それは報われない恋のはずだった

ララ

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4話

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「ダメです!あそこは母の大切な邸宅です。なぜリリアを招かねばならぬのですか!!」

「リリアが行きたいと言っている。何よりあそこは療養に向いている。それになぜ私がお前の許可をいちいちとらねばならん?」

「あの邸宅は伯爵家のものです。決してあなたのものではない!」

「とにかくリリアと妻をあの邸宅に招く。そんなに嫌だというのならお前はここに残っていろ。外出禁止だ。連れていけ!」

「ふざけないでください!‥‥離しなさい!!」

幼少期、お母様とよく一緒に過ごした王都から離れた自然豊かな地にある伯爵家所有の邸宅。息苦しい男爵家とは違ってあそこにはお母様との幸せな思い出がたくさん詰まっている。それにあそこは私にとって特別な場所。初恋の人との出会いの地。

あの邸宅で過ごす時だけ会える彼は今元気かしら?きっと私が心配する必要もないのでしょうけれど‥‥。甘酸っぱい恋。叶うはずもない無謀な恋。もう一度だけ会いたかった。彼はある年からあの場所へ来なくなってしまった。それ以来一度もあっていない。きっと忘れられてしまっているのでしょうね。

大切な‥‥大切な思い出の詰まったあの場所が壊されてしまう。嫌‥‥いやよ!でも今の私には何もできない。悔しい、もっと力があれば‥‥。 

父と義母、異母妹リリアが休暇を過ごす中、私は謹慎を命じられ部屋を出ることも叶わず1人過ごした。

リリアの楽しげな笑い声が聞こえてきた。

ああ、帰ってきたのね。

彼らの帰宅から数日後、私は謹慎をとかれた。リリアは私のところへ来るといつも休暇の思い出を語る。

あの湖が澄んでいて綺麗だったとか。あの談話室がお気に入りなんだとか。気に入らない飾りをお気に入りのものに変えたとか。

母との思い出が‥‥穢されてしまった。

その話を聞きたくなくてできる限り家の外で過ごすようになった。あと数年で私は学園に入学する。それまでの辛抱よ。

リリアがすっかり休暇を過ごした伯爵邸での日々を忘れた頃。私は1人その地を訪れた。

母と私が並んで座って一日中語り合ったお気に入りのソファは勝手に捨てられ、母の部屋は跡形もなく壊されていた。

2人だけの思い出の地は様変わりしていてとてもじゃないけれど正視できなかった。

唯一、変わらなかったのは初恋の人と出会った湖だけ。夕陽に照らされ光り輝くその姿だけは今も変わっていなかった。違うのはただ、彼が隣にいないことだけ。くだらないことで一緒に笑い合って肩を預け合った彼がいないとどこか物寂しい。
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