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3話 リモージュ
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サムとヴォルフと別れてやってきたのは彼らが並んだ列とは反対側に伸びている長い列。街に入るための門は二つある。馬車ごとは入大きな門と人が入れる程度の大きさの小さな門だ。サム達は荷馬車があるので大きな門の方の列に並んだ。俺は小さな門の方の列に並ぶ。もう一つ大きな門があるがそれは貴族用なんだとか。
高く聳え立つ強大な壁は外にいる魔物の脅威から中の街、住民を守るためのものだ。戦時には壁の上から魔法や弓で攻撃し敵を蹴散らす。この構造のおかげでこの町はダンジョン近くにあってもなお、街の中心への侵入を許すことなく存続している。
30分ほど並ぶとついに順番が来た。剣を持ち、鎧を着た守衛が門の前に立っている。犯罪者を街へ入れないためだ。
「身分証とこの町へ来た目的は?」
中年の人のよさそうな髭を生やしたおっさんだ。
「身分証は持っていない。街へ来たのは冒険者になるためだ。」
「それなら仮の身分証を発行する。銀貨2枚だ。二日以内に冒険者ギルドで正式に登録してくれ。でないと不法滞在になる。気をつけろ。あとこの水晶に手をかざしてくれ。」
「?‥‥これでいいのか?」
言われたとおりに何の変哲もない水晶玉に手をかざす。‥‥何も起きない。
「何も起きないぞ?」
「おや?兄ちゃん、これを知らないのか?よほど田舎から来たんだな~。まあ何も起こらなくていいんだよ。これは犯罪者を見分けるためのものだ。この王国の主要な街には必ずあるぞ。犯罪者が触れるとこの水晶が黒く濁るんだ。」
「へえ~、便利なものだな。」
「まあこれも完ぺきではないんだがなあ。」
後で聞いた話によるとこの水晶が見分けることができるのは罪の意識だけだ。つまり触った人間に罪の意識があれば水晶は黒く濁る。ただし本人の意識次第なので根っからのサイコパスや嘘つきはわからない。まあ大体はこれで防げるみたいだ。
「ああ、兄ちゃん。仮の身分証を発行するために名前と年齢を教えてくれ。」
「はい、ユウです。年齢は24歳だ。」
「24?!まじか‥‥18くらいだと思ったぜ。」
「18?そんなに若く見えるのか?」
「ああ、やっぱり外人さんの外見じゃ年齢がわからんなあ~」
やっぱり日本人は若く見られるんだな。
「よしっ!これが仮の身分証だ。しつこいようだが必ず二日以内に正式に登録しろよ!毎年何人かは登録を忘れて警備隊のご厄介になるやつがいるからな。そうなったら馬鹿にならない額の罰金を取られるぞ。」
「ああ、気を付けるよ。」
「リモージュへようこそ!!」
リモージュはサムが以前説明してくれたようにフローティア王国にある街のひとつだ。ダンジョンが近くにあり王都の次に栄えている。近くに海があることから流通の要として機能している。商品も人も集まり市場の人だかりは本当にすごい。
関わることはそうそうないだろうけど(ないと思いたい)ここはフローティア王国の侯爵領にあたる。侯爵本人は普段は王都にいてなかなかリモージュに来ることはないそうだ。だが奥方や子息はリモージュの中心にある侯爵邸に滞在している。社交シーズンは王都に行くらしい。
城塞都市、リモージュは強大な壁が三重にありそれぞれ区画が分かれている。三重の壁の中心には侯爵邸をはじめとした貴族や裕福層の建物がある。なおこのエリアに入るための審査は厳しく、関係者もしくは紹介状がないとはいることはできない。ただし大規模な魔物暴走が起こったとき、避難所として開放されたことが過去にある。
二重の壁に守られている真ん中のエリアが一番広い。西に冒険者ギルドと商業ギルドが存在しその周りに宿が集まる通りや武器屋をはじめとした冒険者向けの店が集まる通り、飲食店や屋台が集まる通りがある。反対に東側は住居が集まっている。
一番外側、街の外と壁一つ区切られた場所は西に商店、東に住居が存在する。真ん中のエリアに比べて全体的に安い。そのため治安も中心から遠ざかるにつれて治安も悪くなっていく。ただスラムなどは存在しないため他の街に比べて治安はいいほうである。
冒険者が多く集まるため些細なトラブルや暴力沙汰は少なくないが‥‥。冒険者はその力をむやみに一般人に向けてはならないという暗黙の了解があるためほとんどは冒険者同士のトラブルである。犯罪やあまりに素行が悪いとギルドから追放される。ギルドからの追放は社会的な死を意味するといっても過言ではない。ギルドから追放された者はほかの国や街に受け入れてもらえずに最後には盗賊になる。そうやって王国の騎士団に始末された者も実際にいたそうだ。
世界各国に存在するギルドは独自の連絡手段を持ち、追放者の情報は即時に共有される。その情報網は魔物暴走の際に遺憾なく発揮され応援を呼ぶ。冒険者ギルドはいわば対魔物機関だ。国に属さないため人同士の戦争には参加しない。代わりに魔物の脅威から人々を守るためならあらゆる手段を使う。
とりあえずギルドに向かおう!
