6話

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やがて季節は巡り、学園へ通う年齢になった。私の一つ下の異母妹はあと2年で学園へ通うことになる。だが異母妹が学園へ通うのは無理だろう。最近病状が悪化したのだ。

魔素欠乏症。体内で作られる魔素を留めることができず、絶えず体の外に魔素を垂れ流してしまう。人間は魔素がなければ生きていけない。

可哀そうだとは思う。でも心の底から同情なんてできないわ。冷たい姉よね。でも仕方がないと思わない?両親から愛され、大切に育てられた異母妹。純真無垢で愛されることが当然だと思っている。あの子の世界は自分が中心で回っているの。自分のせいで苦しんでいる人の気持ちに少しだって気づかない。

あの子のせいだけではない。周りの大人が甘やかしまくって育てたせいだ。もし、このまま貴族令嬢として生きていくのなら礼儀のなさは致命的だろう。まあ、それは私が考えたって仕方がないこと。学園を卒業すれば私がこの家の人間と関わることはなくなるのだから。

家を出て、学園の寮に入ってから本当に快適だった。誰かを避ける必要もない、過剰に他人の視線を気にすることもない。知らないことを学ぶのは楽しいし気の合う友達もできた。

なによりも初恋の人を目にすることができた。彼はジークハルト・オブライエン。我が王国のオブライエン公爵家の次男だ。将来は公爵家所有の精鋭が集まる騎士団の団長を務め兄を補佐していく。男爵家の私とは関わることはないだろう。実際に彼はSクラスで私はAクラス。Sクラスは家柄はもちろん学力や成績がトップレベルの人が集まっている。まさに世界が違うのだ。

廊下で見かけることはあっても恐れ多くもこちらから話しかけることなどできるはずもない。学園では生徒はみな平等をうたっているけれど実際はこんなものだ。学園を卒業すれば嫌でも貴族は身分社会で生きるしかないのだから。

充実した平穏な学生生活はまたもや異母妹リリアの登場によって壊される。最終学年の3年生になった秋、リリアが学園に入学したのだ。春は病状が思わしくなく学園に入るのを見送ったが秋に体調が回復したらしく途中編入という形になったのだ。

まさか最低限のマナーも覚えずにやってくるとは思わなかった。身分が上の者に自分から話しかけたり恐れ多くも殿下にも絡んでいった。「勉強を教えてください!」ですって?自ら学ぶ努力もしていないくせにご多忙な殿下の手を煩わせるなんて‥‥。

それに‥‥それによりによってジークハルト様を気に入ったのか知らないけれど何かあるたびに絡んでいってあの方が迷惑しているのに気づかないのかしら?!

許せないわ。

穏やかに終わるはずだった学園生活はリリアの登場によってあわただしいものへと変わった。迷惑をかけた方へ謝りに回ってリリアにマナーを叩き込む毎日。ちょっとでもマナーを注意すれば「お姉さまは私が嫌いなの?」だの「ひどい!いじめないで!」だの毎回被害者ぶって全く響かない。いつのまにか伯爵家の3男やら侯爵家の次男、子爵家の嫡男を味方につけて私を攻撃してくるように。

毎日男を侍らせて随分とご満悦な様子。学園はいまギスギスしている。リリアが侍らせている令息にはもちろん幼少より決められた婚約者がいる。彼らは婚約者がいるにも関わらず婚約者をほったらかしにしてリリアをちやほやしているのだ。立派な不貞である。

高位貴族の方々は今のところ静観している。その静けさが怖いくらいに‥‥。

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