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私の名前はレイチェル。
我が国の王太子殿下の婚約者よ。
婚約者である王太子殿下の贈り物を見てためいくを吐く。
「はぁ。もう‥‥どうしたらいいのーー。」
その言葉は誰に聞かれることもなく消えていく。
次の夜会のためのドレスが送られてきた。
普通なら婚約者からの贈り物は喜ぶだろう。
普通なら‥‥。
喜べない理由はこの贈り物にある。
この贈り物は殿下の側近が毎回選んでいるのだ。
そして殿下はお気に入りの令嬢にプレゼントをする。
それは殿下自らが選んで。
この前の夜会なんか最悪だった。
殿下から送られてきたドレスを着て行ったら殿下はお気に入りの令嬢とお揃いの衣装を着ていたのだ。
婚約者である私をここまで蔑ろにするなんて!!
おかげで私はいい笑いもの。
直接は言われないけれど影で自分がどう言われているかは知っている。
「お情けで選ばれた婚約者」
「捨てられた哀れな生贄」
「殿下を支えることもできない出来損ない」
そんなことを言われてしまうほどに私の立場は危うい。
本当ならきちんと殿下に苦言を呈して変えていかなければならない。
でも怖い。
殿下に捨てられるのが。
冷たい目で見られるのが。
それが私のせいだなんて絶えられない。
もういっそ一思いに振って欲しい。
そうしたら諦めがつくから。
それなのに殿下は何があっても私を手放そうとはしない。
それに縋っている私も同じよね‥‥。
明日の夜会が憂鬱だわ。
継母にいじめられていた昔と違って食べ物も豪華だし与えられた部屋も広くて美しい調度品が揃っている。
なのに虚しい。
昔は虐められていてもこっそり味方してくれる侍女だっていたし、少ない食事でも一緒に食べる人がいたから楽しかった。
今は虐められることこそないけれど味方と呼べるような存在もいない。
王太子妃として日々マナーを身につけて勉強をして。
一日中そうやって過ごして疲れ切って眠る。
殿下が会いにきてくれるわけでもなく夜会に行けば殿下が他のご令嬢と楽しそうに話して笑っている姿を見て傷つくだけ。
それでも夜会に行かなければなからない。
「お嬢様。時間ですので馬車にお乗りください。」
「ええ、今行くわ。」
朝からお風呂に入って体を磨く。
髪を整えてドレスを纏う。
結い上げられた白い髪は神秘的で美しく、ルビーのような紅く美しい瞳は夜でも輝いて見える。
彼女は誰よりも美しかった。
物憂げな表情もその美しさを引き立てるものでしかない。
馬車に乗り込み夜会へと向かう。
今日も殿下のエスコートはないのね‥‥。
1人きりで会場に入る。
彼女が会場に入ると一瞬だけ静かになる。
見惚れているのだ。その美しさに。
そして次の瞬間にはヒソヒソと影で悪口やら貶める発言をする。
「続きまして王太子殿下とフローレンス嬢のご入場です!!」
また別の令嬢だわ。
前回はオリーブ嬢だったかしら?
貴族の間では殿下のお相手に一度でも選ばれるとそれは名誉であり良い演壇が舞い込んでくるのですって。
だから殿下へアピールする令嬢は後を絶えない。
入ってきた殿下とフローレンス嬢の服は同じデザインではなかった。
今回は私と同じデザインの服なのね。
ホッとするのと同時に少しときめいている。
流石に前回の婚約者以外とお揃いの衣装は周りの反響も大きくてやめたのかしら?
我が国の王太子殿下の婚約者よ。
婚約者である王太子殿下の贈り物を見てためいくを吐く。
「はぁ。もう‥‥どうしたらいいのーー。」
その言葉は誰に聞かれることもなく消えていく。
次の夜会のためのドレスが送られてきた。
普通なら婚約者からの贈り物は喜ぶだろう。
普通なら‥‥。
喜べない理由はこの贈り物にある。
この贈り物は殿下の側近が毎回選んでいるのだ。
そして殿下はお気に入りの令嬢にプレゼントをする。
それは殿下自らが選んで。
この前の夜会なんか最悪だった。
殿下から送られてきたドレスを着て行ったら殿下はお気に入りの令嬢とお揃いの衣装を着ていたのだ。
婚約者である私をここまで蔑ろにするなんて!!
おかげで私はいい笑いもの。
直接は言われないけれど影で自分がどう言われているかは知っている。
「お情けで選ばれた婚約者」
「捨てられた哀れな生贄」
「殿下を支えることもできない出来損ない」
そんなことを言われてしまうほどに私の立場は危うい。
本当ならきちんと殿下に苦言を呈して変えていかなければならない。
でも怖い。
殿下に捨てられるのが。
冷たい目で見られるのが。
それが私のせいだなんて絶えられない。
もういっそ一思いに振って欲しい。
そうしたら諦めがつくから。
それなのに殿下は何があっても私を手放そうとはしない。
それに縋っている私も同じよね‥‥。
明日の夜会が憂鬱だわ。
継母にいじめられていた昔と違って食べ物も豪華だし与えられた部屋も広くて美しい調度品が揃っている。
なのに虚しい。
昔は虐められていてもこっそり味方してくれる侍女だっていたし、少ない食事でも一緒に食べる人がいたから楽しかった。
今は虐められることこそないけれど味方と呼べるような存在もいない。
王太子妃として日々マナーを身につけて勉強をして。
一日中そうやって過ごして疲れ切って眠る。
殿下が会いにきてくれるわけでもなく夜会に行けば殿下が他のご令嬢と楽しそうに話して笑っている姿を見て傷つくだけ。
それでも夜会に行かなければなからない。
「お嬢様。時間ですので馬車にお乗りください。」
「ええ、今行くわ。」
朝からお風呂に入って体を磨く。
髪を整えてドレスを纏う。
結い上げられた白い髪は神秘的で美しく、ルビーのような紅く美しい瞳は夜でも輝いて見える。
彼女は誰よりも美しかった。
物憂げな表情もその美しさを引き立てるものでしかない。
馬車に乗り込み夜会へと向かう。
今日も殿下のエスコートはないのね‥‥。
1人きりで会場に入る。
彼女が会場に入ると一瞬だけ静かになる。
見惚れているのだ。その美しさに。
そして次の瞬間にはヒソヒソと影で悪口やら貶める発言をする。
「続きまして王太子殿下とフローレンス嬢のご入場です!!」
また別の令嬢だわ。
前回はオリーブ嬢だったかしら?
貴族の間では殿下のお相手に一度でも選ばれるとそれは名誉であり良い演壇が舞い込んでくるのですって。
だから殿下へアピールする令嬢は後を絶えない。
入ってきた殿下とフローレンス嬢の服は同じデザインではなかった。
今回は私と同じデザインの服なのね。
ホッとするのと同時に少しときめいている。
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