仮面夫婦で結構です〜もう恋なんてしないと決めたのに〜

ララ

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4話

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 公爵邸に着くと公爵家の家令が応対し、本日のお茶会が行われるカボせに案内された。

「ご機嫌よう。公子様。」

「ああ。」

「今日は大切なお話があって参りましたの。」

「?‥‥なんだ?」

「今後のことについての契約です。」

「ああ、そうだな。詳しく決めとかないとな。」

「ええ、まず後継となる子が必要なら産みますわ。」

「?!」

「公子様が結婚する気がなくても周りは放ってはおかない。その結果が私との婚約でしょう?私に求められているのは後継を産むことですわ。愛していただく必要などありません。明け透けに言ってしまえば行為は愛がなくてもできますもの。」

「それは‥‥そうだが。」

「愛人や愛妾を作っていただいても構いません。けれど社交の場では私を尊重してください。ただでさえ子爵令嬢の私が公爵夫人になることに反発を持っておられる方が多いのです。付け入る隙は与えたくありませんわ。」

「ああ。」

「仕事以外での干渉はお互いになしにしましょう。」

「ああ。」

「私からは以上です。何かご要望はありますか?」

「その‥‥。今の条件は俺に有利なものばかりだ。正直ありがたいが‥‥本当にいいのか?」

「おかしなことをおっしゃるのね。子爵家に婚約を打診した時点で私に断ると言う選択肢はなかった‥‥。なのにいざ婚約して私を気遣う?」

「すまない‥‥。俺には探している人がいるんだ。」

「どなたですの?」

「わからない‥‥。わからないんだ!馬鹿らしいと思うかもしれないが夢を見るんだ。起きたら忘れている。でも焦燥感だけが残る。何よりも大切な人。それなのに思い出せない‥‥!いつか見つけてみせる。」

「そう‥‥。この婚約に公子様は罪悪感を感じているなので言っておきますわ。ありがとうございます。」

「え、?」

「私には生涯忘れられない愛する人がいます。その人以外は愛せない。それでも私は貴族令嬢としていずれ結婚しなければならない。だから今回いただいたお話は渡りに船だったのです。」

「そうか。」

「そうです。利害の一致ですわ。」

「君を愛せないが妻として尊重しよう。そして何かあれば必ず守ろう。」

「ふふっ、お願いしますわ。それと‥‥生まれてくる子に罪はありません。どうか慈しんでください。」

「ああ、そうだな。子に罪はない‥‥。よろしく頼む。これから。」

「ええ、よろしくお願いしますわ。では私はこれで失礼させていただきます。ご機嫌よう。」







「お嬢様。お帰りですか?」

「ええ、少し眠ってもいいかしら?」

「どうぞ、着いたら起こしますね。」

「ありがとう、マーサ。」

夢を見た。レオとの幸せな夢。ルーカス様と話したことで思い出してしまったのね。

レオ‥‥会いたいよ‥‥レオ‥‥
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