上 下
3 / 8

三話

しおりを挟む
*若干R18の内容含む












唯一の楽しみは婚約者との一ヶ月に一度の逢瀬だけ。

だったのに‥‥。

信じられない。

目の前で私を嘲笑うのがあのセルジオだなんて。ニーナと一緒になって楽しそうに笑うのは私の婚約者のはずのセルジオ。

彼の口からは私に対する暴言が溢れる。

わかってた。心のどこかでは‥‥。

でも信じられなかった、信じたくなかった!!

私と会うのは一ヶ月に一度だけだったのに彼は週に何度も侯爵家を訪れていた。何度も見たことがある。

セルジオとニーナが2人で侯爵家の庭園に入っていく様を。

楽しそうに手を繋いでいるのを‥‥。

私と2人で会う時の彼はいつも私に味方してくれた。

だから‥‥こんな。

裏切るくらいなら‥‥なんで私に優しくしたのよ!!

あの日、両親を失って叔父に騙され全てを失った日以来一度も流したことのなかった涙が溢れる。

この涙を止める術を私は知らない。

「あらぁ~?お姉さま泣いちゃったわぁ??かわいそうにぃ~。」

「はっ!気持ち悪いな。ニーナ、ほらそんなの見てないで行こうぜ?」

「あらそうね。行きましょう!!あっでもこれからのことちゃんと教えてあげないとぉ。」

「ああ、そうか。ニーナは優しいなぁ。」

「なに‥‥これからって‥‥。」

涙声で問いかける。

「お父様がね。言っていたの。今年であなた18歳でしょう?あの契約書の効果が切れてしまうのよねぇ。だからあなたには侯爵家を継げない体になってもらう必要があるの。」

「侯爵家を継げない体‥‥?」

「優しいでしょ?私がお願いしたのよ。お父様ったらあなたを殺すって言うんだもの。それじゃつまらな‥‥かわいそうでしょう?だから別の方法を頼んだのよぉ。」

「別の方法‥‥。」

「そう、お姉さまは病弱なのに外を見たくて屋敷を抜け出してその先で悪い男に捕まってしまうの。そして不貞の子を孕むのよ。」

「何‥‥何を言って‥‥?」

ニーナの言葉を理解することを頭が拒む。

なんで言った‥‥?

いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや

「ふんっ!ほらニーナ。もうそれ以上はいいだろ?いくぞ!!」

「ええ、そうね。さあやりなさい!!」

ニーナの言葉にどこから出てきたのか柄の悪い男たちが私を取り囲む。

ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。

人を嬲り遊ぶことが快感だと言う狂った男たち。

私はこの男たちに犯されるの‥‥?

望まない子を産まされるの‥‥??

複数の手に無理やり押さえつけられ、何かを強制的に飲まされる。

「ングッいや!!ーーゴボッ‥‥。」

いやよ。絶対にいや!!

この時、私の中で何かが切れた音がした。

どこにそんな力があったのかは私でもわからなかった。

それでも無我夢中で暴れて自分よりも屈強な男たちの手から逃れた。

服は破け、顔は涙でぐちゃぐちゃで酷い顔をしていたと思う。

それでも私はその足で侯爵家を飛び出した。

もう何もかもどうでもよかった。

殺されるならせめて痛くないように‥‥とか思ってたけど。

こんなのは嫌!!

人としての尊厳すら奪われるなんて。息が切れる。

それでも止まらない。

あの男たちが追いかけてくる足音が聞こえるようで‥‥。

実際にはもう追ってきてはいなかったけれど。そのことも認識できないくらい必死だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の婚約者は失恋の痛手を抱えています。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
幼馴染の少女に失恋したばかりのケインと「学園卒業まで婚約していることは秘密にする」という条件で婚約したリンジー。当初は互いに恋愛感情はなかったが、一年の交際を経て二人の距離は縮まりつつあった。 予定より早いけど婚約を公表しようと言い出したケインに、失恋の傷はすっかり癒えたのだと嬉しくなったリンジーだったが、その矢先、彼の初恋の相手である幼馴染ミーナがケインの前に現れる。

君はずっと、その目を閉ざしていればいい

瀬月 ゆな
恋愛
 石畳の間に咲く小さな花を見た彼女が、その愛らしい顔を悲しそうに歪めて「儚くて綺麗ね」とそっと呟く。  一体何が儚くて綺麗なのか。  彼女が感じた想いを少しでも知りたくて、僕は目の前でその花を笑顔で踏みにじった。 「――ああ。本当に、儚いね」 兄の婚約者に横恋慕する第二王子の歪んだ恋の話。主人公の恋が成就することはありません。 また、作中に気分の悪くなるような描写が少しあります。ご注意下さい。 小説家になろう様でも公開しています。

悪役令嬢になりそこねた令嬢

ぽよよん
恋愛
レスカの大好きな婚約者は2歳年上の宰相の息子だ。婚約者のマクロンを恋い慕うレスカは、マクロンとずっと一緒にいたかった。 マクロンが幼馴染の第一王子とその婚約者とともに王宮で過ごしていれば側にいたいと思う。 それは我儘でしょうか? ************** 2021.2.25 ショート→短編に変更しました。

おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。

木山楽斗
恋愛
ラフィティアは夫であるアルフェルグとおしどり夫婦を演じていた。 あくまで割り切った関係である二人は、自分達の評価を上げるためにも、対外的にはいい夫婦として過ごしていたのである。 実際の二人は、仲が悪いという訳ではないが、いい夫婦というものではなかった。 食事も別なくらいだったし、話すことと言えば口裏を合わせる時くらいだ。 しかしともに過ごしていく内に、二人の心境も徐々に変化していっていた。 二人はお互いのことを、少なからず意識していたのである。 そんな二人に、転機が訪れる。 ラフィティアがとある友人と出掛けることになったのだ。 アルフェルグは、その友人とラフィティアが特別な関係にあるのではないかと考えた。 そこから二人の関係は、一気に変わっていくのだった。

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

いつの間にかの王太子妃候補

しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。 遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。 王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。 「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」 話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。 話せるだけで十分幸せだった。 それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。 あれ? わたくしが王太子妃候補? 婚約者は? こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*) アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。 短編です、ハピエンです(強調) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。

愛しているのは王女でなくて幼馴染

岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。

処理中です...