追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ

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5話

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穏やかな生活。それを脅かすものの足音は知らずのうちに迫っていた‥‥。





ーー

第二王子殿下がお越しになられて3日。特に何の変化もなく日常を送っていた。

ここ3日待ちでは歓迎のお祭りが開かれている。あちこちに屋台が並んで騒いで楽しんで。

歓迎と言いながら楽しいことが好きなだけな気もするが‥‥。

流石に他の子供たちがお祭りに行っている中、ルーカスだけ行けないのは可哀想なので深めの帽子を被せて今日の夜は2人でお出かけだ。

少し夜更かしをするので昼寝を促す。最初は楽しみで仕方がない様子で寝っ転がりながらふふふっと笑って転げていた。

安眠できるラベンダーの香りの香を炊いて胸をトントンとしていると呼吸は徐々に穏やかなものに変わりやがて眠りにつく。

2時間ほど寝かせてから起こす。

「ん~?おはよう?」

「ふふっ、おはよう。さあ!準備しましょう!お祭りよ?」

「おまつり‥‥お祭り!!わーい!!」

飛び跳ねて喜ぶ姿にこんなに喜ぶならもっと早く行かせてあげればよかったかなと思う。

「さあ!荷物を準備して。」

「んーとね。これとね。これが必要なの!」

「これは必要?」

「くまさん!必要なの!くまさんも行きたがってるよ!」

「そうなのね?じゃあ一緒に行きましょう!」

「でもね、うさぎさんも行きたがってるの。‥‥入らない。」

バックに入らなくてしょぼんとしてしまう。

ん”んっ!可愛い!!

「そうね。2人は入らないわ。どっちかお留守番してもらってお土産を買って行きましょう?」

「おみやげ‥‥うん!そうする!!じゃあ今日はうさぎさんはおるすばんね!」

小さなリュックを宝物でいっぱいにして準備は万端!

手をしっかりと繋いで活気ある街へ繰り出す。

「わぁ~!すごいね!!すごい!すごい!」

すごいを連発しながら飛び跳ねる我が子は可愛くて仕方がない。

「いい匂い‥‥んふふっ!楽しいね~?」

「ええ、楽しいわね。」

我が子のこんなにキラキラと輝く笑顔が見れたなら連れてきてよかったわ。

「あっち!あっちいこ!!こっちも!!」

ルーカスに連れられるままにお祭りを楽しんだ。

飲み物を買って少し2人で休憩している時だった‥‥。

「よう姉ちゃんひとりか?」

柄の悪い二人組の男に絡まれる。

「俺たちと遊ぼうぜ!」

「なぁ?楽しい事しようぜ?俺らうまいぞ?」

「あの!やめてください!子供がいるんです!」

乱暴に腕を掴まれてそのまま引き摺られてしまうそうな恐怖に駆られる。

「あぁ?何だよ。ガキなんてほっとけ。俺らが遊んでやるっつてんだよ!来いよ!」

「痛っ!やめて!!」

「母さまをいじめるなぁ!!!!」

突然ルーカスが私の腕を掴んでる男の腕に噛み付く。

「ぎゃっ!イッテ。このクソガキが!!!!」

男がルーカスに向かって拳を振り上げるのを見て咄嗟にルーカスに覆い被さる。来るだろう痛みに備えて身を硬くする。

ーー??痛くない?

「大丈夫ですか?レディ。」

涼やかな顔で男の腕を掴み私を心配げに見下ろしているのはサラサラの銀髪に青い瞳の人だ。

一瞬見惚れてしまうほどの美丈夫だ。

「か弱いレディと子どもに暴力だなんてありえない。お前たち覚悟はできているんだろうな?」

「はっ?ざけんなよ!関係ない奴が入ってくんじゃねぇ!」

酔っている男達は気が強くなって気付いていないのだろうか?美丈夫の腕には騎士を象徴する腕章がついているのに‥‥。

「はぁー、おいこいつら連れていけ!」

「はっ!!」

後ろからガタイの良い騎士達が来て男達の腕を捻り上げながら連行していく。

あまりの出来事にぼーっとしてしまう。

「レディ大丈夫ですか?僕、偉かったね。守ろうとしたんだもんね。」

「ぅん‥‥ふぇぇぇん!!!」

「ルーカス!大丈夫よ。ありがとうね。」

泣きながらしゃくりあげる我が子を抱き上げる。しばらくそうしていると疲れて眠ってしまったみたいだ。せっかくの楽しい夜だったのに残念でならない。

「レディ、送っていきましょう。夜道を歩くのは危険です。」

「いえ、あの、せっかくですが結構です。」

「遠慮なさらずに。私が心配で眠れなくなってしまうので送らせていただけませんか?」

彼の好意を無碍にもできなくてお言葉に甘える。

「ではお願いします。」

雑談をしながら家へ向かって2人で歩く彼らの後ろで騎士が呟く言葉をクレアが聞き取ることはなかった。


ーーーー

「まじか?殿下のあんな姿見たの初めてだぜ。」

「奇遇だな。俺もだ。」

「あんな笑顔できるんだな。」

「あの『氷の騎士』がねぇ。」

「なんか面白くなってきた。」

「でもあの女性子連れだよな?結婚してるんじゃ??」

「ぁ‥‥。殿下‥‥どんまいです。」
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