普通に生きられなかった私への鎮魂歌

植田伊織

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家出した自己肯定感を呼び戻すには

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 ある一点まで回復していた自己肯定感は、読書をすればするほどにすり減ってゆき、どこかへ家出してしまったようだった。

 最近、書籍はもちろん、SNSの相互さん――即ち、アマチュアでハイレベルな小説を書く人達――の作品を読んでいる。
 読めば読むほど、いかに私が自身の能力を買い被っていたかを痛感するようだった。

 その上でこう記すのもまた面の皮が厚いのだが、自分の作品にも、私らしい良さというのはあると思う。
 今までの人生の中で、文章を書いて得た成功体験も、小さなものだが多々ある。
 未熟な箇所があるとしても、私は自分の文章が好きだ。

 じゃあ何が問題なのかと言えば、分母の果てしなさなのだと思う。

 すなわち、文章が好き、物語を創るのが好き、という人たちはこの世にはたくさん居て。
 さらに、文章が上手く、巧みに物語を構成出来る人で、デビューしていない人というのもまた、大勢いらっしゃるのだ。
 その中で埋もれてしまう程度には、私の能力は十把一絡げだ。
 私は確かに自分の文章は好きだが、欠点も把握しているつもりである。

 ならばどうすれば、自分の能力を伸ばせるのだろう?

 最近は、この日記の最初の方で書いていたように、「無能の自分が受け入れがたい」だけではなく、「だったらどうするか」という所まで冷静に考えられるようになってきた。
 少しは成長している……のだと思いたい。
 いや、公募に落ちたり、執筆が上手くゆかなかったりして、どちゃくそ悔しがるという、豆腐メンタルはまだ改善されていないのだけれど。

 とりあえず、100文字で良いから書いてみようとか。
 それすら苦しい時はエッセイや日記を書こうとか。
 文章を生み出すのが嫌なら写経(書籍を書き写す)をしようとか。
 
 色々考えて、とりあえず実行してみた次第である。
 
 何故そんな事をするのかと言えば、今書いている物語をより良い物に仕上げたいからだ。その気持ちに嘘は無い。
 しかし同時に私は、「自分の中の得意な事を増やしたい」のだと思う。

 今の私は”承認欲求お化け”だ。
 平たく言えば、人の評価に飢えた餓鬼である。

 何故そんな自分になってしまったのか。
 極端な承認欲求に取りつかれている場合、本来なら生育環境を説明する必要性があるのだが、今はよそうと思う。正直言って面倒だ。

 ただ、「無能な自分」を認めがたい、自身が存在するのは確かだ。それは、「何か役に立っていないと存在してはいけない」という認知の歪みからくる「生存権に関わる出来事」である。

 要は、「無能であること」=「死」の図式が出来上がってしまっているのだ。

 だからこそ、「本当はたいしてすごくはない自分」の、良い所も悪い所も認め難く。「実は隠れた能力を持ったすごい自分」を証明したくて、他人からの評価を渇望するのだと思う。

 「無能な自分」と「すごい自分」を戦わせるのではなく。
 第三の「等身大のあんまりすごくない自分」を認めたいと思っている。

 ありのままの自分の駄目な所も良い所も、地に足をつけるようにして認知し、血肉に出来たなら。少しずつ、前進できやしないだろうか。



 そんな事は関係なく、創作は楽しんだ者勝ちだ、という意見もよく目にする。
 それはそうだと思う。

 私にとって創作は、得意な事をしていれば心は整うけれど、難しい局面に当たれば苦しいものだ。
 楽しみも苦しみも両方抱きかかえる私の執筆への姿勢は、どうだろう、創作が楽しくて楽しくて仕方の無い人たちの姿勢には遠く及ばないのだろうか。

 例えば、私は趣味で編み物をしている。
 編み物の出来不出来で私の人格が否定されやしない事を知っているので、上手く出来ようが出来まいが深く落ち込む事は無い。
 だからこそ、編み針を握るのに躊躇ったり、今日は辞めておこうなどと考えない。
 
 しかし、小説の執筆は違う。書くという行為そのものを躊躇う事もあれば、不出来な作品を生み出して頭を抱える事もある。
 そんな負の面を考えて、PCを起動することすら億劫な日もあるのだ。
 
 一年前はそんな事はなかった。
 今よりもっと読まれていなかった為、そちらの面での苦悩はたしかにあったけれど、書き出せば次々と作品が生まれていって、何でも生み出せるかもしれないとすら思った。
 しかし、その作品らがコンテストで落選し、pvものびず――即ち、外部からの評価を自分の中で受け止めて初めて、筆が止まってしまったように思う。

 自分で自分を認めていれば、「失敗経験を積んだね」で済むのだ。
 まだ、その境地にはたどり着いていない。
 けれど、書くことは諦めたくないし成長してゆきたい。

 ならば結局の所、書くしかないのだろうか?
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