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夫と結婚してもう5年経つ。
レイチェル=ミラー。ミラー子爵家の次女。それが私。
子爵家といえども家は裕福だ。幅広く商売を広げ、元は大きな商会を運営していた先祖がその莫大な富を使って貴族に仲間入りしたのだとか。昔こそ成金だの金で買った爵位の平民だの蔑まれることはあったそうだが私が生まれた時にはそんなことを表立って言う人はいなかった。
ミラー子爵家はそれほどまでに富を持っているのだ。貴族でさえ敵対するのを躊躇うほどの‥‥。あとは単純にその利益にあやかろうとしたり利用しようとしたりする者が多いからかな?
そんは家で私は大切に育てられてきた。姉が1人、兄が1人いて両親も兄弟も歳の離れた私を大層可愛がってくれた。何不自由ない贅沢で幸せな暮らし。
世間知らずなお嬢様。今思えば私はなんで都合のいい使い勝手のいいカモだったのかしら?
今から5年ほど前、私は運命の出会いをした。相手は男爵家のフレディー=ブラントン。ある夜会で出会って一瞬で恋に落ちた。
男性との付き合い方も何もわからなかったけれど彼は紳士にリードしてくれた。隠れるように逢瀬を重ね、彼との未来を夢見るようになったある日、家族に関係がバレてしまった。
猛反対されたわ。フレディーは女遊びが激しくクズで有名だって言うのよ?酷いと思わない?!
あの時の私は初めての恋に夢中になって周りが見えていなかった。家族の私を思うが故の忠告にさえ耳を傾けることはなかった‥‥。
家族の反対を押し切る形で強引に彼の元へ行ったわ。彼も歓迎してくれた。甘いマスクで耳元で囁かれると蕩けてしまいそうになる。
好きだった。誰よりも愛していたわ。
お腹に子供ができると私の家族もようやく諦めてくれたみたい。娘に不憫な思いをさせないように、と生活費を送ってくれた。でもそれは子爵家はそれ以上は関わらないという手切れ金の意味を持ったものだった‥‥。悲しかった。家族との縁が切れてしまったようで。それでも私は彼を愛しているの。
最初こそ彼は理想の夫だった‥‥。
でもそれは子供ができて安定したお金が手に入るとわかった途端に変わってしまった‥‥。
「ねえ、どうして昨日は帰ってこなかったの?待っていたのよ。」
「え?ああ、ごめん。同僚と飲みにいっててさ、ついつい飲みすぎちゃってそのまま泊めて貰ったんだ。」
「そう‥‥。気をつけてちょうだいね。夜道は物騒だから。」
「ああ、気をつける。愛しているよ、レイチェル。」
そう言って話を切り上げ、口付けしてくる彼。話をはぐらかされたようだけれどその違和感に気づかないふりをした。
レイチェル=ミラー。ミラー子爵家の次女。それが私。
子爵家といえども家は裕福だ。幅広く商売を広げ、元は大きな商会を運営していた先祖がその莫大な富を使って貴族に仲間入りしたのだとか。昔こそ成金だの金で買った爵位の平民だの蔑まれることはあったそうだが私が生まれた時にはそんなことを表立って言う人はいなかった。
ミラー子爵家はそれほどまでに富を持っているのだ。貴族でさえ敵対するのを躊躇うほどの‥‥。あとは単純にその利益にあやかろうとしたり利用しようとしたりする者が多いからかな?
そんは家で私は大切に育てられてきた。姉が1人、兄が1人いて両親も兄弟も歳の離れた私を大層可愛がってくれた。何不自由ない贅沢で幸せな暮らし。
世間知らずなお嬢様。今思えば私はなんで都合のいい使い勝手のいいカモだったのかしら?
今から5年ほど前、私は運命の出会いをした。相手は男爵家のフレディー=ブラントン。ある夜会で出会って一瞬で恋に落ちた。
男性との付き合い方も何もわからなかったけれど彼は紳士にリードしてくれた。隠れるように逢瀬を重ね、彼との未来を夢見るようになったある日、家族に関係がバレてしまった。
猛反対されたわ。フレディーは女遊びが激しくクズで有名だって言うのよ?酷いと思わない?!
あの時の私は初めての恋に夢中になって周りが見えていなかった。家族の私を思うが故の忠告にさえ耳を傾けることはなかった‥‥。
家族の反対を押し切る形で強引に彼の元へ行ったわ。彼も歓迎してくれた。甘いマスクで耳元で囁かれると蕩けてしまいそうになる。
好きだった。誰よりも愛していたわ。
お腹に子供ができると私の家族もようやく諦めてくれたみたい。娘に不憫な思いをさせないように、と生活費を送ってくれた。でもそれは子爵家はそれ以上は関わらないという手切れ金の意味を持ったものだった‥‥。悲しかった。家族との縁が切れてしまったようで。それでも私は彼を愛しているの。
最初こそ彼は理想の夫だった‥‥。
でもそれは子供ができて安定したお金が手に入るとわかった途端に変わってしまった‥‥。
「ねえ、どうして昨日は帰ってこなかったの?待っていたのよ。」
「え?ああ、ごめん。同僚と飲みにいっててさ、ついつい飲みすぎちゃってそのまま泊めて貰ったんだ。」
「そう‥‥。気をつけてちょうだいね。夜道は物騒だから。」
「ああ、気をつける。愛しているよ、レイチェル。」
そう言って話を切り上げ、口付けしてくる彼。話をはぐらかされたようだけれどその違和感に気づかないふりをした。
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