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3話

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あの後本人たちが直接会うことはなく婚約は成立した。そして決められたのは月に一度のお茶会。いくら政略結婚とはいえ体裁は必要。

特に公爵家に嫁入りしたい令嬢はたくさんいる。付け入る隙を与えてはならないのだ。

「はぁ~。」

「あらあら、お嬢様。ため息を吐いては幸せが逃げていってしまいますよ。」

「マーサ‥‥。でもこのお茶会って本当に必要なのかしら?」

「お嬢様のお気持ちもわからないわけではないですが体裁を保つためにも必要でございます。」

「ええ、そうよね。分かってはいるのよ。それでも憂鬱になるのは仕方がないじゃない?」

「ルーカス公子様ったらお嬢様を前に何も話そうとしないんですものね。こんなにお美しいお嬢様なのに。」

「ふふっ、マーサありがとう。でも大丈夫よ。」

「無理はなさらないでくださいね。さあ!気合を入れて準備いたしますよ!誰にも負けないくらいその美しさを引き立てなければ!!」

鼻息荒くそう宣言しているのはマーサ。私の専属侍女。子爵家の養子になったその時からの関係で信頼している人よ。マーサは私よりも年上だからなのか少し過保護なところがあるわ。

マーサが憤慨しているのは初めてのお茶会の時。顔を合わせると早々に『君を愛するつもりはない。結婚は貴族としての義務だ。私の邪魔だけはするな。それ以外なら好きにしろ。』と言ってきたのだ。その言葉を聞いた瞬間からマーサは公子を嫌っている。嫌悪していると言ってもいいほどだ。

でも私にとっては好都合。私はレオを忘れることなんてできない。もう会えないのは分かってる。でも私が愛するのはレオだけよ。

貴族、それも令嬢なのだから結婚は免れない。レオ以外を愛するつもりがない私にとって義務を果たすためだけの結婚は大歓迎よ。

愛のない政略結婚。仮面夫婦。私はレオを想い続ける。だから仮面夫婦で結構よ。

『私もあなたを愛するつもりはありません。私には想う人がいるので。もう二度と会えないけれど‥‥。公爵夫人としての義務は果たします。それ以外はお互いに干渉はなしで。いわゆる仮面夫婦ですね?』

そう言い返した時のルーカス公子のポカンとした表情は面白かったわ。

ルーカス公子は白金の髪に透き通るようなエメラルドの瞳を持っている。彫刻のような美しさだった。白金の髪はレオを思い出させる。

対して私は黒髪に紫眼。黒はこの世界では珍しい。

ーーあのお茶会から何度か会っているけれど私たちの間に会話はほとんどない。

義務として会っているだけだ。婚約してから月に一回。子爵家の私が公爵家の婚約者になった。それも誰もが憧れるルーカス公子の。

それはあらゆる人から反感を買った。けれど表立って何かがあったわけでもなく小さな嫌がらせや令嬢たちから無視されるとかそんな程度。前世壮絶ないじめにあっていた私にとってそれらは可愛い子供のいたずらのように見える。

何事もなく行けばもうすぐ結婚ね。気が重いわ。

まずは結婚に際してルール作りをしないと。今日のお茶会ではそのことについて話し合うのよ。

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