高く聳え立つ強大な壁は外にいる魔物の脅威から中の街、住民を守るためのものだ。戦時には壁の上から魔法や弓で攻撃し敵を蹴散らす。この構造のおかげでこの町はダンジョン近くにあってもなお、街の中心への侵入を許すことなく存続している。
30分ほど並ぶとついに順番が来た。剣を持ち、鎧を着た守衛が門の前に立っている。犯罪者を街へ入れないためだ。
「身分証とこの町へ来た目的は?」
中年の人のよさそうな髭を生やしたおっさんだ。
「身分証は持っていない。街へ来たのは冒険者になるためだ。」
「それなら仮の身分証を発行する。銀貨2枚だ。二日以内に冒険者ギルドで正式に登録してくれ。でないと不法滞在になる。気をつけろ。あとこの水晶に手をかざしてくれ。」
「?‥‥これでいいのか?」
言われたとおりに何の変哲もない水晶玉に手をかざす。‥‥何も起きない。
「何も起きないぞ?」
「おや?兄ちゃん、これを知らないのか?よほど田舎から来たんだな~。まあ何も起こらなくていいんだよ。これは犯罪者を見分けるためのものだ。この王国の主要な街には必ずあるぞ。犯罪者が触れるとこの水晶が黒く濁るんだ。」
「へえ~、便利なものだな。」
「まあこれも完ぺきではないんだがなあ。」
後で聞いた話によるとこの水晶が見分けることができるのは罪の意識だけだ。つまり触った人間に罪の意識があれば水晶は黒く濁る。ただし本人の意識次第なので根っからのサイコパスや嘘つきはわからない。まあ大体はこれで防げるみたいだ。
「ああ、兄ちゃん。仮の身分証を発行するために名前と年齢を教えてくれ。」
「はい、ユウです。年齢は24歳だ。」
「24?!まじか‥‥18くらいだと思ったぜ。」
「18?そんなに若く見えるのか?」
「ああ、やっぱり外人さんの外見じゃ年齢がわからんなあ~」
やっぱり日本人は若く見られるんだな。
「よしっ!これが仮の身分証だ。しつこいようだが必ず二日以内に正式に登録しろよ!毎年何人かは登録を忘れて警備隊のご厄介になるやつがいるからな。そうなったら馬鹿にならない額の罰金を取られるぞ。」
「ああ、気を付けるよ。」
「リモージュへようこそ!!」
リモージュはサムが以前説明してくれたようにフローティア王国にある街のひとつだ。ダンジョンが近くにあり王都の次に栄えている。近くに海があることから流通の要として機能している。商品も人も集まり市場の人だかりは本当にすごい。
関わることはそうそうないだろうけど(ないと思いたい)ここはフローティア王国の侯爵領にあたる。侯爵本人は普段は王都にいてなかなかリモージュに来ることはないそうだ。だが奥方や子息はリモージュの中心にある侯爵邸に滞在している。社交シーズンは王都に行くらしい。
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二重の壁に守られている真ん中のエリアが一番広い。西に冒険者ギルドと商業ギルドが存在しその周りに宿が集まる通りや武器屋をはじめとした冒険者向けの店が集まる通り、飲食店や屋台が集まる通りがある。反対に東側は住居が集まっている。
一番外側、街の外と壁一つ区切られた場所は西に商店、東に住居が存在する。真ん中のエリアに比べて全体的に安い。そのため治安も中心から遠ざかるにつれて治安も悪くなっていく。ただスラムなどは存在しないため他の街に比べて治安はいいほうである。
冒険者が多く集まるため些細なトラブルや暴力沙汰は少なくないが‥‥。冒険者はその力をむやみに一般人に向けてはならないという暗黙の了解があるためほとんどは冒険者同士のトラブルである。犯罪やあまりに素行が悪いとギルドから追放される。ギルドからの追放は社会的な死を意味するといっても過言ではない。ギルドから追放された者はほかの国や街に受け入れてもらえずに最後には盗賊になる。そうやって王国の騎士団に始末された者も実際にいたそうだ。
世界各国に存在するギルドは独自の連絡手段を持ち、追放者の情報は即時に共有される。その情報網は魔物暴走の際に遺憾なく発揮され応援を呼ぶ。冒険者ギルドはいわば対魔物機関だ。国に属さないため人同士の戦争には参加しない。代わりに魔物の脅威から人々を守るためならあらゆる手段を使う。
とりあえずギルドに向かおう!
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