勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです

１話

「ねえアンジェラ。新聞見た？！ついに勇者様が魔王討伐に成功したって！！」

「うん、見たよ！！すっごいよねぇ。ついに魔王を倒しちゃったよ！！」

勇者様の魔王討伐。

最近はこの話で持ちきりだ。

特に私の住むこの村は勇者アレンの故郷であるから誰もがアレンを直接知っている。

やんちゃでよく言えば勇敢、悪く言えば無謀なこともやってのける男の子はある日神託を受け勇者に選ばれた。

こんな辺鄙な村から勇者が出るなんて誰にも予想できなかったことだろう。

けれど彼が勇者だと言われて納得した。

なんていうかオーラがあったのだ。

それに見目も麗しくて腕も良かった。

辺鄙な場所にあるこの村は度々高ランクの魔物の襲撃もあるため基本的に戦う男性たちは強い。

冒険者で言うとAランクはくだらないだろう。

誰も冒険者登録はしていないが‥‥。

でもそれは大人の話。

もちろん子供もいずれは狩りに参加する。

けれどアレンは早いうちから狩りに参加していたし大人顔負けの活躍をしていた。

そんなアレンが勇者だと言われてほとんどの人が納得した。

アレンはこの村を旅立ち、王都で必要なことを学び、仲間を得て魔王討伐へ向かった。

そしてついに魔王討伐を成し遂げたのだ！！

勇者パーティーは5人。

勇者アレン
聖女セレーナ
戦士ゲルフ
魔法使いエレナ
騎士ブライト

彼らは五年もの年月をかけて力をつけ魔王討伐を成し遂げた。

つい先日帰還を祝うパーティーが王都で盛大に行われた。

その日は私も見に行った。

一目アレンの姿を見たかった。

あわよくば話す時間が取れるかも‥‥なんて期待して。

馬車の上で仲間と共に誇らしげに手を振るアレンを見るだけでその日は終わってしまった。

今話題の英雄様と話す時間なんてとても取れなかった。

悲しかった‥‥。

大好きなアレンがとても遠い存在になってしまったようで。

アレンは‥‥アレンはもう私を忘れてしまったのだろうか？

今は王都に滞在しているけれどなんの音沙汰もない。

アレンにとって私はもうどうでもいい存在になってしまったんじゃないか？

アレンが帰ってきたのはとても嬉しいことなのに変わってしまったアレンを見るのは辛い‥‥。

アレンはただの幼馴染じゃない。

恋人なのだ。

アレンが勇者になる前からずっと私たちは恋人だった。

アレンは討伐に行く前私に言ったのだ。

待っていてくれ‥‥と。

必ず帰ってくるからその時は結婚してほしい‥‥と。

その言葉を信じて待ち続けた。

５年‥‥。５年よ？

不安にならない日なんてなかった。

魔王討伐は危険だわ。

もしアレンに何かあったら？

何もできない自分が歯痒かった。

悔しかった。

少しでもアレンの助けになれならって思って薬学を学んだ。

今では国で一二を争う腕前の薬師になった。

ひたすら祈り、待ち続けた５年。

ようやく帰ってきて会えると思ったら遠くから姿を見れただけ。

アレンからの連絡は何もない。

それどころか‥‥。





ーー翌日、事態は大きく動き出した。