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「クレア・シルフォニア。そなたを第二王妃アゲハの毒殺未遂により処刑にする!」

断罪‥‥。結局何も変えられなかったのね。私は悪役令嬢。運命に抗おうとしたけれど‥‥無理だった。ごめんなさい。神様‥‥私無理だった。幸せになんてなれないわ!もう終わりにしてほしい。疲れたの。

処刑を望む私の願いが叶えられることはなかった。

「まあ!カリスト様。確かに私怖かったけれど処刑はやめてあげて!それに国外追放にした方がいいわ!(だって惨めでかわいそうでしょう?死ぬまで苦しんでいただかなくては)」

民衆には「何で慈悲深い第二王妃」と呼ばれるように振る舞う。そして私にだけ聞こえるように悪意のこもった言葉を投げかける。

「ではアゲハに免じて国外追放とする。今後クレアに手を貸した者も同じ処分にする。肝に銘じよ!クレア‥‥二度とその顔を見せるな!」

唯一の希望である死さえ奪われた。

結局クレア・シルフォニアはただの平民のクレアとなり国を追われた。何の準備もなくその時身につけていたものだけを持って。

私の生家である公爵家は解体される。カリスト殿下はそれを最初から狙っていた。私が毒殺未遂だなんてわかりやすい嘘だこと。

誰もがこれを茶番だと知りながら演じる。王家の力を強めるためには公爵家という強い力は邪魔だった。

公爵家が解体されることに未練はない。私を産んだ両親は私を道具としてしか見ていなかったから興味すらない。

ただ案じるのはシルフォニア王国の行く末、民の生活だけ。アゲハは傲慢で貴族主義。贅沢が大好きで国庫を使い潰すのも時間の問題でしょう。

王家に権力が集中することによって独裁国家となる。そうすると甘い汁を啜ろうとするものばかりが出てきて内から国は腐っていく。

本当に優秀なものは国を出ていくであろう。国の崩壊、それは内から自滅するか傾いたところを他国に攻め入られるかの2択だろう。

もう私にはどうすることもできないが民が苦しまないことを願うしかない。

これからどうしようかしら?貴族として生きてきたものが身分を剥奪され追放されるというのは緩やかな死を意味する。

いきなり平民として生活できるはずがないからだ。けれど幸か不幸か私には庶民だった前世の記憶がある。

神様の手違いで死んでしまった私は第二の生をもらった。今度こそ幸せになりなさいと送り出されて‥‥。

けれど私は乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生していた。断罪を避け、国を守るためにあらゆる手を尽くした。けれど結果はこれだ。

はぁ~何だか疲れたわ。

取り敢えず隣国を目指して密かに暮らしていきましょう。私には貴族よりも平民の生活の方があっているわ。

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